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恋路を邪魔したら馬に蹴られた

作者: Wana-wana
掲載日:2026/03/19

 校舎が、通りがかりの馬の群れによって蹴り飛ばされたので、今日は臨時休校になった。


「は?」


 学校から届いたメッセージを3回見ても、意味が分からなかった。なんなら友達からの動画付きのラインを見ても、余計に意味が分からず、思わず学校最寄り駅のホームでたたずんでしまう。

 

「お前の心配も分かる。これだけのサラブレッドたちが、うちの校舎を蹴り飛ばしにきたら、今年の天皇賞・春が予想一気に難しくなるよな」

「誰もそんな心配してねえよ」


 3組の山村だった。

 電車の時間が一緒になるから、ぼちぼち出てくる頃かなとは思っていた。

 

「にしても、そろそろかと思っていたが、予想より速かったな」

「競馬の話?」

「校舎の馬に決まってるだろ。なんで競馬の話なんてする必要があるんだよ。未成年なのに、春天の話するなんてバカじゃねえの」

「お前だよ」

 

 駅のホームにいてもしょうがないので、とりあえず山村とふたりで改札を出た。カラオケでも行くか、ファミレスでも入るか。どうせ、俺たち以外も暇になった連中だらけなので、誰かしら集まるだろう。

 学校の様子を見に行くのも面白そうではあるけど、追加で注意喚起の連絡が入ってしまったため、断念する。

 馬って、でかいし、万が一がこわいので。


「馬って蹴るじゃん」

「馬によるだろ」

「恋路邪魔したら、蹴りに来るじゃん」

「もしかして、校舎の話ししてる?」

「それ以外に何の話をすると思うんだよお前は。頭どんだけ競走馬にやられてるんだよ」


 かかとで山村の足を踏んづける。山村から肩パンされる。


「暴力にすぐ訴えるから、お前はカノジョもできないんだよ」

「お前もだろ」

「…………」


 俺は悲しくなった。山村に、校舎の話を促す。


「さすがに知ってると思うが、うちの学園には──学園のロミオがいるんだ」

「普通の公立高校を学園呼びするなよ」


 そして、なんでロミオ?

 相場は、学園の王子様とかそういう類いじゃないのか。


「まあ、聞け。1組に、ロミオってあだ名されてる奴がいるんだが、想像の通り遠距離恋愛していてな?」

「遠距離恋愛してるだけで、ロミオ……?」

「壮絶な遠距離恋愛だからな。なにせ、カノジョさんは隣の高校だ」

「遠距離…………?」

「心の距離は、もっと近いのにな」

「そいつらの距離感と進展具合は知らねえよ」


 隣の高校が遠距離……?

 最寄りは一緒だし、徒歩10分圏内だぞ。


「で、ロミオの相方といえば、ジュリエットに決まってる訳だ」

「まあ…………」

「出会いも壮絶だぞ。合コンらしい」

「それで壮絶とはならんぞ」


 別に、あるといえばあるだろ。

 ちなみに、合コンはカラオケで開かれたらしい。壮絶要素が全く見えてこない。


「そんな壮絶な出会いをした2人を隔てるのは──校舎だ。だからまあ、馬が蹴りに来るのも時間の問題だったんだよ、結局」

「そうはならんやろ」


 友達から新たな動画が送られてきた。隣の高校も馬が蹴ってるらしい。


「なってるし」

「なんでやねん」

 

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