回帰編 第三話「最後の任務、そして闇が笑う」
王命を受けた翌朝──
砦に朝日が差し込む中、ダークは剣を磨いていた。 その手元を、ジルが黙って見つめる。
「行くか」 「……ああ」
ふたりは、装備を整えた仲間たちに軽く会釈をしながら門を出る。 今回の任務は、クロス帝国に残る最後の敵──帝王ロンリゴの討伐。
だが、地図には不自然な空白があり、敵の情報も曖昧だった。
「戻ったら、またアークの素振りを見てやれ」 「……あいつ、構えはマシになってきてる」 ジルが微かに笑った。
その背中を、エリザとアークが見送っていた。 アークはまだ何もわかっていない様子で、手を振っていた。 「ダーク……」 エリザの声は、風に消えた。
──数日後。
クロス帝国バルドゥナ。 森は不気味な静けさに包まれていた。 敵勢力の痕跡はあったが、帝王ロンリゴの姿は見当たらない。
「……何も、いない」 「いや。違う、これは──」
ダークが何かに気づいた瞬間、 木々の陰から、全身黒装束の刺客たちが一斉に飛び出した。
「王直属暗殺部隊か……!」
ジルが即座に空間を裂き、遮断する。 ダークの剣が、瞬く間に二人を切り伏せる。
「──やはり、罠だったか」
「ギルドを潰す気だ……恐らくニンカシが動いた」
一方その頃、王宮。
ニンカシは、父・ビア王の前で跪いていた。
「──父上にはもう、退いていただきます」
その言葉と共に、王の背後にいた近衛騎士たちが剣を抜く。
「貴様……!」
王の胸元に、深々と刃が突き立つ。
「Monument bleuも、父上も……時代に取り残された」
王の血が、玉座の上に滴る。
──その瞬間、ニンカシの体に微かな光が走った。
「……やはり、これが父上の能力か」
ビア王の能力──『一度忠誠を誓った者に、絶対命令を下せる力』。 それが、ニンカシの手に渡ったのだ。
「これで王国の全兵士も、貴様らの意思では動けまい」
近衛兵たちの瞳に、うっすらと“命令の枷”が宿る。
「王国もギルドも……すべて、俺の駒だ」
「これより、ビア王国は新たな王により統治される」
玉座に歩み寄るニンカシ。
その目に宿るのは、炎でも氷でもない、 ただの“支配欲”だった。
──そしてその支配の矛先は、 ダークの家族へと向かおうとしていた。
──次回、エリザとアークに迫る闇の影。