045 感動の再会、どころじゃない!
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ついに、この世界に出現したという厄災〈カイン・マート〉
どういう化け物なのか、何とも正体は分かりませんが、
今のところ判明してるのは
1.ニザーミア学府院の奥に建つ塔〈ガブニードス・タワー〉…正確には
その中に鎮座する古代機械〈ダール・グレン〉の暴走によって
飛び出した怪物(?)らしい
2.予兆として〈ヤーマの灯火〉がさかんに光彩を塔から吹き出していた
3.この灯火ってのは…要するにザネル世界の根源の精霊粒子が、
大気と接触して光を放つ現象(見た目は結構バえるのでステキ)
4.カイン・マート自体は不定形のバケモノ。なので人を襲って食ってしまう…
などといった恐怖をもたらすわけではない(今のところ)
5.遠目には不気味な形状の黒雲が空を覆う…大気現象にしか見えない
一定時間で、消滅してしまう
6.なぜか、チェムナ族の末裔トト・サンダユウの目には、巨大な龍の化身に
見えるらしい
「オマエらには見えないのか?」とサンダユウはしきりに力説してた
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おそらくこの〈カイン・マート〉出現が、本来なら無害(食材にもなる)羽虫のミージェを狂暴化させ飛蝗に変身、人を襲う騒動を引き起こさせたのでしょう。
そして、その原因の元を辿ると、チェニイ〈ファルス〉様の使徒召喚や、ゼイゴス〈大王?〉のノース・クオート侵攻騒動にまで結びつくのですが…。
ただこの件については、チェニイが出現直後にあっけなく倒した(…と思う)ゼイゴスは、チェニイに「責任の半分を」勝手に押し付けて逝ったし、それを言うならガブニードス(ニザーミア学府院では、彼の役名は技官ガストニーフ)だって、結局は古代機械ダール・グレンの制御に失敗して暴走させたのだから…この場合責任は「みんなで押し付け合いましょう!」という…なんか、どこかの政府がよくやるウヤムヤ共同責任で終わってしまいそうですね。
さて、そんな状況の中、ミージェ虫襲撃の危機に襲われているラッツークでは……
「そんな悠長なこと、話し合ってる場合じゃないんです!」
危険を冒してまで、ここへたどり着いた水精師ラクーナが大声で叫びました。
「いまニザーミア学府院には精霊導師が…オービス首席お一人しか残っていないんです!」「…どういう始末なんですか、それは…?」
状況を知らされて、さすがのガストニーフ技師…いやガブニードスは絶句しました。
(申し訳ありませんが混乱を招きそうなのでこの先、彼の名は〈ガブニードス〉で統一することにします)
「そもそも…あなたがなぜ、ラッツークへ単身、辿り着いたのか? 虫たちの襲撃をかい潜って…いやそれ以前にあなたのお師匠様のシェノーラ水精教導は、どうされたのですか?」 あの姐様こそ、こういう非常事態に役立つ人材ではないのかな? ガブニードスは彼女のキツい眼差しを脳裏に浮かべつつ、そう呟きました。
「あ、姐様は…いえシェノーラ様は…その…」
ラクーナは、ここで口ごもります。言っていいのかしら、本当のことを…けど、ええい! ここでゴチャゴチャ考えてる場合じゃないわ!
