回帰編 第七話「血濡れの誓約、逆襲の号砲」
──ラビーレ砦、夕刻。
ダークとジルは、焦げた石畳と崩れかけた門の前に立っていた。
「……遅かったか」 ジルが呟いた。
砦の奥から、かすかな呻き声が聞こえる。
「ロイヤル……!」 ダークが駆け寄る。
崩れた壁の下、血まみれの姿で横たわるロイヤル・モンドがいた。
「……遅いぜ、隊長……」
「無理に喋るな」 ジルが即座に治療用の結界を展開する。
「エリザは……? アークは……?」
その問いに、ロイヤルは静かに首を振った。
「……守れなかった……俺じゃ……面目ねぇ……」
ダークの顔が凍りついた。
その時──
砦の裏門から、笑い声が響いた。
「ハハッ……あの歌姫の最期、綺麗だったぜ?」
暗殺部隊の残党数名と、その中央に立つ一人の男。
隊長格と思しき男は、腕を組みながらニヤリと笑った。
「命乞いもしねえでさ。ガキも捨てて、堂々とやられた。惜しかったぜ」
その言葉で、砦の空気が変わる。
ダークの剣が、何の前触れもなく抜かれた。
「……全員、“消えろ”」
──刹那。
「夢想神技──“断絶領域・アヴァロンブレイク”」
剣が振るわれた瞬間、視界ごと“空間”が斬り取られた。
次の瞬間には、暗殺部隊の全員──隊長すらも、声を上げる間もなく霧散していた。
血の跡さえ、残らなかった。
ジルが目を細める。 「……ダーク…」
ダークの剣が、感情のすべてを背負っていた。
「っ、皆殺しだ」
──その直後。
砦の前に、黒と金の装束が現れた。
「……ああ、間に合わなかったか」
静かな足音で現れたのは、聖王騎士団・第四軍団長 シモ・テウス。 その後ろには、長身の男──第五軍団長 レオ・ダオ。
「ダーク・アルコホル。……ここから先は、“国家”が相手だ」
ダークは剣を構えたまま、ゆっくりと向き直る。
「お前らが来るってことは、あのクソ王子の命令ってわけだな」
レオは静かにそして申し訳なく頷いた。 「王命により、あなた達は“反逆者”と認定された」
シモの手に握られる銃が、空気を裂くように輝いた。
「だが……この目で見るまでは、信じたくなかった」
──次回、国家精鋭との“誇り”を賭けた一騎打ち。




