080 ガドリング現在工事中
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〈姐様〉ニキータ・ディーボックスの粋な計らいで催された〈お茶会〉
…最終的にはメチャ酔って乱れた〈呑み会〉に化けましたが…のお陰で、
無事に大騒動の誤解も解け、チェニイ一行は辿り着いた廃都ガドリングに
腰を落ち着けることができました
ただ結局、ニザーミア学府院の首席導師から預かったスクロールは
ものの見事に大爆発してしまったせいで、チェニイおよびミリアの
進むべき進路に関する重要情報も同時にオシャカとなって粉砕!
なので改めてこの先どうするか、この件に関しては姐様と相談を重ね
改めて見つめ直すしかなくなったワケです
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最初に廃都ガドリングを丘の上から眺めたガブニードスが呟いた感想こそ、かなり正鵠を射たものではありました。何十年前に、ここでどんな事件が起こったのかは分からないけれど、少なくとも今現在、この町は復興を遂げつつある。そんな気配が感じられる、と。
ただチェニイにすれば、そう聞かされてもザネル異界に来てから比較できる町はニザーミア学府院とラッツーク竪坑町だけですから、このガドリングをどう感じるかと言われても答えようがないのです。ただ、彼の中にいる〈誰か〉は別の感覚をもっているようですが。
さてチェニイとミリアの二人がニキータ姐様のお茶会(と言っていいのか?)から戻ってきて…ミリアは酔いが回ってブッ倒れ、眠りこけてしまったワケですが…チェニイからその後の事情を聞かされた冒険者二人組(とチェニイが命名)はひとまず胸をなでおろしました。ただそうなると、二人はガドリングに長期滞在する意味もなくなったし、それにチェニイとミリアは今後どんな身の振り方を考えればいいのか、など問題も山積して頭を悩ますことにも気づいたわけです。
「まあ、お二人は改めてニキータ様と膝詰めで相談されるべきでしょうから、しばらく廃都に滞在するのがよろしいかと思います。ただ、我々は…」
ガブニードスはここで、ハタと迷いました。
「この先の指針が、現時点では決められないのですよね」
確かに。ガブニードスにすれば、いわばNUA完全公社からはクビになった身の上…失業者なのです…。
「オレは言ってみりゃ傭兵と同じで、この廃都にガイドとしてやってきただけだからな。ま、ここを適当に観光でもさせてもらったら、あんたらと別れて…また風来坊の冒険を続けることにするさ」
彼の性格らしく、このあたりはサバサバしたものです。
ただ、このまま迎賓館の居室で燻っていても仕方がない。ヒマつぶしというのもナニだけど、この廃都と湖に沈む町を散策…つか探検にでかけるとしようか、と。
「そういや以前に世話係とか言ってココへやって来たあのチョコマカした女の子、あれから全然、顔を見せないな。遠慮なく用を申し付けろ…とか言っておいて何なんだよ!?」
リヒターは不満顔です。
ちなみに件のユリア・イルーランはというと、二日酔いでダウンしております。
「けど、このまま勝手に出かけても問題ないか?」
「いいんじゃないですか? チェニイ様には言伝しておいて、留守番をお任せしましょう。ミリアさんのお世話もお願いしなきゃいけないし」
チェニイもさすがに(ミリアほどではないにせよ)先だっての〈お茶会〉でそこそこ神経を使っていたので休息中。ミリアは現時点でも白河夜船でお休み中です。
ということで二人は、部屋を出て行きました。ちなみにトト・サンダユウが勝手にフラフラどこかへ行ってしまったので探してくる、という口実もくっつけて。
さて、その当人のトト・サンダユウはというと…実はこのガドリングの水精宮にほど近い水没した廃墟付近から漂ってくる、妙な匂いに気づいて探索しいたのでした。
〈オカシイな…あの岩山下りで感じたあのケダモノの匂いが…どーいうワケだ…ここからもプンプンしてくる〉
サンダユウには、それが妙に不吉な予感を感じさせるものだったのです。
廃墟…とは表現しましたが壊れた家屋や建具などは、そこそこ片づけられており、どうやらここ最近になって、人の手が加わっているような感じです。そういえば水精宮で紹介されたガドリングの姐様の部下たちの中にも「外回り」を担当している男どもが混じっていましたが、もちろんサンダユウの関知するところではありません。
やがて、その匂いの元は強くなり、一軒の〈建築中の?〉建物に通じていることに気づきました。サンダユウはしきりと鼻をヒクヒクさせながら、戸口に歩み寄ると…
ソイツはいきなり、戸口から巨大な姿を現しました。
キイイイイイ!
サンダユウは総毛を逆立て鋭い警告音を発しましたが…あいにく手遅れだったようです。
一方、長々と迎賓館の居室で微睡んでいたチェニイとミリアも、部屋の扉を叩く音でようやく目覚めました。
戸口に立っていたのは、水精堂で紹介された年長で長身のほう。たしかオルト・アリューインと紹介された男です。
「お目覚めかな?」
ぶっきらぼうに二人に向かって声を掛けました。
「お蔭様で…」
眠い目を擦りながら、チェニイは挨拶を交わします。ちなみにミリアは…まだ寝ぼけ眼でムニャムニャと何事か呟いていますが。
「昨日は〈お茶会〉で大盛り上がりだったそうだね」
オルトはチェニイに話しかけました。どうも彼は、感情をあまり表に出さない性分のようです。
「まあ、いろいろと…それで、今日は改めてニキータ様との会談の続きになるのかな?」
「いや…実は別件で、幹部との打ち合わせがあってね、ちょっと日を改めたい」
オルトの返事はそっけないものでした。
「はあ…」
じゃ、なんの用事で来たんだ? とチェニイが尋ねようとしたところに機先を制し、オルトは畳みかけました。
「よろしければお二人を、ガドリングの現場へご案内したい。いかがかな?」
「あの…現場って…どういうことなんでしょうか?」
と聞いてきたのは、ようやく目が覚めてシャッキリしたミリアでした。
「このガドリングの現在の姿を、改めてお目にかけた方が何かとこの先、お話がスムーズに進むだろうという姐様のご配慮なのだが…いかがかな?」
チェニイたちに異存はありませんでした、が…。
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丘から見下ろした廃都ガドリングの姿は、文字通り
「打ち捨てられた旧都」の佇まいそのものでしたが、
ガストニーフなどは単なる廃墟ではなく、別の姿を
隠しているのでは…と推察しました
そのあたりの様相は、すぐ明らかになると思いますが
それより…何やら気になるのは、トト・サンダユウが
遭遇したらしき〈アイツ〉のことですね ま、いずれにしても
次回に続きます
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