ボクら
まず最初に言っておこう。
私と私の好きな人の家は隣同士で部屋も窓さえ開ければ行き来可能な『お隣さん』であり幼なじみでずっと隣をキープしてきたのだがコイツは鋤きの感情に気がついていないらしい。
【西山 竜太】は好きな人だけど、【谷島 由花】を恋愛感情で見ていないことくらいわかっている。
よし、まずは愚痴を聞いてくれ。
つい最近、【久世 優馬】♂と私の親友【天野 ゆい】が付き合い始めたんだが、「西山ー、久世と天野、やっと引っ付いたんだよー?」と言えば苦そうな顔をして私を見つめた。
「お前、優馬の事が好きなんじゃないのか?」
勘違いしている、私の好きな人は。
***
「天野ー」
西山とは教室が違う、だから教室で別れてマフラーを外して天野 ゆいを呼ぶと低血圧で冷え性の彼女は不機嫌そうにこちらを見ながら「何」と一言。
「聞いてよ!! あの西山の馬鹿!!」
「多方、久世の事が好きだって勘違いしてんだろ?」
男前な性格をしている天野はサラサラした乱雑に切りそろえた髪の毛を揺らして私を睨むように見る、実際は睨んでなんかいないが、天野のつり目はキツそうな目だから勘違いされることが多い。
「・・・・・・天野、私は誰のことが好きに見える?」
天然の茶色の髪の毛をくるくるといじりながら天野を見ると「そりゃにしや―――「西山先輩と谷島さんって付き合ってないんスか?!」
年下彼氏(久世)が登場した。
マネージャーの私と天野と選手の二人は学校内でも仲のいい部活に所属している。だから、上級生の教室にこの馬鹿が居てもおかしくはないのだが・・・な。
目の前で繰り広げられる久世のハートの乱舞と嫌そうにしながらも馬鹿の行動をそのまま放置しているバカップルの行動を見せられる身になってみてくれ、腹が立って仕方がないのだ。
「・・・久世、黙れ」
「谷島さんヒデぇッスよ!!」
久世がゲラゲラと笑いながら私を見てくる、イヌっぽい性格をしているコイツの飼い主はイヌを放置している。躾してくださいよ、飼い主。
「ってか、何で付き合ってないんスか?」
「はぁ? 私がお前のこと好きだって勘違いしてっからだろーが」
「え、マジでスか?」
「うん」
きっかけは確か、「新入生の久世ってカッコよくない?」と聞いたときに「久世のこと好きか?」と返されたのだ。てっきり私は「久世のことが【後輩として】好きなのか?」と聞かれたのだと思ったらしいが、後で「応援するからな」と言われて恋愛だったと気づいた。
最悪である。