【了】
十八人の幼馴染。
その笑い話は、そんな名で貴族間の談笑として瞬く間に広まってしまいました……。
ルルエ。
ふわふわの金色の髪に、陶器のような白い肌。そして、肌にとても良く映えるイヤリング。
そんな特徴を持った彼女には、どうやら十八人の幼馴染がいたようです。
そう。
セレスも、ヴェラの婚約者も、その他十六人の貴族も全員、自身だけが彼女を守れる庇護者だと信じて、彼女に親身を尽くしていたのです。
……虚しさを通り越えて、その事情に圧倒を感じてしまいました。
本当に大したものです。
庇護者だと信ずる男たちを、針の穴を通すような緻密をもって、ずっと続けて顔を合わせ続け、騙し続けていた。
しかも――病弱であるのは、嘘ではなかったようです。
ルルエ・エヴァンス。
それが、後から判明した、彼女の本名。
当主の死により、資金繰りの尽きた没落家の、末の娘……。
彼女は真実、病弱で、肉体的にいつも辛い境遇に置かれていたのは間違いがないようです。
そんな中、男たちがばったり顔を合わせることなどないよう、口八丁で統率し続けていて、それを十八人、何年も、ずっと……。
もう、凄い、としか思えません。
ヴェラなどは、彼女と友達になりたいなどと言い出し、姿を消した彼女の行方を探り出そうと試みています。
――彼女に騙された十八人は、その談笑の広がりと共にお家の格を落とし、例外なく皆失墜の道を辿ったのですが……。
それに対し、ざまあみろ、という気持ちすら湧きませんでした。
私があの日感じた惨めさは――あの日々に感じていた虚しさは、今や不思議な清々しさに変わり、彼方へと消え去ってしまいました。
また意外なことに――その奇妙な事情は、私たちに“恩恵”をもたらしました。
十八人の幼馴染の当事者。それが判明したとき、色物を見る目で見られ、貴族間で浮いた存在となることを恐れていたのですが――実際はそんなこともなく、私たちの置かれた立場を慮ってくださる方々ばかりでした。
世も捨てたものではないと、柄にもなくしみじみと感じ入ったものです。
どころか、その奇妙が話のタネになり、以前よりも格段に交流が広まるという幸運に恵まれました。
お付き合いを真剣に相談してくるご縁とも、そのうちに出会えました。
もう、なにがなにやらです……。
まるで激流のような目まぐるしさに翻弄される日々。しかし、人間万事塞翁が馬とは違いますが――悪くはなかったのでしょう。お家に傷を付けるようなこともなくて、本当に良かった。それに安心と幸いを覚え――あとの諸々の感傷は、もう全て、吹き飛んでしまいました……。
幼馴染だけを見つめる婚約者との決別の先にあった、意外すぎる結末。
私の奇妙な婚約破棄の物語は、これでお終いです。
ルルエ。
彼女は今、どこでなにをしているのだろう? ふと、そんなことを考えるときがあります。
不思議なことに、彼女にもう一度会ってみたい、という心があるのです。理由は自分でも分かりません。
何故でしょうか?
あなたには、それが何故なのか、その心持ちの正体が、分かりますか――?
ここまで読んでくれてありがとう!!
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