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092 さて大騒動の後始末!

 …………………………………………………

何事につけ、過失の結果として大失敗! という事例なんか

この世界でも異界でも、掃いて捨てるほどあります…と、言い切って

しまうのは如何かとも思いますけど、

まあ、チェニイの〈精霊発動〉特訓の過程で起こってしまった

〈廃都ガドリング大爆発〉騒動に関していえば、まあ、不幸な事故が

起きてしまいましたねハハハ………で

済ませていいレベル、かどうかは微妙なトコロでしょう


この場合、責任はだれが取るのかというと、

〈火精〉を暴発させたチェニイなのか、それとも事前に

ガドリングへ接近する妙な来訪者たちをチェックしていなかった

オスカー・ノギス技師なのか、それとも二人の共同責任なのか

なんて悠長なことを議論してる場合じゃなさそうです

現にバクハツに巻き込まれた〈被害者〉は発生してるし

この種の5人グループは、登場即バクハツ! がお約束

だよね~( ´艸`)、と笑っていられる場合でもありません

 …………………………………………………


 最初に水精堂に飛び込んできたのは、ガドリングの警備担当の大白猿…通称ブラック・ジャックでした。

「姐サマ、かなりトンデモネエコトが起きチマイましたデスぜ!」

 慌てふためいた様子で、手ぶり身振りでニキータに伝えようとするのですが、何を言ってるのか、さっぱり要領を得ません。


「アワ吹いてないで落ち着いて話しなさい! 何かあったことは分かってます。先ほど大轟音がこちらにまで響き渡りましたから。解体現場で事故でも起こったの?」

 姐様は、ブラック・ジャックをなだめようとしますが、なにせこの大白猿は、アタフタしたまま収まりません。


 ニキータは水精堂の応接間でソーマ…彼女のお気に入りのスパイス入り強壮飲料…を、はるばるガドリングへ到着したシェノーラ水精教導にふるまっている最中でした。


「あ、アネさま…やっぱり私はそろそろ、お暇させて頂くわ…」

 

〈おかしいわね、いつもは沈着冷徹なこのコが、さっきから妙に落ち着かない…。

 遠くで雷でも落ちたような音が響いたけど、そのあたりから様子がおかしいのよね。なにか、思い当たるフシでもあるのかしら?〉


 一方、飛び込んできた警備担当のブラック・ジャックは、どう説明していいのか四苦八苦しています。

「ダダダだから、サッキほど、ガドリング東ノ森に、妙な5人組のオキャクサマが来ヤガッタんです! ンデ、シカタないから姐様の許へアンナイしようと思っタ矢先に、ミズウミの外れでダイバクハツが起っチマイヤガッテ…お客さん連中が全員、フットバサレチマッタンダワ」


「はあ! どういうこと? その…お客様ってのは、どういう方々なの? フットバサレタとか言ってるけど、皆さんはご無事なの?」


「オレラにも、ワケ分かんないス! タシカヒトリが…ジブンらは、ヨンギツぁからハルバルやってきた〈えごーふぁいぶ〉ダゾ、とか名乗っトリマシタ」

「なにその…〈エゴーファイブ〉って? あたしに、そんな情報は入ってないわよ! ヨンギツァ市からこのガドリングへ使節が来る、なんて話も聞いてないし…」


 がたん! と音を立てて対面に座っていた水精教導シェノーラが、いきなり立ち上がりました。その勢いでテーブル上のタンブラーが音を立てて倒されましたが、彼女はそんなことにはお構いなく、早口でニキータに向かってまくし立てます。


「ご、ゴメンナサイ姐様! 事情はあとで…いえ、すぐに…必ず順を追ってお話ししますけど…ともかく私、ここにいると少々、面倒なことになるみたい! 失礼は重々承知だけど、今すぐおいとまします!」

 事情説明も何もかもすっ飛ばして、シェノーラは戸口から急ぎ足で部屋を飛び出して行きました。

 唖然として、ニキータは彼女の後姿を眺めるしかありません。


〈あ、コイツ逃げやがった!〉


 とっさに姐様は事態のあらましを直感しました。

 シェノーラ水精教導は、どうやら大都ジュレーンの対抗勢力である商都ヨンギツァと何かを画策して、騒動を起こそうとしたらしい。そういう裏仕事は、彼女の得意技だから。

 ただ、ヨンギツァ市の連中が、手回しよく…と言っていいのか分からないけど…この廃都ガドリングにまで、すぐに代表を派遣してくるとは想定外だったのだろう。

 で、そこに輪をかけた想定外の事故が起こってしまった…と。


 事故の原因のほうは何となく「アレだ!」と想像がつくのだけれど…。

 ニキータは、そこに意識が及ぶと、思わず頭を抱えてしまいました。

〈なんともまあ、よりによって…間が悪いこと!〉


「ブラックジャック! その〈エゴーファイブ〉とかいう皆さん、今どうしてるの? 大爆発に巻き込まれた、とか言ってたけど、まさか…」

 ニキータが大声で捲し立てると、この大白猿も困惑した様子で応えるしかありません。


「イマ、部下のレンチュウが介抱シトリマスが…ともかくミンナして、この水精堂まで運びこもうとシトル最中で…」

 ニキータはそれを聞いて、再び天を仰ぎました。


「だったら! アンタも悠長に報告なんかしてないで、すぐ現場に戻りなさい! ブラックジャックなんて偉そうな二つ名を持ってるんだから、応急処置くらい手伝えるでしょ!? それとも、法外な治療費でも取らなきゃ自分は指一本動かさない、とでも言うつもり?」


