082 弟子はリヒター1番、ガブちゃん2番
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サンダユウが匂いの元を突き止めたところ、なんと廃都ガドリングで
バッタリ遭遇したのは、なんとガラン山脈の下りで襲われたばかりの、大白猿
モジャー…またの名を〈エイプ・オム=人間猿〉の巨体でした!
ようやく一息ついたと思ったら、こんなトコロへ来て再び戦闘勃発か!?
と思いきや、なんとこの廃都を復興するために協力しているのが、
この連中だったとは、さらに驚きの事実が判明
さらにもう一つ驚いたことに、このガドリングの廃墟の中にも、ラッツークで
見た、あの〈時計塔〉ポータルが存在したというのだから…もう
この湖面に沈んだ廃墟の都、さらにどんなカラクリが隠されているのか
ワケが分かりません!
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ちょうど廃墟の朽ち果てた建築物によって「遮蔽されていた」かのような格好で、いきなり水たまりの角を飛び越えた途端に、目の前に〈それ〉は飛び込んできました。
いちばんショックを受けたのはガブニードスでした。
まさしくラッツークの岬に鎮座していたのと寸分変わらぬ〈時計塔〉が、いきなり登場したのですから。リヒターもまたラッツークに到着したとき目にしてはいたのですが、ガブニードスの場合は〈見慣れた仕事場〉が、こんな辺境の廃墟にいきなり引っ越してきたような気分にさせられたでしょう。
エイプ・オム…というより大白猿モジャ公と呼ぶ方がしっくりくるか…に連れられて、この時計塔ポータルに到着した〈冒険者二人組〉&サンダユウは、馴染みのタラップを上がって二階の〈プラネタリウム〉部屋へ通されました。
「ギシサマ、オ客サマが近クをホッツキ歩いとったンデ、お連れシマシタガナ」
先ほど〈ユニオンジャック〉と名乗ったモジャー猿は、奥のコンソールで忙しそうに立ち働いていた〈ギシサマ〉に報告しました。おそらく彼が、この廃都ガドリングの復興を担っている責任者、なのでしょう。
「なんじゃい、今日はバタバタ忙しい日だな。悪いが今から水精宮へ寄る予定になっとるんだ…姐様との約束でな。あの姐サンを永く待たせると、後がコワいんだわ」
男は、振り向きもせずにそう呟きました。どうも、取り込み中のトコロを邪魔してしまったようです。
どれどれ、どっこいしょ…と言った具合に振り向いたのは白衣を纏った長身で瘦身、初老の男性です。一見してガブニードスは、自分と同種の人物…技官だと確信しました。
「おや珍しい、NUAコンの技官かい。義体サイボーグのナリしとるところを見るとニザーミアあたりから、はるばるお出ましになった風だな」
彼は一目でほぼ正確に、ガブニードスの人品骨柄を見抜きました。
「は…初めましてワタクシ〈ガストニーフ1等技官〉と申します。お察しの通り、先だってこのガドリングに到着致しまして、その…」
型通りの挨拶をしようとした彼を、この初老の技官は制します。
「自分は〈オスカー・ノギス〉見ての通りの技術屋だ」
「…では…失礼ながら…〈スギノ技官〉とお呼びするのがよろしいですか…?」
「やめんか! NUA流の格式ばった礼儀作法なんざ、聞きたくもねえ。本名の〈ノギス〉と呼んだらよかろ。アンタも…ガブニードス技官…でええんだろ、呼び名は」
「は、はい…失礼いたしました」
ガブニードスも恐縮の体です。
「大体なあ、廃都まではるばるやって来たトコを見ると、アンタもおそらくNUAコンをお払い箱になったクチだな? だったらいまさら、あんなクサレ組織に義理立てする理由もなかろうが」
まさに図星を衝かれガブニードスは汗顔の至りです。ロボだから汗はかかないけど(笑)。
ノギス技師は、ガブニードスの脇で呆けているリヒターにも目を留め、声を掛けます。
「で、そっちの御仁は…ルボッツさんかな ? 風体からすると、粋でイナせな冒険者の傭兵サン、っつう感じだが」
「ハ、ハイ! リヒターっていいます!…あの…ひょっとしてアナタは伝説の〈雷光のオスカー〉様では…ありまマせぬか?」
ほう、と感心したような顔でオスカー・ノギスは応えました。
「よくまあ…ンな古い通り名まで持ち出したもんだ…」
なんかこの人、妙にトンデモな人物だったようですが…けど、そもそもダレ?
同時刻、チェニイとミリアはガドリングの案内役オルト・アリューインを伴って迎賓館を出発し、サンダユウからの通信を頼りに湖面の廃墟、水たまりを抜けて走ります。
「そっち違う! サンダユウの声が聞こえるのはその建物の向こう側からよ!」
ミリアがオルトを指示して、入り組んだ廃都の迷路を進みます。
「そっちは…時計塔ポータルの方角だが…」
汗をかきつつ、チェニイとオルトはミリアを追って走り回ります。オルトに関しては…どっちが案内役なんだか、もうワケが分かりません。
そしてミリアが、巨大な建物廃墟の脇を抜けたとき、その向こうに見慣れた光景…ラッツークの岬にも佇んでいた〈アレ〉を確認して、驚きのあまり足を止めました。
「なんで…こんなトコに〈時計塔小屋〉が建ってるのよ…」
ゼイゼイ息を切らしながら、ミリアに追いついたチェニイも、その驚きは同様でした。
けれど、建物に見とれている場合ではなかったようです。
「ソコデ止まっテロ! ハンパな動キはスンナ!」
不意に背後から野太い声が響いたのです。驚いて振り向くと…そこには、以前ガラン山脈でバトルを繰り広げた巨大なサル…エイプ・オムが立ちはだかっていたのです。
「ナニモノだお前!…なんでこんな廃墟の町に、バケモンがうろついてる!」
チェニイは慌ててミリアに手を引っ張って後ろに下げ、自分は身構えます…が、困ったことに得物の錫杖は迎賓館に置いてきてるし、カンシャク玉も持ってきてない。頼みの綱は使い慣れたタガネ1本…って、これじゃ鉱物採集くらいしか、使い道がない!
