084 大都ジュレーンにニセ黄門様現る?
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さて、改めてガドリングでニキータ姐様と膝詰め談判(?)に及んで
みると、チェニイ一行…つか現状ではチェニイ&ミリアに限って
考えてみると…以前ミリアがデネブラ山で語っていたコトなのですが
「ニキータ姐様にお願いすれば、きっと願いは叶えてもらえるわ」
的能天気な解決でチャンチャン、メデタシなハッピーエンドで
終わるほど、話が単純ではなかったことを改めて思い知らされます
…
何より「元の世界に戻って」ストーリーを完結させようにも、肝心の
「元の世界」ってのは何なのか、それ自体がアイマイなのですから
少なくともチェニイは現状「記憶を失っている」のだし
さらにミリアにとっても、そのあたりは同様…と姐様ニキータから
今しがた指摘されてしまった
…って、そっちのほうも何やら、事情がさらに面倒臭そうな気がします
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何とも混乱が続いた自分自身の立ち位置に頭がグラグラした挙句、チェニイはふと、別の解決法を考え付きました。要するに「よくある一般的なアレ」です、
〈ンなクソ面倒くせえコト考えなくても、話は単純明快に解決するンじゃないのか? よーするに悪の親玉をブッ倒せば、それで話は万事メデタシ目出度し…〉
とチェニイは一瞬、安直な解決策を提示しようとしてハタ、と気づきました。
〈あ、ヤベえ! その「悪の親玉」って、考えてみたらオレがレスター島で…なんか勢いに任せてブッ倒しちまったんじゃ…なかったっけ…?〉
そうなのです。第一、最初からその方法を選んでいれば〈使徒召喚〉だってノープロブレムだったのに、それを「なんでオマエらの言うことを聞かにゃならんのだ?」と、最初からニベもなく蹴飛ばしたのはチェニイ自身だったのを、彼はコロッと忘れていました。
しかも、ミリアを拉致された怒りに我を忘れて〈ゼイゴス〉の許へ突っ込んでいき、結果的には(召喚した連中に知られないママ)当初の使命は…みごと完遂してしまったのです!
つまり…もう、通常のエンディング解決策はすでに〈使用済み〉状態。
まあ〈ゼイゴス退治〉に関していえは、最後がウニャウニャ…で幕を引かれてしまったけど、要はチェニイが目くらましをかけられ、その隙にマンマとゼイゴスに逃げられたにせよ、本当にあの場でゼイゴスが〈凄惨な最期を遂げた〉にせよ、実は結論は一緒なのです。
なにせ悪役を倒したはずの〈チェニイ〉自身がナニモノだったのか、という究極の問題が何一つ解決していないのですから!
〈そのあたりは一体、どーなってんだミリア?〉
そう思わず問いかけそうになったチェニイですが、横にいる彼女の顔を覗き込んで、彼は言葉を失ってしまいました。
〈こんな辛そうなミリアを、オレは見たことがない〉
少なくとも、彼がこのザネル異界に飛ばされ、ミリアとラッツークの時計塔ポータルの庭先で出会ったあの時以来、一度も…。
そして彼女が苦しんでいる理由も、チェニイは知っています。ミリアの中に、チェニイの叫びはダダ漏れに伝わり、それがミリアを苦しめる原因と繋がっているから…。
「そのすべてを、いまココで、オレに話してみろ!」
……そんなこと、チェニイ自身に告げられるはずもありません。
ここでしばらく、一同に沈黙が訪れました。
チェニイはミリアに声をかけることができない、ガブニードスも、そしてリヒターも…このガドリングへ到着すれば、その先の展望が開けると思っていたのだけれど、今はそんな雰囲気ですらない、と。
「ところでねミリア…それにチェニイ君にも…伝えておきたいことがあるの」
唐突に、ニキータが口を開きました。一同、思わず顔を見合わせます。
「ジュレーン大都で近々、何やら大きな催し物があるそうよ…オカシイでしょ。つい先月、一年で締めくくりの〈過ぎ越し大祭〉が開かれた直後なのに、ね」
