第二十話「ギルド再結集と、ダークの選択」
剣術大会が終わった。
優勝は、文句なしにダーク・アルコホル。
例の商品はムサシが抱きしめて離さない。
だがその裏で、ジルが仕留めた潜伏幹部の存在や、ムサシ、ロゼ、ロイヤル、ボンドたちが再び結集し
はじめたことで、 人々の記憶に再び
“Monument bleu”の名が刻まれていった。
その夜、仲間たちは静かに焚き火を囲んでいた。
「……まるで昔に戻ったみたいだな」 ロイヤルが笑う。
「酒が不味いな」 ムサシがぼそりと呟くと、ジャンボールが笑い飛ばす。 「昔からそうだったじゃない、アナタは」
ジルは何も言わず、夜空を見ていた。 ホワイトだけは、少し離れたところで剣の素振りをしていた。
──ダークが歩み寄る。
「無理して立つ必要はねぇぞ」
「……僕は、まだ足りないんです。あんな奴に負けたままじゃ……」
「負けても、立ち上がればいいさ」 ダークは焚き火の前に腰を下ろし、ホワイトにも隣に座るよう促す。
火の粉が舞う。
「なあ、ホワイト。お前に……俺の過去を話してもいいか?」
ホワイトは驚いた顔をする。
「……もちろんです」
──そして、語られた。
かつてビア王国で最強と謳われたギルド“Monument bleu”の始まり。 妻エリザとの出会いと別れ。 息子──アーク・アルコホルの存在。 そして、あの夜。任務を終えて帰還した直後に全てを奪われた記憶。
「気づいたときには……全部、燃えてた」
焚き火の炎と重なるように、ダークの声が揺れた。
「それでも、俺は立ち上がった。復讐のためか? 仲間のためか? ……いや。守れなかった自分を、もう一度許すためだ」
ホワイトは、言葉が出なかった。
でも、胸の奥で熱い何かが広がっていた。
「……ダークさん」
「ん?」
「アークくん……幸せだったと思います。あなたのことが、大好きだったと思います」
ダークは、ふっと目を細めた。
「ありがとうよ」
数秒の沈黙の後、彼はゆっくりと告げた。
「なあ、ホワイト。お前……俺の息子になってくれねぇか?」
ホワイトの目が見開かれる。
「……え……?」
「血は繋がってなくても構わねぇ。お前は……俺の剣を継げるやつだ」
ホワイトは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「……はい、ダークさん。僕……これからは“ホワイト・アルコホル”として、あなたと生きます」
夜空に、火の粉が舞った。
仲間たちの視線が、優しく二人を包む。
──そして、物語は静かに、過去へと沈んでいく。
焚き火の炎が揺らめき、ダークの記憶が語る。
かつて、すべてが始まった日。 “最強のギルド”として、世界を照らしていた頃の、英雄たちの物語。
──次回、「回帰編」開幕。