039 …これで大団円かぁ!?
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まさかマサカの大和解? 使徒様の誤解も解け、
晴れてチェニイとゼイゴス、積年の因縁もここに目出度く
大団円を迎えることと相成りました
…
と、胸をなでおろせる…ワケないか~!
ちなみに「積年の因縁」つったって、二人は初対面だし…
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チェニイはさっきから、どっかでキーキーやかましいなあ何だよ!? と思ってたら足元でサンダユウが纏わりつき、叫んでいたのでした。
「あ、しまったコイツのこと忘れてた」
船頭役のヨールテ親方は島到着直前に鼻血吹いて岬の真下、艀の船上でダウンしてるし、ガブニードスは勝手に幽体離脱して浮き上がってくるし(そんな雰囲気)、最後は妙にキャラが濃すぎる、敵の親分が妙な勧誘を仕掛けてくるし…正直、コイツに気を配ってる余裕がチェニイにはなかったのです。
けどあんましシカトこいてると、鋭い牙で噛みつき攻撃を仕掛けてくる可能性があるからな(前科一犯)…とチェニイは身構えました。
「ほう、珍客がまた一人、残ってたのか」
ゼイゴス親分…本人の説明だと、こいつは「大魔王」という雰囲気ぢやないみたいだけど、南では〈シーイーおー〉とかいう偉いさんだそうだし、いちいち妙な名前で呼ぶのも面倒だからもう〈親分〉でいいや…と、チェニイは戸惑いましたが彼の方はこの小動物に、なぜか興味シンシンです。
「チェムナ族なんて、北ではとっくの昔に絶滅してたと思ってたよ」
ちっちっち…とゼイゴスが指で撫でつけようと試みるものの、トト・サンダユウの方はシャアー! と鋭く威嚇します。
〈テメエと馴れ合う気はねえぞ! 勝手に部族を滅亡させといて、今さら何のマネだ!〉
チェニイにはサンダユウの声が、そう聞こえました。
「おお怖わ…」
気を取り直すと、ゼイゴスは改めてチェニイに向き直ります。
「まあ、俄かにオレを信じられないかもしれないが…ここは改めて場所を変え話し合わないか、なあ〈シト〉君。君にとっても、有益だと思うんだよな。こんな異界の辺境に残された鉱山で、石掘って小金稼ぐためにわざわざ、召喚されてここに到着したワケじゃないだろ?」
〈それどころか、ナニしに来たのかさえ自分には分かんないんだよ。なにせオレは現在「ボクちゃん記憶がバキューン」なんだからな〉チェニイは内心で呟きます。
「どうだい、いっそ北辰の地を離れて、サウス・クオータに来ないか? こんな中世並みのレプリカ異界じゃ、君の解放されたキューブも宝の腐れだぜ」
悪の大魔王転じ、リクルーターがヘッドハントにやって来た…って図式か? あんまし立て続けの〈価値観の転換〉に遭遇してチェニイも情報が錯綜し、ワケわか分からなくなりかけてます。
「なあにコクーン・ドライブで飛べばほんの一瞬だ。南陵はキミを大歓迎するぜ、悪い話じゃないだろ、〈シト〉君」
…きみをオレの弟分にしてやってもいい…」
……
〈ミリア、オマエをオレの妹にしてやろう〉
ここでいきなり、チェニイの脳裏に別の波動が飛び込んできました。
…
これは、ミリアの声か!?
〈そうだ俺、この島まで何をしに来たのかってえと…攫われたミリアを助けに来たんじゃないか、肝心なことを忘れてた…!〉チェニイのスイッチが再点灯します。
キィ~~~!
同時に、足元で再びサンダユウが金切り声を上げました。
〈今頃思い出したのか!? 呆れた馬鹿野郎だぜ…マジで、てめえ脳味噌バキューンか?〉
チェムナ族語…の金切り声を翻訳するとこうなります。
「…ってオイオイ、今度は話がそっち方面に飛ぶのかよ?」
少々困惑した表情を浮かべて、このゼイゴスCEOは呟きました。
「しゃあねえ、ま、ともかくソッチに心が動いたなら、こんな廃墟の島の外はずれ、ガレ場で突っ立って押し問答してももラチが開かないだろ。場所を変えようぜ、君のお目当てのお姫様の待ってる舞台へ、な」
…!!!
