恋路を邪魔したら馬に蹴られた
校舎が、通りがかりの馬の群れによって蹴り飛ばされたので、今日は臨時休校になった。
「は?」
学校から届いたメッセージを3回見ても、意味が分からなかった。なんなら友達からの動画付きのラインを見ても、余計に意味が分からず、思わず学校最寄り駅のホームでたたずんでしまう。
「お前の心配も分かる。これだけのサラブレッドたちが、うちの校舎を蹴り飛ばしにきたら、今年の天皇賞・春が予想一気に難しくなるよな」
「誰もそんな心配してねえよ」
3組の山村だった。
電車の時間が一緒になるから、ぼちぼち出てくる頃かなとは思っていた。
「にしても、そろそろかと思っていたが、予想より速かったな」
「競馬の話?」
「校舎の馬に決まってるだろ。なんで競馬の話なんてする必要があるんだよ。未成年なのに、春天の話するなんてバカじゃねえの」
「お前だよ」
駅のホームにいてもしょうがないので、とりあえず山村とふたりで改札を出た。カラオケでも行くか、ファミレスでも入るか。どうせ、俺たち以外も暇になった連中だらけなので、誰かしら集まるだろう。
学校の様子を見に行くのも面白そうではあるけど、追加で注意喚起の連絡が入ってしまったため、断念する。
馬って、でかいし、万が一がこわいので。
「馬って蹴るじゃん」
「馬によるだろ」
「恋路邪魔したら、蹴りに来るじゃん」
「もしかして、校舎の話ししてる?」
「それ以外に何の話をすると思うんだよお前は。頭どんだけ競走馬にやられてるんだよ」
かかとで山村の足を踏んづける。山村から肩パンされる。
「暴力にすぐ訴えるから、お前はカノジョもできないんだよ」
「お前もだろ」
「…………」
俺は悲しくなった。山村に、校舎の話を促す。
「さすがに知ってると思うが、うちの学園には──学園のロミオがいるんだ」
「普通の公立高校を学園呼びするなよ」
そして、なんでロミオ?
相場は、学園の王子様とかそういう類いじゃないのか。
「まあ、聞け。1組に、ロミオってあだ名されてる奴がいるんだが、想像の通り遠距離恋愛していてな?」
「遠距離恋愛してるだけで、ロミオ……?」
「壮絶な遠距離恋愛だからな。なにせ、カノジョさんは隣の高校だ」
「遠距離…………?」
「心の距離は、もっと近いのにな」
「そいつらの距離感と進展具合は知らねえよ」
隣の高校が遠距離……?
最寄りは一緒だし、徒歩10分圏内だぞ。
「で、ロミオの相方といえば、ジュリエットに決まってる訳だ」
「まあ…………」
「出会いも壮絶だぞ。合コンらしい」
「それで壮絶とはならんぞ」
別に、あるといえばあるだろ。
ちなみに、合コンはカラオケで開かれたらしい。壮絶要素が全く見えてこない。
「そんな壮絶な出会いをした2人を隔てるのは──校舎だ。だからまあ、馬が蹴りに来るのも時間の問題だったんだよ、結局」
「そうはならんやろ」
友達から新たな動画が送られてきた。隣の高校も馬が蹴ってるらしい。
「なってるし」
「なんでやねん」




