078 お茶にしましょう、お酒はNGよ 上
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チェニイ一行と廃都ガドリングの〈魔女〉およびその配下との
記念すべき(?)初顔合わせは、文字通り
〈とんでもない結末〉で締めくくられました
…
〈起こってしまったこと〉を率直に解釈するのならば、
(少々、特撮ドラマ風の脚色をくっつけますが)
〈正義の組織〉ミザーミア学府院の策略によって、送り込まれた
〈鉄砲玉〉破壊工作員チェニイは自爆特攻テロを敢行!
悪の巣窟・廃都ガドリングの女首領ニキータはものの見事に爆殺!
…されるするはずだったのに…
トライフォースの魔力(邪術)を駆使する魔女ニキータのマヤカシによって
すべての出来事が、なかったコトにされてしまった!
要するに「はい、やり直し」でリセットかけられ振り出しに戻った
…ってトコロですか…
こーいうのを「狐につままれた」とか表現するのでしょうけれど
実際問題、当事者たち自身も何がなんだか、まるで分からないのです
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「まるでワケの分からない」結末で終わったガドリング水精宮会談ののち、チェニイ一行は再び迎賓館の居室へ戻されました。
これだけ大騒動を引き起こしたのだから〈こりゃヤバい、さっさとトンヅラこくぞみんな!〉的ノリで、彼らはドサクサ紛れに逃走を試みてもよかったのですが…常識的展開で考えたら…なにせチェニイはともかく、ミリアは放心状態の体で水精宮から一歩も歩けず、ヘタリ込んでしまったため、結局ガドリングの従者たちに従って、こうして一種の軟禁状態で、ガドリング側の…というよりニキータ姐様の沙汰を待つしかなくなったのです。
「いざとなったら、オレの準備した備品が役に立つぞ。まず打ち合わせしとこうぜ」
と、部屋の片隅でうろうろ立ち歩いているのがリヒターです。
「準備した備品、って…ひょっとしてそれ、例のカンシャク玉ですか、また?」
うんざりした様子で口を開いたのはガブニードスでした。
「何だよその、やる気のない態度は!」
「あのね…相手は廃都の〈魔女〉様なんですよ! 叶うワケないでしょう。しかも状況を考えたら、こちらに理も勝算も全くないのはミエミエじゃないですか」
「だったらこのまま、向こうの沙汰を待つか? 下手すりゃこっちは仕返しに命まで取られるんだぞ! それとも、ロボ様必殺のロケットパ~ンチ! でもブチかまして、その隙にトンヅラこく算段でも考えようか?」
「ロボじゃないって言ってるのに! それにロケットパンチじゃなくて〇★△×※!!」
なんか、また例のムダ評定を二人は始めました。
もっとも、いいアイデアをひねり出そうなんて、もとより二人とも考えちゃいません。ただこの状況があまりにも不安で、いても立ってもいられなくて、ムダ話で時間を潰しているだけなのです。
一方、チェニイとミリア(とトト・サンダユウ)はベランダの片隅にうずくまって、じっと空を眺めています。
「あたしのしたことが、こんな恐ろしい事態に発展したなんて…」
ミリアは、先ほどから何度も繰り言を呟き続けています。
「お互い様だ、って…さっきから言ってるだろう。あの首席から預かったのはオレの身元を証明するスクロールだったからな。ま、中身がバクダンとは思わなかったど」
ミリアは〈バクダン〉という言葉に反応して、チェニイに向き直りました。
「あなたも〈バクダン〉だった、って思ってるの!? 首席様がアタシを騙して、姐様にあんな恐ろしい罠を仕掛けようと…」
ミリアの反応は激烈でした。チェニイに食ってかかっているのか、それとも自分を責めているのか、たぶん彼女自身にも分かっていないのでしょう。
「全然思わないよ、今でも…それは変わらない」
チェニイの返事はきっぱりしたものでした。
