070 いろんな宝物の追憶
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溶岩流に呑まれつつある町〈ハグド〉…町というより、超高速交通の駅だった
そうですが、なにやら分かったような分からないようなこの施設、
問題は、このかなり昔に放棄されたココが、件の〈ダール・グレン〉暴走の
余波で地底に噴出した溶岩に呑まれてしまい、さらにその余波でデネブラ山も
あちこちに開いた噴火口バイパスから大量の溶岩流が噴出すると、
最悪の場合は山麓を流れ下る危険性があることが判明したのです
そうなると当然、チェニイ一行の〈ガドリング廃都への道〉も完全に閉ざされる
ことになります…さあタイヘンだ!
ただ、この〈ハグド高速鉄道〉を守っていたゴドム族…いわゆるドワーフ
ですが…最後の〈墓守〉ゴルフ老は、この件ではかなり捨て鉢、つか無頓着で
いっそのこと廃墟もろとも、流れ来る溶岩もろとも心中する覚悟さえ固めてる
ようなのです
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「レミリャちゃん、さっきから妙な匂いがだんだんキツくなってない? 下のほうから、何かが燃えてるような硫黄臭さが…」
「そーかしら? あたしはさほど感じないけど。だって生まれた頃から、このハグドの洞窟に慣らされてるから、鼻もバカになっちゃったのかな~」
何とも、長閑な少女ですね。生来、呑気というか大らかな性分なのでしょうか。そのあたりの感覚は、ミリアとタメを張れそうだけど。
「う~ん、やっぱダメ! なんかココ来てからあたし、食欲も失せちゃったし…」
「ダメよぉ~、ちゃんと食べるもの食べなくちゃ、大きくなれないわよぉ~。それにチェムナちゃんはおナカ空いてるでしょ? ずっと長いこと、歩きずめだったみたいだから」
チェムナちゃん…って誰の事なんでしょう?
「あ、このコは〈トト・サンダユウ〉っていうの」ミリアが応えます。
「あら、オモシロイお名前ねぇ。チェムナ族のコだからチェムナ、ってアタシは勝手に名前つけちゃったわゴメンね。そっかあ、サンダユウ君かぁ」
「でもリミリャちゃん、よくこのコがチェムナ族だ、って分かったわねぇ」
「あら、だってこの近辺にはこーいうコたちがウヨウヨしてんだもん。ウフフフ」
「……??」
ミリアは首をかしげました。ガラン山脈にチェムナ族なんて、生き残ってかなぁ?
「そーだわ、何もないけど…隠し扉の中に、取っておきのミグの実が残ってたわ。ちょっと待っててね」
レミリャは壁の隅をゴソゴソと動かすと、パタンと音がして戸棚が開きました。
「ココはアタシ専用、ヒミツのお宝隠し場所なのよぉ~エヘヘヘ~」
レミリャは小さなキンチャク袋を取り出して、なかからミグの実を、サンダユウに差し出します。
「さあ、おあがり~」
ミグの実といえばチェムナ族の大好物です。ラッツークの〈ビストロ姫ちゃん食堂〉でも、リヒターがこの実を使ってサンダユウを手名付けてましたね。
ところが、サンダユウはなぜか、レミリャの手からミグの実を受け取ろうと鼻をよせると…クンクンと匂いを嗅いだ後、なぜかレミリャに向かって、哀しそうにミイ~、と鳴き声を上げたのでした。
あの食い意地が張ったサンダユウにしては珍しいわね…とミリアも不審に思いました。
そしてレミリャといえば、じっとサンダユウの目を見つめて囁きました。
「そんな…そんなことって…けど、おかしいわ。だってアタシ…」
まるで彼女はサンダユウと、なにごとか会話を交わしているかのようです。
サンダユウもレミリャの顔をじっと眺めながら、再びミィ~~、と声を上げます。
「…そうだったの?…アタシ、ずっと…そんなコトも忘れてたのね…いまになって…ハッキリ思い出したわ」
やがてレミリャは、じっとなにか考え事をしたかと思えば、すっ…と立ち上がり、今度はミリアに向き直りました。
先ほどとは、明らかに表情が変わっています。
「ゴメンね、ミリアちゃん、あたし…アタシは、ね…」
ここでレミリャは一生懸命に言葉を継ごうとしたのですが、どうしても言えないのか、そのまましばし、黙りこくってしまいました。
「どしたの? レミリャちゃん…」
レミリャはそれには答えずミリアの手を取ると、別のキンチャク袋を取り出し、中身を彼女の掌に上げました。ザアッ、とミリアの手には、キラキラと眩く輝く、大量の宝石が転がります。
「こ…これ…!」
ミリアには言葉も継げません。光モノに関しては相当の目利きを自負しているミリアなので、この宝石がとてつもない価値を持つものだと、一目で分かりました。
「ど、どうして…こんなお宝を…」
「あたしたちが、お友だちになった記念よ。受け取ってね、ミリアちゃん」
「そ…そんなの貰えないわ、大切な宝玉を、しかも、こんなにたくさん!」
けれど、レミリャは押し戻したミリアの手を再び強く押し返して、寂しそうに微笑みました。
「いいのよ。だってもうコレ、私には必要ないから…」
そう言い残すと、レミリャはきびすを返して戸口に向かいます。
「え? さっきからどうしたのレミリャちゃん…どこ行くの?」
「お爺ちゃんのところ。だって、そろそろ迎えに行かなくちゃ…」
言い残すとレミリャはそのままふい、と階段の下へと降りて行きました。
「さよなら」
一度だけ、レミリャは振り向き、微笑みを返しました。
あわてて部屋を出た彼女の後を追ったミリアでしたが…薄暗い階段の下に、つい今しがた下りて行ったはずのレミリャの姿はありませんでした、どこにも。
「どういう…ことなの? サンダユウ?」
ミリアは何が何やら理解できぬまま振り返り、戸口で待っていたサンダユウに向かって声をかけました。
とはいえ、サンダユウがミリアに答える筈もありません。チェムナ族とは会話ができないから、せいぜい「ミィ~」と鳴き声を上げるだけです。
……いつもだったら、そうなのですが……。
〈ミリア、あのコはもう、ここにはいないよ…最初から、いなかったんだ〉
「………?」
いきなりどこからか声が聞こえて、驚いたのはミリアのほうでした。声の主は他ならぬ、足元に立っているサンダユウだったからです。
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ミリアは、お師匠様の精霊導師(元)である…いまは廃都ガドリングで
〈魔女〉と呼ばれている…ニキータ・ディーボックスから、ペットのサンダユウを
譲り受けたとき、彼女から告げられたのでした
滅亡したチェムナ族つまり〈チムニー〉たちは、元々は
ノース・クオータ=北大陸に住まう6種族の一翼だったのだ、と
だから人語を解するし、心が通じ合えば会話もできるようになる、と
…
まあ、チェニイとサンダユウの心が通い合っているのかは若干疑問ですが(笑)
ここに来て、ようやくミリアとも心が繋がったようです
なぜ突然そんなことが可能になったかは…まあ、いろいろ事情はありますが
次回に続きます
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