第7話 誤解と別れ
森の朝は霧に包まれ、静けさが辺りを
覆っていた。セリオ王子は小道を歩き、
昨日の王宮での出来事を反芻していた。
「オルデンの言葉……でもリアナを信じたい」
心の中で葛藤する。だが、森の奥で待つ
リアナの顔を思い浮かべると、不安と焦り
が入り混じる。
一方、リアナもまた森の中で思い悩んでいた。
「セリオ……本当に私を思っているのかしら」
森の精霊たちに囲まれた小川のほとりで、
彼女の瞳には迷いの影があった。
王国の情報屋が森に忍び込み、王子と
リアナの関係を誇張して報告したのだ。
「王子は森の民を利用している」という噂。
リアナはその情報を耳にし、心に不安が
芽生えた。
「私……利用されているのでは?」森の声に
耳を澄ませても答えは出ない。リアナは深く
息をつき、王子に会う決意をするが、胸の奥の
警戒心は消えなかった。
セリオもまた、王宮からの圧力を感じていた。
オルデンは慎重に弟の動きを監視し、森での
交流を制限しようとした。王子はリアナを
守りたい一心だったが、その行動は誤解を
生む余地を作っていた。
森の小道で再会した二人。リアナの目には
不安と疑念が混ざる。セリオはすぐに笑顔を
向ける。
「リアナ、今日も会いに来た」
だが、リアナは少し距離を置き、静かに言う。
「セリオ……本当に私を思っているのですか?」
王子は驚き、言葉を詰まらせる。「もちろんだ。
誤解しないでほしい……」
しかし、リアナの表情は険しく、言葉は届かない。
「でも、噂があります。王子は私を利用して
いるのではないかと」リアナの声には恐れと
悲しみが混じっていた。セリオの胸は締め付け
られるように痛んだ。
「そんなことは……決してない!」王子は必死に
否定する。しかし、森の中で微かな風が二人の
間を隔て、誤解の壁を崩せない。
リアナは涙をこらえ、王子を見つめる。「ごめんなさい、
私……」その声に、王子は思わず手を伸ばすが、
彼女は振り返り、森の小道を去って行った。
セリオは茂みに立ち尽くし、握りしめた拳を
ゆるめられない。胸の中で、怒りと後悔、悲しみ
が入り混じる。
「どうして……」王子は小さく呟き、森の奥に
消えるリアナの背中を追えずにいた。
森の静寂が、二人の心の溝を映すかのように
広がる。セリオは深く息を吸い、心を落ち着ける。
「誤解を解く……必ず」その言葉に、強い決意が
宿る。
リアナもまた、森の奥で立ち止まり、涙を拭う。
「でも……信じたい気持ちもある。セリオは…」
心の奥で、彼への想いは消えていない。だが、
疑念が勝り、一歩を引かせるのだ。
昼過ぎ、王宮でも二人の関係は噂となって広がり、
臣下たちは慎重に振る舞う。王子の行動は正当で
あっても、誤解は人々の心に残る。
夜、森に戻ったセリオは一人で小川のほとりに
立つ。月光が水面に反射し、揺れる。彼の胸に
あるのは、リアナに対する深い思いと、誤解を
解くための覚悟だった。
「森は静かだ……でも、君が戻るまで、俺は
待つ」王子は小さくつぶやき、森の闇に溶ける
ように立ち続けた。
森の精霊も、木々も、二人の誤解を見守る。
この試練を乗り越えれば、絆はより深くなる。
誤解と別れが、二人にとって未来への一歩を
準備しているのだ。
深夜、森に霧が立ち込める。二人は離れたまま
だが、心の奥では互いを思う感情が確かに
残っていた。友情でも恋心でもない、まだ
形のない絆が、静かに息を潜めていた。