チェニイの目に突如異変が生じたのか、周囲から色が一切消えてしまいました。
今しがたまで夜明けだった風景はモノトーンとなり、続いて漆黒の闇に変わると、再び目の前には廃墟の光景が開けています。
「こっちの方が何かと話が進みやすいだろ」
ゼイゴスは両手を広げ、満面の笑みを湛えています。俗にいう〈ドヤ顔〉ですね。
「心配するな、遠くにブッ飛んだワケじゃない。島の中心部に移動しただけだ…ワープポータルでな」
すると、目の前に見える廃墟…これがヨールテ親方の言ってた〈給水塔〉ってヤツか。けどコレ、どう見ても給水施設じゃないな。むしろ…そう、ラッツーク坑道の竇の底にあった廃墟と同じような設計だ、チェニイは寸時に理解しました。
それに…目が慣れると、その背後には遠方に、別の塔のシルエットが見えてきます。
〈これ、ニザーミア学府院の奥に建ってた奇怪な塔じゃないか。たしか…ガブニードス・タワーとか言ったっけ。それにしても、まあ以前とは随分と様変わりしたもんだな~〉
「どーだい〈シト〉君。すっげえ眺めだろ? さながら噴火直後のヴェスビオス火山かサクラジマの景観、ってところか」
〈ンなこと得々と解説されても、オレには見たことも聞いたこともない場所だしなぁ…〉
「…で、こんな場所を見せつけといて、オレに何の話をしようってんだ?」
「おいおい、無責任なこと言うなよ。少なくともダール・グレンをココまで暴走させた責任の一端はキミにもあるんだぞ」
「はあ…??」ところで、その〈ダール・グレン〉って…何のことだ?
合点がいかないチェニイは、ただ黙るしかありません。
「はい、それダウトー!」
いきなり背後から声が掛かりました。振り向くとガブニードスもこの場に来ています。
「アヤフヤな証拠をこの場に持ち出して脅すのは、やはり協約に違反しますねぇ」
チッ! とゼイゴスは舌打ちしました。
「第三者の証言を必要とするのでキサマも一緒に運んで来たんだが、こりゃとんだヤブ蛇だったな」
さらにガブニードスの背後から、聞きなれた唸り声が…。
もちろんこれはサンダユウです。これでオールスター勢揃い、の図ですね。
「なんだよ!? ドサクサに紛れてケダモノまでついてきやがったのか? …まあいい…」
ゼイゴスはここで(ディアボラ風の羽根を拡げて、大袈裟なポーズを切りながら)全員を嘗め渡します。
「目的をサッサと片付けることしようぜ…こうなると、もはや長居は無用だからな」
どこに隠されていたのか、ゼイゴスの背後で光り輝く繭玉が実体化し始めました。
…そしてその中心部には、目を閉じた〈ミリア姫〉が…
「ま、わざわざこんな辺境にまで足を延ばしたオレの目的は、このミリアの回収。それだけのことだ。オマエらのドタバタ茶番騒ぎなんざ、知ったこっちゃねえ」
もう、話し合いなんぞする気もない、取るもの取ったらあとはトンヅラだ。
まさにそんな捨て台詞を残しそうな表情で、ゼイゴスは背後に向き直ると、そのままこの〈光の繭〉に乗り込もうとしています。
〈おいおい、ここ来て敵前逃亡するのかぁマジで!〉
チェニイにすれば、こう喚きたくもなりますね。
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前回、チェニイ〈使徒サマ〉のことを、
「オレの弟分にしてやってもいい」とか、気色悪い甘言を
弄してたくせに、何か都合が悪くなると、途端にミリアさらって
逃走を図ろうとするとは…なんて卑怯な野郎なんだ。
ここで、勇者サマは敢然と立ちあがります(予想外にも?)
次回に続きます
…けど実のところ、かなり恐ろしい(コスプレ?)装束の割に、
このゼイゴス、本当に強いのでしょうか?
それとも何かの事情があって、あえてこの場は戦うのを避けてる…とか?
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