「アネサマ、いったいナンノ話をシトルンカ、オデには全っ然ワカリマセンゼ… 」

 困惑に輪をかけた様子で、この大白猿は応えるしかありません。



 一方、対岸にデカい火球をブチ込んでしまったチェニイと、コーチ役のオスカー技師も、どうやら廃墟をすっ飛ばして森林をブチ抜き、大爆発を起こしたあとで〈何やら分からないけど〉向こう側でエラい騒動が巻き起こったらしいことは察知できました。

「で…この場合オレたちは、どうすりゃいいんだオスカー技師…?」

 チェニイにも、茫然と成り行きを眺めるしかないのです。


「ううむ…」

 予想外の事態に、オスカーも顔をしかめるだけです。

「まあ、技術や進歩というヤツは、このようなイレギュラーの積み重ねで出来上がるものだからな…まあ、それはともかく…」

 何とも悠長というか、他人事というか。

「状況もかなり騒がしくなってきた。本日の特訓は、このあたりでお開きとしよう…」



 さてそれより少し前、迎賓館の片隅で、安らかな午睡に微睡んでいたミリアといえば…。もともと寝起きのよい彼女のことです。寝室の窓から大轟音が響き渡ったとたん、ミリアはソファーから転がり落ちて目を覚ましました。


「な…ナニナニこれ! 雷でもおちたの!? こんな天気の良い真っ昼間に」


 サンダユウも彼女の許に駆け寄ってきます。

〈湖の対岸だミリア! 建物も森も、総崩れになってるぞ!〉

 ちょうど迎賓館の窓から、湖の対岸が丸見えになっているので、様子は手に取るように分かります。もうもうと土煙を上げて向こう岸の廃墟が崩壊し、背後にある森の木々までバラバラになって吹き飛んでいるのが分かります。


 ミリアの脳裏には、その直前にチェニイの叫びがリフレインし飛び込んできました。

〈やったぜ! こりゃスゲエ…解放したぞ!…あっ、ヤベエ! リミッターが触れちまった…ナンダコリャ!……あああ………どうしよ、コレ…〉プッツリ……終了…


 興奮と歓喜と、湧きあがる〈ワケの分からない感情のゴチャまぜ〉!

…ミリアには、それが何モノなのか、おおよその想像がつきました。

 要するにガブニードスから言い含められた〈リミッター解除〉なるものが、どうやら成功したらしい。

 のだけれど、その結果が今しがた目の前に広がっている光景なのです!


 似たような〈ゴチャゴチャの感覚〉は、よく思い出してみるとあの〈レスター島〉で、例のゼイゴスとの対決の折にもミリアの心にも(かなり途切れ途切れではあったけれど)怒涛の如く、飛び込んできたのでした。


 また、やっちまったのねぇ…しょ~こりもなく…。

 ミリアはソファーに改めて腰かけ直し、ため息をつくしかないのですが…。


 しばらくあって、迎賓館の廊下の外から、バタバタバタ! と慌ただしい物音と共に、件の〈客室担当係〉ユリア・イルーランが息せき切って飛び込んできました。

「ミリア様、姐様がお呼びでゴザイマス! すぐ、水精堂へご一緒下さいマセ! 事情は…のちほどお話しいたしマスけど…」

 詳細をいちいち聞かなくても、ミリアにはその後の展開は察しがついていました。


 ……………………………………

ちなみに〈エゴーファイブ〉と称する皆様は…おおよそ

名称からも想像がつくと思うのですが、商都ヨンギツァを

実質的に仕切っている実力者たち〈会合衆えごうしゅう〉たちで

組織された、いわば〈有志グループ〉とお考え下さい

かなりカゲキな行動力も有している火精師(ただし、ニザーミア

学府院出身者ではなく、いわば市井の野良精霊使い)で組織されて

います

ミリアは、もと大都ジュレーンの斎宮サマ…つまりエゴーファイブの

面々にすれば、対立関係にもあたる人物のはずなのですが、

実は〈デュアルフォース〉という側面もあり、水精師と火精師

両面を有する特異な能力が、両者を奇妙な関係で結ぶこととなるのです

次回に続きます

 …………………………………………………

「ザネル」は毎週月・水・金に更新いたします 


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