075 姐様は怒ると怖いぞ!
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前回、チェニイの思わぬ弱点が露わになってしまいました!
まあ…誰にだって、人に知られたくない欠点はありますから、
あんましギャーギャー言っても仕方ないんだけど、
ここ一番の勝負所つか「ナメられちゃいかん! シャキっとしろ」
って場面で、湖面に落ちて溺れるなんてのは…ねえ…
…
ところで、この廃都ガドリングで遭遇したこのヒト(現時点では
ナニ様か存じませんが)どうしてチェニイのことを知ってたの
でしょうか?
それに、名前を〈チェズニ〉とか…間違えたのでしょうか?
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「水に落ちた犬は打て!」
なんて物騒なコトワザが某国にはあるそうですけど…チェニイ様がマジでそんな目に遭わされたら、それこそマジで身もフタもありません!
幸いにして、廃都ガドリング詣でに参上したパーティ一同(金属メカのガブニードスとサンダユウを除く)が慌てて彼を引き上げてくれたので大事に至りませんでしたが、溺れてしたたかに水を呑まされてしまったため、目を覚ますにはそれ相当の時間を要しました。
「あ~~、マヂで死ぬかと思った…」
意識を取り戻したチェニイ様、ガドリング到着の第一声は何とも情けないものでした。
パーティ総出で水中からチェニイを引き上げ、ガドリング水精宮(と思しき場所)の正面テラスに運んだのはいいけれど、本当にとんだ醜態をさらしたものです。
で、実は行きがかり上、救出にも参加してくれた…誰だか知らないけど…最初にテラスから声をかけた僧服姿の屈強な男性が一名、それに加えて見知らぬ男女2名が見下ろす中、ゴホゴホと咳き込みながら息を吹き返したチェニイですが、ともあれここは感謝をこめて挨拶しておくのが礼儀というものです。
「…ど、どなたかは存じませんが、この度はお世話になりました…つか…申し訳ありません。とんだ醜態をさらしまして」
とりあえず咳き込みながらも、それだけは起き上がって一同に告げたのだけれど、この見知らぬ男女合わせて3名のほうの対応は、何とも微妙なものでした。
「まさか戻ってきて一発目に、玄関先で溺れるとは思わなかったよ」
と、呆れるように呟いたのは、最初に階上のテラスから突然声をかけて来た男性です。
「元漁師の息子が、フツーはいきなり…水に落ちて…アップアップしませんよネ、チェズニさん性格が変わったのかしら? なんか別人にバケちゃったみたい」
と付け加えたのは、同じく僧服を纏った少女…年のころは不明ですが、ミリアよりも相当若い印象です。
「重ね重ね、失礼しました…あの、私どもは…諸般の事情がございまして、ニザーミア学府院より参上いたしまして…」
なんともバツが悪い表情で、チェニイに代わって口上を切り出したミリアでしたが、一番年上(と思しき)の、背の高い男性が彼女を制して告げました。
「ともかく中に入りなさい。おおよその事情は承知しているが、姐様はいま不在なんでな。まあ明日か明後日には戻ってくるから、しばらくはゆっくりと…旅の疲れを癒すのが先決だろう。
それに約一名は、今しがたドザエモンになりかけたばかりだし…」
そう告げると謹厳実直そうな表情を崩して、くすりと笑いました。
パーティメンバー一同(サンダユウは除く)、返す言葉もありませんでした。
ガドリングの水精宮、とミリアは言ってましたが(たぶん、それで正しいようです)、正面から入ってすぐ吹き抜けになった祭祀場が設えられ、その奥が…たぶん謁見の間、別棟に続いて、彼らが通されたのはさらに奧。
かなり瀟洒な作りの建物は、おそらく賓客をもてなすためのものでしょう。廃都、と聞かされていた割には、手入れはそれ相応になされていて、とても…数十年単位で放置され、寂れているとは思えません。
一同は数室ある居室に思い思い陣取り、ともあれ一息つきました。
「ワタクシが、ミナサマのお世話を申しツカリました…ユリア・イルーランと申しますノ。必要があったら、何でも遠慮なく…お申し付けくださいマセですの」
何やらアクセントも語調も妙に外してますが、対応は丁寧で卒がありません。もっとも〈遠慮なく申しつけ〉ろと言っておきながら、そそくさとその場を立ち去り奥へ引っ込んでしまいましたが。
「チェニイ様、先ほどから気になっていたのですが…こちらの皆様とは、旧知の間柄なのですか?」
「…んなワケないだろ…」
予定外のガドリングで意図せぬ水浴からキセキの生還を遂げたチェニイは、まだ本調子ではないらしく(まあ当然ですが)ぶっきらぼうに応えるのみです。
「けど向こうは、あなたを知ってるみたいよ。だって〈帰って来た〉とか、口にしてたし。それに名前も…チェズニ、って…」
「たぶん人違いだな」
取りつく島もありません。
「なんかあの連中、陰でコソコソ話してたぞ」
と、口を挟んだのはリヒターでした。
「さっきの少女だけどな、彼女はチェズニ…さんと呼んでたけど〈旅から戻ってきたら、ずいぶん人相が悪くなったわネ〉とも言ってたな」
((´∀`))ケラケラ笑うリヒターでした。
「余計なお世話だ!…だいたい、なんでアンタにそんな情報が伝わるんだ?」
「冒険者の心得で…密談は聞き漏らさないんだよ、耳もいいしな」
「フン!」
すっかりいじけてしまったチェニイです。
リヒターはここで真顔になって、付け加えました。
「それから、この水精宮で最初にチェニイさんに声をかけた、あの男…それが元で、アンタは水に落ちて溺れちまったんだが…アイツが、妙なことを口走ってたんだ」
さすがに〈妙な事〉とまで言われると、気になります。
〈姐様が戻ってきたら、チェズニの奴、どう申し開きをするつもりなんだろう? これがきっかけで、またニザーミアの首席サマとの不仲が決定的になんなきゃいいんだが〉
「って…チェニイさん、これ、どういう意味だと思う? 心当たりはあるかね?」
…
もちろん、チェニイに思い当たるフシなど、ある筈もございません。
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たとえば、してもいないイタズラを咎められ、叱責されれば
不本意というか不服というか…少なくとも「ボク、そんなコトしてないし!」
と抗議するのは当然のナリユキです
ただ、どうも…周囲から漏れ伝わってくる情報を総合すると、事は
そうスッキリとは行きそうにありません
なにせ、チェニイ「ファルス」様の方には、そのあたりの記憶が
完全に欠落しているのですから…
〈いったいオレは、何をしでかしたんだよ~!?〉
と、叫び出したい気分でしょうね、今のチェニイには
次回に続きます
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