第十八話「黒き剣、怒りに震える」
──静寂。
殺気が、会場を包んでいた。 立ち上がったダークは、ゆっくりと剣を抜く。
その目に宿るのは、これまでのどんな戦いにもなかった色── “怒り”だった。
「試合は終わったろうが」
ハーザがニヤリと笑う。 「だから何だ? まだ呼吸はしている。なら剣を振るう理由に足る」
その言葉に、ダークの足元の空気が歪んだ。
「一度しか言わねぇ。ホワイトに……それ以上、触れてみろ」
ザッ。 ダークの一歩が、地面を裂いた。
「今すぐ、この場で“処刑”する」
その声音に、観客も審判も動けない。 ハーザでさえ、一瞬、目を細める。
「お前……噂で聞いてるダークじゃないな」
「……7年分、怒りを溜めてたんでな」
──ギィン!
音と共に、ダークが動いた。
──早い。
目視できないほどの踏み込み。 剣が、軌跡すら残さずハーザへと迫る。
「夢想神技──“喪黒連閃”」
無数の刃が空間に重なり合い、現実をえぐる。
ハーザが防御を試みるも、そのうち一本が肩を貫いた。
「ッ……なるほど、こいつは、遊びじゃねぇわ」
血が滴る。
「てめぇみてぇなクズが、ホワイトに剣を振るったその瞬間から──」 ダークの声が低く響く。 「お前の命は、俺のもんだ」
会場が完全に静まり返る中、ホワイトが微かに目を開く。
「……ダーク……さん……」
その瞬間、ダークの剣がさらに強く光を帯びた。
「終わらせる」
──黒き剣が、怒りを抱えて放たれる。
次回、第十九話──決着。