068 火事場ドロボウは厳罰だよ!
…………………………………………………
異界の物語には時折、奇妙なモノが顔を覗かせます
つか話が進むほど、どんどんその手の綻びは大きくなります…
けど、改めて考えれば当然ですね
だって物語世界がフツーの常識だけで進むのなら、そもそも
ファンタジーなんか成立するはずないんだから(居直り)!
…
今回もそんな〈奇妙なナニ〉が少しだけ登場します
お許しくださいね、必ず後でキチンと辻褄合わせして
「なーんだ、そういうコトだったのかぁ、
最初は驚いちゃったハハハ」で締めますから…いずれは!
…………………………………………………
はるか洞窟の下では、チェニイ一行(好奇心バリバリ二人組)が洞窟を滔々と流れ落ちるマグマの海に茫然としています。
時折、噴き上がってくる熱蒸気に咳き込みながら、言葉もなく魅入るだけです。
「…何なんだコレ…?」
やっと絞り出したのがこの台詞。チェニイにすれば、そんな月並みな感想しか吐けません。
「あんたらにも、大方の事情は掴めてるんじゃないか?」
リヒターは素知らぬ体で、二人に声を掛けました。
「ダール・グレン暴走の余波、なんでしょうね、原因はほぼ間違いなく」
ガブニードスはボソリ、と呟きました。
〈ダール・グレンというと…学府院の外れに建ってた塔に収まってたとかいう〈古代機械〉のことか。ゼイゴス大魔王とやらが突然やってきて…それで塔から空中にオーロラみたいな光の奔流が噴き出してきた現象。ニザーミア学府院ではナントカの灯、とか呼ばれてたけど、その地下では暴走したエネルギーが地盤を溶かして、こんな結果になってたワケか〉
チェニイにも、おおよその事情は推測できました。
あの時ゼイゴス大魔王はダール・グレン暴走を〈オマエだよ、オマエ! こんな不始末をしでかしたのは!〉と、チェニイに責任を押し付けてましたが…それも勝手な理屈だとは思うけど…いずれにせよ、ミージェ虫の大発生といい、モンスターの暴走といい、そしてこの地下のマグマ奔流といい…その影響は想像以上にデカかったようです。
「ところで、冒険者サンの意見を拝聴したいのですけどね…結局この〈ハグド〉の町に上がって来た溶岩流で押し流された設備、というのは何だったんですか?」
問われたリヒターは逆に意外そうな表情を浮かべ、尋ね返します。
「ほ~お、ロボ…じゃなくて義体のサイボーグ様は、大昔の情報をキレイさっぱり忘れれちまってるのか、こりゃ意外だったな」
そして、素知らぬ表情で続けました。
「ここは…言ってみりゃザネル北大陸のメンテナンス施設跡地だ…って、さっき話しただろ。オレらは〈地底弾道特急〉と呼んでたけど、いわばアーシャン様専用の高速交通がノース・クオータ地下のあちこちを走り回ってる…いや〈走り回ってた〉って言ったた方が正しいだろうな」
ここでチェニイは以前ラッツークの深い〈竇〉を探検したときのことを思い出しました。およそ坑道の300メルトほど下に、巨大な蓋がハマっていて、その下にも何やら構造物らしきものが埋まっていた…と推測された…ひょっとしてアレもその一端か?
「なるほど…その高速交通のトンネルに、溶岩がなだれ込んできて…この有様ですか」
ガブニードスはようやく納得いった、という表情を見せました。
「じゃあ、住人たちが避難して無人になったのは、それほど大昔でもないようですね」
「どうかな? ここにいたのはゴドム族…ドワーフの末裔たちだったらしい。あいつらは〈墓守〉とか自称してそうたけどな」
「…意味がわからん…」
チェニイは首をかしげるばかりです。
「けど実際には、この施設の管理業務なんて、とっくの昔に終了してたんだよ。オレが聞いてる限りでは、この〈ハグド〉駅を守ってたのは、親父と孫娘のたった二人だったらしいな。ま、それもずいぶん昔の話さ」
リヒターは、見るモンみたら、さっさとおさらばしようぜ。こんなクソ暑い場所にいつまで居座ってるんだ?…と二人を急かし、一人で階段をさっさと昇って行きました。
一方、冒険三人組が洞窟の下へ降りてしまったあと、上のエリアで待っていたミリアは知らぬ間に眠りこけていました。なにせ、いつまで待っても一向に三人は戻ってくる気配がないのですから。
先に携帯食でも食べてようかとも思ったけど、周囲に漂う硫黄の臭気で食欲も失せるし…だったら腹をすかせたまま、じっと寝て待つしかないじゃん!
寝起きがいいのはミリアの取り柄ですけど、さすがにこんな環境ではグッスリ眠るというわけにもいかず…しかも傍らでサンダユウがしきりと唸り声を上げているので、微睡みのまま、うとうと時を過ごしていました。
「あなた、人のお家で何してるの?」
不意に頭上から、人の声が聞こえてきました。ミリアが慌てて目を覚ますと、一人の少女が枕元に立っています。
「ご、ごめんなさい! 誰も住んでいないと思って…」
「誰なの、あなた…?」
囁くような低い声の主は、見知らぬ種族の少女。小柄だけれど、しっかりした体の持ち主で、綺麗にカールされた髪と、羊を思わせる巻耳が特徴的です。
けどミリアには会ったこともない種族…ニザーミア学府院にも大都ジュレーンでも見かけなかった。じっくり観察すると、おそらく彼女は〈ゴドム族〉つまりこの異界でいうドワーフの末裔、ではないかと気づきました。
〈会ったことがないのも当たり前だわ…だって、ゴドム族はほとんど…この世界からは消滅してしまったもの〉
「あ…あの…私たち、ラッツークの竪坑町からデネブラ山を通って、そのまま廃都ガドリングへ向かう途中なの。夜の旅になってしまって、やむを得ずこの洞窟町に避難させてもらったけど、決して盗みに入ったワケじゃないのよ」
「ラッツークから?…この山を登って…ガドリングまで? 随分と奇妙な旅をする人もいるものね。わざわざこんな辺鄙な険しい山を登って西へ向かうなんて」
「奇妙な旅か…考えてみたら、それもそーよね。これにはイロイロ訳ありなんだけど…やっぱ変わってる?」
くすり…と微笑みながら、この少女はスイ、とミリアの傍らに座りました。
「私の名はレミリャ…ドワーフのレミリャ。アナタは?」
「あたしはミリア。あ、何となく名前がカブったわね…ジュレーンのミリアっていうの」
ウフフフフ…
何が可笑しいのか分かりませんが、期せずして二人はクスクス笑い始めました。
ま、箸が転げても笑っちゃう年頃ですからね…って、タトエが古すぎるか?
…………………………………………………
ちなみに、物音に気付いて唸り声をあげてしまい、結果的に
ミリアの浅い眠りを覚醒させたトト・サンダユウ君ですが、
この後、すぐレミリャにはシッポを振り始め、あっという間に懐いて
しまいました
…よーするにコイツはオトコには愛想無しだけど、女のコにはすぐ気を許すのでしょう
ただ、このサンダユウが媒介となって、ミリアの思わぬ〈心の導線〉がこのあと
開通することになります…ちょっと不思議っぽいお話になりますけど…
次回に続きます
…………………………………………………
「ザネル」は毎週月・水・金に更新いたします