「シェノーラ教導は、実は数日前…ちょうどこのラッツークにスクルー族が飛来してテント村が設営された頃に、お忍びでここへいらしてたんです。そして、そのまま、戻って来られませんでした。今も…」
「おかしいな…シェノーラ教導を私は、お見掛けした覚えはないが…スクルー族の大騒ぎのあたりに、私はちょうどニザーミア学府院からこちらへ舞い戻っていたのだが」
〈それはシェノーラ様が、件の〈邪術〉を用いて老婆に変身していたせいだ〉ラクーナは忌まわしい記憶と共に、そのことを打ち明けようかと喉まで出しかけて、さすがに言葉を呑み込みました。
「それは…なぜか分かりませんけど…。それからその…私は、ニザーミアからここまで、虫たちに襲われることなく、なぜか無事にたどり着けたので…幸運にも」
「では、ほかの精霊導師の皆様は? コーンボルブ風精導師と、トープラン火精導師がいらっしゃるでしょう?」
「コーンボルブ様は…内密の御用とかで、急遽ジュレーン大都まで赴かれて、いまだにお戻りになりません…それにトープラン火精導師は、ダールグレン暴走の最中に、倒れてしまわれて、いまだ意識不明の重体なのです」
「な、なんということ…」
さすがに、ガブニードスも絶句するしかありませんでした。
〈コーンボルブが大都ジュレーンに内密の要件で出かけた…というのは、間違いなくUNトラストの外交官との会合だろうし、となると交渉内容は【使徒騒動の後始末】に違いない。大方、あいつらに何かしら丸め込まれたのか連中にとっての好条件を押し付けられたのだろう。けど、どっちにせよ…なぜ未だにニザーミアへ舞い戻って来ないんだ? アイツは風精師の親玉だぞ。降って湧いた災難の報なんぞ、とっくの昔に耳に入ってるはずだろう〉
ガブニードスは、よもやUNトラストの曲者ロム・ラザブが裏技…つまり〈ニセ使徒様に変身!〉技を使い、一種の目くらましで篭絡するなどという強硬策を取るとまでは考えていなかったのです。
さらにいうと、同じような技でラッツークの竪坑に潜入した水精教導シェノーラが、その後ニザーミアに戻らず、どこへ行方をくらましたのか、に至っては、とんと見当すらつきませんでした。
実は、ガブニードスは一つの事実を見過ごしていたのです。
シェノーラは、彼女の師匠である〈姐様〉…今は辺境に引き込んでしまった本来のニザーミア学府院第二席導師にして水精局首席ニキータの愛弟子でもあったことを。
いまは〈背教精霊師〉の汚名を着せられ、ニザーミアを追われたニキータですが、シェノーラは師匠たるニキータ精霊導師の実の息子・チェズニの顔をはっきりと覚えていたのです。そんなシェノーラが、ここラッツークの竪坑でばったり、ニキータの息子チェズニと瓜二つの少年が〈スコップ英雄様〉などと呼ばれ、時ならぬゴールドラッシュの立役者となっていたことを知ったら、はたして何を思うだろうか…さすがのガブニードスにも、そこまで想像を巡らせることができなかったとしても、無理ありません。
そして、ここにもう一人、思わぬ出会いに驚きを隠せなかった人物がいました。
なぜか、ニザーミアの現状を聞かされ、ふいに押し黙ってしまったガブニードスをよそに、先ほどまで慌てふためいていたラクーナは、この冶金工廠に飛び込んできた連中…親方ヨールテとガブニードス(技師ガストニーフ)、それに加えて二人…少年と少女を眺めつつ、奇妙なことに気づいたのです。
少年のチュニック…鉱夫仕事でかなり汚れてるけれど、よく見るとこれはニザーミア精霊師の衣装じゃないかしら、と。
ラクーナには、彼の顔に見覚えがありませんでした。
ひょっとして、この子が噂に聞く〈ラッツークのスコップ英雄クン〉ではないかしら? いえ、ひょっとしたら…まさかとは思うけど…この少年こそが、ニザーミアからお忍びで出立された〈使徒様〉だったりして…いやまさか、そんなはずは…。
さすがの突飛すぎる妄想を打ち消しつつ、もう一人の人物に目をやると…この少女にも、どこか見覚えがあることに気づいたのです。
何年か前、そう…ラクーナが精霊師見習いとして水精局に入局したのと同じ頃、花の大都ジュレーンから、次期斎宮として留学して水精宮にやってきたお姫様。何度か遠目に眺めただけだけれど、あの美しい少女と面影がそっくりなのです。
まあ、衣装はあのときの煌びやかな水垢離装束ではなく、坑道労働者のものだけど…しかも相当ズタボロになってるし…けれど、ラクーナには同一人物だ、という確信がありました。これは一体、どういうことなんだろう?
ここは躊躇するところではない。ラクーナは意を決してミリアの前に歩み寄りました。
「あなたは…斎宮ミリア様ですね…」
「え…た確かにミリアは、あたしだけど…あなたは、どちら様?」
「やはり斎宮様…でも…どうして、貴女様がこんなところに…いらっしゃるのですか!?」
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事態が急を告げる、という展開パート2に突入です。
思わぬ遭遇に、水精師ラクーナも、いまの危機的状況を
一瞬、忘れてしまったほどですが、そんな不思議な再会だの
英雄との出会い(これはチェニイとの遭遇)で、驚いたり
感激したりしている余裕はありません。
ともかく、ニザーミア学府院は、今まさに(肝心のヘッドが大量離脱で)
大変なことになっているのですから!
…
けど、ソレはそれとして、この大量発生したミージェ虫の、
正真正銘の〈雲霞の群れ〉から、どうやって脱け出して
学府院まで辿り着けばいいのでしょう?
なぜか奇跡的に、ラクーナ水精師は往路到着に成功したようですが?
次回に続きます
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