第十五話「夢想と血剣、響き合う刻」
剣術大会──準決勝、第一試合。
黒き剣と、剣喰らい。
その名を知らぬ者などいない。
審判が手を挙げる。
「ダーク・アルコホル 対 ムサシ──始め!」
刹那、二人の間の空気が“爆ぜた”。
観客席の誰もが声を出せずにいた。
戦いではない。“生き様”がぶつかっている。
ムサシが先に踏み込む。一本目。
鋭い一太刀をダークが軽く受け流す。
「……やるな、ムサシ」
「当たり前だ……アナタが消えてたこの七年間、俺はずっと、ずっと磨いてた」
二太刀目、音もなく振るわれるが、ダークは寸前で足をずらし避ける。
「──アンタがくさってる間も俺は剣を磨いて、磨いてたんだよぉ!!」
ムサシが叫ぶ。
いつもの落ち着いた調子ではない。
かつて、ギルド時代の若き日々に戻ったような、荒々しい声だった。
観客席のホワイトが、剣を握りしめる。
その戦いに、言葉ではない“魂”を感じ取っていた。
「じゃあ、見せてやるよ」
ダークがゆっくりと剣を構える。
「俺の“今”を──『夢想神技』」
空間が歪む。
目に見えぬ刃の波が、ムサシの足元を裂いた。
「ッ……こいつは……!」
ムサシが気づく。
これは、あの頃の“剣”じゃない。
昔のダークよりも、強い。
剣に“決意”が乗っている。迷いが、一切ない。
「はっ……やっぱり、アナタは俺の“最高の仲間”だよ!」
ムサシが三太刀目を構える。
全身の重心が沈み、風が止まったように感じられる。
──会場全体が息を止めた。
ホワイトはその光景を、一瞬も見逃さずにいた。
「あれが……Monument bleu同士の戦い……」
そのとき、彼の中でも何かが“生まれ始めていた”。
──次回、決着編へ。