066 一致団結「ボコり大作戦」
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いよいよ本格的アドベンチャーが開幕…なんて言っていいのでしょうか
考えてみれば、敵モンスターと戦闘モードに突入したことが、これまで
本編では一度もなかったのですから
それに図らずも(?)即席パーティを組んでバトルを行うのも初
果たしてこの連中、まともにチームワークを発揮できるのでしょうか?
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てなワケでデネブラ山の戦闘は継続中です!
ジャーム・ルウは〈ハイエナ野郎〉という異名の通りと言うべきか、結構しつこくガランの山塊周辺をバッサ・バッサと飛び回り、一行が隠れていそうな場所を突き止めようとしています。パーティによほど恨みでもあるのか、さもなければ他にガラン山脈に分け入って来た別の連中が何か、とんでもない悪さでも働いたのか…?
とにかく、このままコヤツに居座られたら、自分たちも身動きがとれません。夕刻も迫って西空は濃い葡萄色へと変わり始めているのに…。
なんと!、意を決して先陣を切ったのは英雄サマ…ではなく、不思議ちゃんパワーを爆発させた元斎宮様でした。
いきなり岩陰から躍り出ると大声を張り上げます。
「はいは~い注目ぅ、で呼ばれてないのにイキナリ飛び出てぢゃぢゃぢゃジャーン! さーさートリさん、こっちこっち!こっち向いてぇ~~!」
飛び出してきたミリアは大声を上げ、軽妙なアクションを切って、そのまま大岩の上にひょい、と飛び乗りました。
「ではでは~、水精斎宮ミリアちゃんのサプライズ! 無許可ライブの開始でーっす。ちっちゃなお友達も巨っきなトリさんも一緒に楽しんでねっ!」
〈な、なに長々と切り口上を垂れてんだコイツは?〉
岩陰に潜んでいたチェニイは、巨岩の上で軽快にポーズつけて踊るミリアを、ハラハラしながら…つか、呆れながら見ています。まあ、これがミリア流の斎宮様ウォームアップなのでしょうけど。
「はいハ~イ、みなさんご一緒に、シッソボン祭礼は水祭りィ!」
徐々に興奮して出来上がったミリアは、いきなり両手を妖しく交差させながら印を切り、両掌から光の珠を吐き出しては撒き散らし始めました。
ジャーム・ルウは巨岩の上に飛び出してきた少女に戸惑いつつも翼を広げ、ギャア! と不気味な叫び声を発したかと思うと、威嚇姿勢を取って飛び掛かってきました。
「お、来やがった! ハイ、ハイ、ほれ、ありゃさ、ほらよっと」
ミリアは軽妙なステップで、ジャーム・ルウの嘴を華麗に躱します。
「もひとつ流水の舞でマイまいマ~イ♪」
ミリアはまるで…闘牛士が敵から身を躱すかのような軽妙なステップを繰り返しつつ、両腕を妖しく交差させ、虹色に輝くシャボン玉を掌から変幻自在に湧き出させては、次々と巨鳥に向けて放射しました。
「ケカン・ケッケルン・ケッコボン・シッスザン♪ そーれ、も一つオマケに、はいはいはいハ~イ!」
踊るように身を躱し、湧き出す虹珠を次々とぶつけ続けるミリア。
すると、たかがシャボン珠を当てられただけなのに、なぜかジャーム・ルウは身を捩って羽根をばたつかせ、もがきながら防御姿勢を取り始めました。
「よーし、次はこっちの出番だ!…ガブニードス!!」
物陰からチェニイが号令をかけました。
「なんでワタシが、突撃の二番手なんですか~~!!」
泣き言を上げつつ、ミリアの背後で待機していたガブニードスは、腰に差した歩行補助デバイスを思い切りフカして飛び上がりました。羽根をバタつかせてもがくジャーム・ルウの頭上に達すると、両手に抱えていた黒い球を相手に向けて思い切りぶつけます。
ドン、バン、ドカン!
派手な閃光が、巨鳥の顎付近で炸裂しました。
…実はこのカンシャク玉…威力は大したことないのですが…相手に目くらましを架けて脅かす分には結構効くのです。
「んで最後は全員一斉攻撃だ!」
ここでよーやく真打ち登場!
岩陰から飛び出してきたチェニイとリヒターは持っていたカンシャク玉を、ガレ場に下りて来た巨鳥の足元に向けて一斉に放り投げます。
ドパンパンパン! バンバンバン!
