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【ダークファンタジー】黒剣遺言: Monument bleuの逆襲  作者: トシマコフ
1章ギルド再結成編
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第六話「氷の軍靴、アイギスの進軍」

森に入った途端、空気が変わった。

 肌を刺すような冷気。吐く息が白くなる。

 春の陽気だったはずの気候が、突如として“冬”へと転じた。


 「……この空気。来るぞ」

 ダークが剣に手をかけた。


 


 ──ギィン……。


 霜に覆われた金属音が鳴った。


 木々の間から現れたのは、銀髪の美女。

 白のアッシュショート、冷えきった目。

 左腕に抱えた巨大な盾が、地を滑らせながら構えられる。


 「お久しぶりですね、ダーク・アルコホル。

  命令です。貴方を“凍結”し、持ち帰るようにとのこと」


 聖王騎士団 第3軍団長──アイギス・ヒルド


 


 「随分と物騒な再会だな」


 「ええ、貴方が生きていること自体、想定外でしたので」


 


 ──氷嵐が舞う。


 アイギスが盾を前に突き出した瞬間、前方の地面が一気に凍結した。

 ロイヤルが足を滑らせ、ホワイトがとっさに彼を抱えて転がる。


 「僕たち、足が……!」

 「動くな。奴の術中だ」ジルが鋭く言う。


 「盾に吸われた攻撃は、すべて倍加して返ってくる……。突っ込めば死ぬ」


 


 ダークが一歩踏み出した。


 「ならば、攻撃しなければいい。──闘い方を見せてやる」


 


 アイギスが駆ける。盾を構え、突進する。


 ダークは真正面からその一撃を──避けずに、受けた。


 「ッ!」


 衝撃。氷の波動。周囲の木々が凍る。


 だが、ダークは盾に向かって、拳を叩きつけた。


 


 「その盾に宿るのは、“恐れ”だ。

  相手の力を受け流し、自分は傷つかないようにする。

  ……だがそれじゃ、本当の意味で“強い”とは言えねぇ」


 


 その一瞬。

 アイギスの動きが、わずかに乱れた。


 


 「アンタは、誰かを守るためにその盾を選んだはずだろ?」


 ダークの剣が、氷の空間に風を裂く。

 盾が振り上げられるが、今度はその動きが遅い。


 ──ズン!


 ダークの斬撃は、アイギスの足元を砕いた。


 バランスを崩す。盾が下がる。


 「これで終わりだ」


 


 だが、ダークは──剣を振り下ろさなかった。


 


 アイギスの首元に、剣先が止まっていた。

 彼女の目が見開かれる。


 


 「……とどめは?」


 「俺は、無闇に女を殺す趣味はねぇ。

  それが“敵”であっても、命を握るのは“覚悟”だけで十分だ」


 


 ホワイトが、固唾を呑んで見つめていた。

 その背中から感じるもの──それは“強さ”だけではなく、“強さの中にある優しさ”だった。


 


 「……貴方は、昔からそういう人だった」


 アイギスが、力を抜く。氷の術式が解け、空気が暖かくなる。


 「次に出会った時は、どうなるかはわかりません。……ですが、今は引きます」


 


 アイギスは静かに後退し、雪のように姿を消した。


 


 「……ホワイト。覚えておけ」

 ダークが振り返る。


 「強さってのはな、倒す力じゃねぇ。“止める力”だ」


 「……うん、僕……いつか、そうなれるかな」

 「なれるさ。お前ならな」


 


 一行は森を抜けた。

 その先に広がるのは、紅と黒の交わる街。


 ──バボン王国国境都市。

 そこにいたのは、鮮やかなピンクの髪と長い脚、そして挑発的な微笑みを浮かべた女。


 「久しぶりねぇ……黒き剣さん。アナタ、まだ死んでなかったのね」


 ギルド2番隊隊長、ジャンボール・ロゼ──登場。



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