第一話「転校生」
そうだ。
あれは、高一の夏から始まったんだ——
俺は遠藤清斗。
国際連合立戦術研究専門高等学校の一年生だ。
成績は良くも悪くもない、平均くらいだ。
8月末、一人の転校生が同じクラスに入ってきた。
「月影新二です」
名前以外はなんの変哲もない。
身長は180手前くらいだろうか。
「専門は第二特殊戦術のCです」
は?
第二特殊戦術のCって…魔法?
魔法専門は百万を超える全校生徒の中で百人もいない。
「趣味は——好きな音楽家は——好きな作家は——…」
一通り自己紹介を終えると、月影の席は俺の隣になった。
その日は、特に何も話さなかった。
次の日、月影が朝早く来て読書をしていた。
「何読んでいるの?」
聞いてみると、よく聞く作家のよく聞く作品の名前が返ってきた。
その日は、その作家のことで話題になった。
最初に月影が目立ったのは、二限の時のことだった。
「これより8/26二限技術三科を開始する」
担当の御厨先生がそう告げた。
技術三科は、敵側にサイバー攻撃を仕掛ける訓練だ。
「よーい、はじめ!」
瞬間、隣から超高速でキーボードを叩く音が。
月影だ。
もう3.69%も終わっている。
「おい、見ろよあれ」
「とんでもない転校生が来た」
驚いて手が止まっている奴もいる。
御厨先生なんか、驚きすぎて意味のない呟きを繰り返している。
三限の体技一科の時も、学級の最高記録を余裕で更新した。
六限の知識一科では平均点を大きく上回り、七限の戦略三科でも好成績。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、月影は目立ち続けた。
また、俺と月影の距離はどんどん縮んでいき、互いの家に頻繁に遊びに行くようにもなった。
月影が転校してきてから約一年後。
ある日、国際警察庁のホームページを見ていると、一級指名手配者の中に「月影強一」という名前を見つけた。