「オレにしても、あのニザーミアの執務室で会ったときになぜか、そう確信したんだ。この人は信用してもいいんだ、って…」
ミリアは改めて、チェニイの目を見つめました。
「実はな…あの部屋で自分も、妙な感覚に捕らわれてしまって、その…放心状態に一瞬、なりかけてたんだ。そのとき、どういうワケかあのオービス首席と、なにか心の中で会話してたような。だからだと思うけど、レスター島で一戦交えたゼイゴスとの一件もな、勝手に〈もう一人の自分〉があの人に打ち明けていた、と…」
「…それって、どういうこと?」
チェズニは言葉を継ぎました。
「ニザーミアの誰にもあの一件を報告しさなかったのに、オービス首席にはまるで見て来たように、その時の様子がお見通しだった…」
「そういえば、確かにそうね…」
「それにレスター島で夜中目覚めたとき、オマエは〈自分の中には、二人のミリアがいる〉ってオレに告げたよな。実はオレも同じなんだよ、妙な話だけど、たぶん…あの執務室で放心した時にそう感じたんだ」
ミリアの目は、ここで大きく見開かれました。
ラッツークの西沼、テラスに佇みながら、
〈アタシたち兄妹ね、双子よ、そう、双子だったのよ〉
ミリアはチェニイに、そう告げたのでした。
彼女の脳裏にもその瞬間〈あの〉懐かしい、湖で会話した光景が蘇ったのです。
「おーおー、お二人とも仲がよろしいこって…こんな時に大変失礼ですけどね」
外から声をかけてきたのは(…無粋な…)リヒターでした。
「ドアを誰かがノックしてるんだが…ここはチェニイさんが応対した方がいいと思うぞ」
室内に入ってきたのは〈世話係〉を自任していた少女ユリア・イルーランでした。
「チェズ…チェニイ様にミリア様。お二人を姐様の居室にお連れします。ご一緒にいらして下さいマセ」
「……」
チェニイは不審そうな目でユリアを眺め、しばし返事ができませんでした。
「なんで二人だけなんだ? オレらを放ったらかしにして、まずは首謀者二人を処刑しようって算段が固まったのか?」
皮肉な口調でユリアに声をかけたのはリヒターです。
「あの…何をオッシャっているのか分かりませんが…姐様がご一緒にお茶でも差し上げようと…いうことで…お誘いに伺っただけデスケド」
「はあ? 何いってるんだ?」
ユリアは不思議そうな目でリヒターを眺めて、ポツリと尋ねました。
「あの…アナタは…たしかリヒター様とおっしゃいましたワネ。本当にアナタ、出自は〈ルボッツ〉なのデスかしら?」
「あ…ああ…それがどうした?」
「だったら、ワタシたちは敵対する理由がございませんワ、なにひとつ」
「……」
珍妙なことを口走られたリヒターは二の句が継げず絶句しました。
「ともかく、リヒター様とガブニードス様は、ここでしばらくお待ちくださいマセ。姐様は饗応の間でお待ちですカラ、お二人はコチラへ…」
有無を言わせぬ口調でユリア・イルーランはチェニイとミリアを促します。
ともあれ、処刑するために部屋を連れ出されるワケではなさそうです。
二人は居室を出て長い廊下を抜け、テラスのある2階の応接間へ向かいました。
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なんとも事態は、珍妙な成り行きになって参りました
姐様と一緒に、私室でお茶でもしましょう…などという雰囲気では
全くなかっと思うのですが、これはまたどういう風の吹き回しか
それとも、別の思惑でもあるのか?
それにしても(ユリア・イルーランはこの場で明言しなかったけれど)
お茶をしよう、と誘ったついでに「お酒はダメよ」と念も押されたとか
これって、どういうことなのでしょうか
(ミリアの〈あの〉習癖を姐様が承知なら、何となく理解できるけど)
次回に続きます
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