実はチェニイには、ニキータが何を言っているのか分かりませんでした。彼がニザーミアに使徒として〈召喚〉されたのは、ちょうど北大陸ノース・クオータ全土の…厳密にいえば北の〈赤十字回廊〉同盟各都市すべてで行われる祝祭の真っ最中でしたから、そんな事態が何の意味を持つのか、わかる筈はありません。
「でね、ワタシが得た情報によるとね、それは先だってノース・クオータ中を駆け巡った怪情報…つまり南の覇者〈ゼイゴス大魔王〉がついに北へ侵攻して、ニザーミア学府院を陥れるだろう、っていうガセ情報を打ち消すための布告を、なんと〈使徒様〉ご自身の口から告知されることと相成りましたとさ…というお話なのよ」
さも可笑しそうな口調で語り終えると、姐様はこらえきれずにクックック…と含み笑いを漏らします。
チェニイも、そしてミリアも唖然として、その言葉を聞くよりほかありません。
「…ワケわからん…」
チェニイには、それしか言いようがありませんでした。
ミリアは顔を伏せたまま、沈黙したままです。
ガブニードスも、口をぽかんと開けたまま…同様。もっとも、このデタラメシナリオを最初に提案したのが実は他ならぬガブニードス本人だったのですが、今更ながら〈マジであんな苦肉の策を、本当に実施してしまったのか〉とでも言いたげな様子です。
まあ、無責任と言えば無責任ですけれどね。
ついでにいえばリヒターは〈オレの知ったこっちゃねえ〉的対応。サンダユウは…そもそも論外だからシカト。
「その情報は、どこで仕入れたのかね? ニキータ」
そう尋ねたのは、一番奥のコンソールでじっと座っていたオスカー・ノギス技官です。
「実はね、さる筋から…なんて…隠してもしょうがないか。シェノーラからの情報が、つい先だって耳に入ってきたの。だからこれは確定情報、決してガセネタじゃないわ」
姐様は告げました。
〈シェノーラ〉という名前を聞いて、〈おう…〉と微かな驚きの声を上げたのはオスカーと、そして(姐様の弟子?)オルト・アリューインでした。
ちなみに、この名前を耳にして、周囲に聞かれることなく微かに舌打ちしたのはガブニードス(というより、この場合はガストニーフと呼ぶべきでしょう)でした。
チェニイには聞き覚えのない名だし、ミリアには…実は彼女がニザーミアを出奔した時期が、シェノーラの水精局教導の地位に就いた時期より以前だったので、彼女のことは詳しく知りません。
余談ながら、チェニイにはシェノーラという名に聞き覚えがないでしょうけど、向こうは彼のことをよーく知っています。一度変装してラッツークへ潜入、そこで〈使徒様〉ファルス…いやチェニイのご尊顔を確認したのですから。ついでにいうと、その折に(誤解も混じってますが)彼女はあまり、チェニイ…つか、彼女にとっては〈チェズニ〉でしょうが…に対して、あまり良い印象を持ってません。まあ、それは後の話となりますが…。
さてここで、姐様は辛い決意を確かめなければならなくなりました。
「ミリア…こんなことを聞くのは残酷かもしれないけど…あえて尋ねるわ。あなたはこれを聞いてもなお、直接ジュレーン大都へ赴く決意は、あるかしら?」
正面を向き直ったニキータは、静かに尋ねました。
ミリアも、しばらくの沈黙ののちに、きっぱり答えました。
「もちろんです」
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〈シェノーラ水精教導〉に関しては(登場したのは第1章なので)お忘れの
方がいらっしゃるかもしれませんので注釈を↓
彼女は水精局で、ニキータ〈姐様〉がガドリングへ下ったのち、空席となった
次席水精導師に代わって、水精局を切り盛りしていた教導です。ちなみに、
ニザーミアをミージェの大群が襲った〈飛蝗騒ぎ〉の折、決死の思いで
ラッツーク竪坑町へ辿り着いたラクーナ水精師のお師匠さんにも当たります
(水精局でラクーナは、シェノーラにけっこう派手にイジられてたけど)
このあたりはep24【それを知っちゃオシマイよ】あたりを参照くださいませ
…
ちなみに、シェノーラ教導はガブニードス(ガストニーフ)とは相性が悪く、
彼のほうでも相当にシェノーラを煙たがっていました
次回に続きます
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