まるで爆竹を一斉に弾き飛ばしたような大音響がガレ場周辺に響き渡り、ジャーム・ルウは堪らず、再び気味の悪い悲鳴を上げて飛び立ちます。
…そして羽根をバタつかせながらそのまま逃走。デネブラ山の彼方へと退散していきました。
「おーし、作戦は大成功だったな!」
巨鳥を追い払い、一息ついたチェニイは仲間に向かって声を掛けます。
「あ、あのさ…なんかチェニイ、最後に登場しただけなのに、オイシイところを全部持ってってない? アブナイ思いをしたのって、ほぼ全部あたし!なんですけどぉ~」
「…まあ…それはそうだけどな…いまの〈シソボンダンス〉って、ミリアが以前にスクルーのバザールで演ったヤツだろ? 頼んでないのに、最初から最後までノリノリだったじゃないか。あんな危険なパフォーマンスを演れ! なんて俺はひとッ言も言ってないぞ…」
「それにチェニイ様、その次に巨鳥目掛けて突っ込んだのは私なんですけど。危険というなら、私の特攻攻撃が一番だったと思うんですが…」
「イヤイヤイヤ! それを言うなら、万一の冒険の備えにモンスター脅しのカンシャク玉を常に用意してたオレの功績が最大だと思うぞ」
〈ちょっと待て! ジャーム・ルウは山脈を住処にしてるから、水にはムチャ弱い習性がある…とか、アイツは脅かしのために襲ってきただけだから、こっちも大音を立てれば、すぐ逃げだすぞ…って教えてやったのは、そもそもオレ様じゃないか!〉
最後のはトト・サンダユウの抗議でしたが、チェニイ以外にはトトが足元でキーキーキーと鳴き声を張り上げている、としか聞き取れませんでした。
ともあれ…これで危険はいったん回避できたもののこれ以上、ガラン山脈の中腹で過ごすのは危険だ、ということでは全員が意見の一致を見ました。
この山脈に時計塔小屋はないので時刻は体感で知るしかないのですが、かなり長時間…おそらく月齢で考えたら22日刻限の終わり近くに達しているはずです。
「まあ、夕刻の旋風もそろそろ収まってきたから〈ミスティル〉旋風で瓦礫が巻き上がるのも、風を上手く読めばなんとか避けられるかな? 慎重に進めば…」
さすがにジャーム・ルウの襲撃を躱した後では、リヒターも強硬意見を少しは見直さざるを得なくなりました。それにしても…いくら高緯度地域とはいえ、徐々に濃くなってきた夜闇の暗さはハンパではありません。このまま野宿で夜間を数日も過ごすのは、いくら何でもムチャです。
「冒険者のガイドさま、臨時の退避場所に当てはあるんでしょう?」
ガブニードスは、さりげなくリヒターに話を向けました。
「…さあな…アンタの方が分かってんじゃないのか。ロボなんだから、情報デバイスからのネタ検索も可能なんだろ?」
〈ロボ〉呼ばわりされたガブニードスは、キッ! と顔色を変えて抗議します。
「私は〈ロボ〉ではありません! 業務の関係上、一部は義体化していますけれどね。あくまでもサイボーグですから…ベースは人間そのものです!」
「はッ!、そいつぁ失敬しましたな…それで?」
「ガラン山脈の詳細な地形マップは、諸般の事情で今現在アクセス不能なんですが…デネブラ山麓には確かに、サブポータルが確認できました…〈ハグドの町〉という中継地点が存在しているはずです。詳細な地理は、冒険者サマが実地に踏破されている筈ですが…?」
ガブニードスが口にした途端、リヒターは遮って怒ったような口調で告げました。
「〈ハグドの町〉なんて、この先に存在するもんか!?」
「…どういう…ことですか?」
「以前ならそんな場所があったろうけど、たぶん今…そこを訪ねても、ドロドロ溶岩の下に埋まってるだろうさ。行ってもムダ足だろうよ」
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ピンチは仲間を結束させる…とか前回お話ししましたが
さてさて、結果的にジャーム・ルウ撃退には成功したものの、
はたして結束は固まったのでしょうか?
…なんか、結局メンバー各自の自己主張だけ強くなったような
気もするのですが…
それはともかく、この山脈の中で野宿(しかも夜明けまでは、まだ
数日あるのです!)するのはムチャ無謀!
しかし、ガブニードスの情報収集では、現存しているはずの
デネブラ山中腹から近距離の町を、リヒターは「ドロドロ溶岩の中で
埋まってる!」などと言い張るのです
…さて、それは如何なる事情なのでしょうか?
次回に続きます
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