回帰編 第八話「交差する銃声、封じられた剣」
──ラビーレ砦、戦線続行中。
ダーク、ジル、ロイヤルの三人は、シモ・テウスとレオ・ダオに囲まれていた。
「……戦うのか、レオ」 ダークが問う。
「命令だ。俺には、抗えない」 レオ・ダオが冷静に答えた。だが、その瞳の奥には迷いが確かにあった。
「それでも、俺たちは生き延びる」
ダークが剣を構え、シモが銃口を構える。
「騎士団、第四軍団長──狙撃開始」
銃声が砦に響き渡る。
ダークは瞬時にロイヤルの肩を引き、砲撃を避ける。 ジルが空間をねじ曲げ、弾道を逸らす。
「狙いが……正確すぎる!」 ロイヤルが呻く。
「奴の弾は、“一度狙われたら必中”だ。空間で逸らすしかない」 ジルが重く答える。
だがそのとき、レオが手を掲げ、周囲の空気がねじれた。
「……ここから先、能力使用を一時封鎖」
ジルの亜空間が一瞬で消えた。 ロイヤルの魔術が不発に終わる。 そしてダークの剣から、煌めきが消える。
「これが……レオの能力、“範囲内のスキル封印”か」
シモが再び銃を構える。 「これで終わりだ。反逆者」
──銃弾が放たれる。
ダークは能力を使えぬまま、己の肉体と直感のみで回避する。
「っ……ぐっ!」 腕に一発を受け、地面に転がる。
ロイヤルが背を守り、ジルが歯を食いしばる。
「ダーク……このままじゃ全滅だ」
その時だった。 レオが、わずかに拳を握り、そして開いた。
──空気の圧が、ふっと解ける。
「……今だ」
ジルの瞳が光を宿す。 「“漆黒時限”起動」
異空間が瞬時に三人を飲み込み、場から消し去った。
──沈黙。
シモ・テウスが、ゆっくりと銃を下ろした。 「……なんの真似だ、レオ」
レオ・ダオは静かに答えた。 「……借りがある。昔、俺はダーク・アルコホルに命を救われた」
「それでも──国家への忠誠は揺るがぬはずだ」
「揺るいではいない。これは、たった一度の"借り"だ」 「次は、命を懸けて止めに行く」
シモが静かに頷く。 「……一度きりだ」
──その頃、逃走先の廃教会。
ジルが空間を閉じ、ロイヤルが壁に崩れ落ちる。
「生き延びたか……」
ダークが傷を押さえながら立ち上がる。 その眼には、怒りも悲しみもなかった。 ただ、“戦う者の眼”だけが、そこにあった。
──次回、「運命を越える者たち」




