第十六話「剣の果て、譲らぬ誇り」
刹那、二人の剣が交錯した。 音が消え、風が止まる。 舞い上がった砂塵の中、2人は動きを止めない。
「──アート・イマジネーション」 ダークの足元から、空間に軌跡が走る。 想像した“火”が実体となり、ムサシを焼かんと迫る。
だが。 「三太刀目だ」 ムサシの全身が沈むように前傾し── 黒閃が走った。
──ズシャッ!!
空気が裂け、炎が消える。 ムサシの太刀が、火ごと想像を切り裂いた。
「想像じゃ、届かない“魂の剣”ってのがあるんだよ……ダーク!!」
ムサシの目は怒りと歓喜に染まっていた。
だが、ダークも後退しない。 その手に宿るのは、7年を超えても消えぬ“仲間への想い”。
「じゃあ、俺の全部をくれてやる──」 剣に炎、風、雷、すべての“イマジネーション”が重なる。
「夢想神技──“黒耀・円環”!!」
観客が悲鳴を上げるほどの圧力。 黒き光輪が剣先に浮かび、斬撃が空間ごとムサシを呑み込む。
ムサシは咆哮を上げた。 「来いよ、アンタの全部を──俺が“それを超える”!!」
──交錯。
閃光、爆風、そして沈黙。
時間が止まったかのような静寂のなか、立っていたのは──両者だった。
しかし。 先に剣を収めたのは、ムサシだった。
「……参ったよ。ダーク、俺が思ってた以上に、強ぇや」
ムサシの肩に、かすかな切り傷。 対して、ダークの胸にも浅い裂け目。
勝敗を審判が宣言する寸前、ムサシが手を上げる。 「勝負は……俺の負けでいい」
場内がどよめいた。
「でも覚えとけ……まだ“完全”には、許してねぇからな」
ダークは笑った。 「知ってるさ。次は、お前が俺を超えてくれ」
観客席のホワイトが、強く拳を握る。
その眼差しに宿っていたのは、“憧れ”ではなかった。
──“決意”だった。
少年は、次の戦いへ歩き出す。 ダークが残した“黒き夢想”を胸に。
──白き歯車が、ついに回転を加速させる。