けどこの巨大サル、どういうワケか会話が通じるようです。
「ソッチこそナニモンダ! なぜココ、ガドリングまでヤッテキタ!?」
…なぜココまで来たのか、って尋ねられても正直、答えるのがムズいのですが…。
「オデノ名は〈ブラックジャック〉。妙なマネしやガッタラ、コノ得物デてめえのドタマなんぞ、一撃で〈ドボン〉ゾ…」
この大猿はけっこう知恵もついてるうえ、右手には黒光りする鈍器まで備えています。こりゃかなり分が悪いわ、絶体絶命のピンチだわ。
「やめろブラックジャック! この方々は…大切な賓客だ! 今から時計塔ポータルへご案内するところなんだ!」
ゼエハア呼吸を乱しながら、ようやく二人に追いついてきたオルトが、あわててこの大白猿に大声で叫びました。
「お、オ客様デスタカ…こりゃマッタ、失ッ礼イタシマスタッ、ガチョ~ン」
なんか妙に愛想よく変化したブラックジャックは頭を掻きながらチェニイに謝罪します。多少ネタが分かりづらいのは愛嬌です。
「コイツ…って、敵じゃないのか?」
「あ…ああ…この町を警備してもらってる。なにかと物騒な状況だからな、いまは」
チェニイもミリアも、そんな事情は知りません…が、少なくともこの廃都ガドリングの常識は、これまでとはまるで違うようだ、というコトだけは了解しました。
ミリアは(このコも適応が早いのですね)モジャ公をボディガードに雇っているガドリングの慣習に興味シンシン、さっそくブラックジャックにココのシステムを尋ね回ります。
「じゃあガドリングではモジャさんたちは、いろんな役割を担ってるの?」
「ソデスよ。警備タントの〈ハイジャック〉とか、ボーリョク沙汰タントの〈ヴァイオ・レンスジャック〉、あと〈ジャックス・パロウ〉や〈ケイジコ・ジャック〉ミタイなヤバいヤツ専門タントもイマス…」
どこまで本気にすればいいのか分かりませんけど。
何だかんだで無駄に時間を要してしまいつつも、チェニイとミリアはどうにか、サンダユウがいる筈の〈時計塔ポータル〉に辿りつきました。
ところが、中では既に既に話が佳境に入っているというか、この時計塔を管理しているオスカー・ノギス技官と〈冒険者コンビ〉ガブニードスとリヒターは、和気あいあい(とまでは申しませんが)で、互いのこれまでの情報交換をしている真っ最中でした。
そんな三人の様子を横目に、所在無げにしていたサンダユウは、ミリアを見ると嬉しそうに走り寄ってミィー! と挨拶します。
「ミィーじゃないでしょ、サンダユウ! アナタが勝手にどっかへ行っちゃうから、こんなコトになるんじゃない!? お陰でさんざん、心配しちゃったわよ」
チェニイとミリアが戸口に立っているのを知って、ノギス技師はまた頭を抱えました。
「またお客さんの到着かい? いまからすぐ、自分は水精宮に行かんとならんのに…姐様の招集をシカトこくと、後がコワいと言っとるのにこの有様…って、ところでこのお二人はどちらさんかな?」
追いついてきたオルトがこれまでの事情を説明を簡単にすると、呆れたようにノギスは呟きました。
「何ともまあ、ドタバタが後から後から団体さんでやって来るもんだな。これじゃあ姐様も後片付けで大騒ぎになるはずだ、けどまあ…」
時計塔ポータルに期せずして集合した一同を見渡して、ノギス技師は嘆息します。
「こんなコトなら、わざわざ水精堂へ集合しなくても話は進むんじゃないか? あとはココに姐様を呼んでくれば…」
そう言いかけたところで…さらに一人、戸口に姿を現しました。マジで間がいいですね…。
「こんなコトだろうと思って、ワタシも来ちゃったわよオスカー!」
ニキータ・ディーボックス元水精導師が、戸口に仁王立ちしていたのです。
「あんまり待たせるから。まあ、オルトもチェニイ君たちを呼びに行ったきり返ってこないから、ひょっとして…とは思ったけど。
お陰で余計な手間が省けたから結果オーライだったけど…それにしてもオスカー! アナタには日頃から時間厳守、って口を酸っぱくして命じてるのに、いつまで経っても悪い癖が治らないのねぇ」
この後一同全員、まずはニキータ姐様に平身低頭してお詫びするしかありませんでした
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期せずして、今回の関係者がガドリングの〈時計塔ポータル〉に
集結した、という図です
ここから、この先の展開を占う会議の開始となります
(本来なら段取りを整えた後、改めて水精宮で大会議を執り行うつもり
だったらしいのですが、まあ省エネというか…余計な手間が省けて
結構なことではありますが)
それにしても、ガドリング廃都を陰で支えている技師オスカー・ノギスも
相当なタマのようですね
あの一癖二癖もある風来坊リヒターを直立不動にさせてしまう〈英雄〉
なのですから…
次回に続きます
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