031 ノリやすい姫
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ドラマの定石では、往々にして外せない定番キャラが存在します
別にその役をヒロインが演じるとは限らないけど(チョイ役で登場する場合多し)
たとえば密室ミステリだと目立たず単身で、なぜか必然性なく部屋に籠る人物は
最初に殺害される、ホラーだとなぜか深夜に女性が一人、ホテルのプールで
わざとらしく(必然性ゼロ!で)、際どい水着着て泳いでたりすると、ほぼ確実に
最初の被害者として、翌朝には水面に浮いている、とか…
…
それに比べ、ゲームの場合は「演出の都合」というより段取り上、必然的に役割を
振ってくれないと、話が進まない…つか始まらない人物が設定されてます…
典型的なのは、アクションゲームにおける「モンスターとか敵ボスに」ナニされる
ヒロインですか。なにせ、ほぼゲーム伝説の始祖にして現在も現役大活躍中の
「アレ」のヒロインを思い浮かべて頂ければ、説得力はバツグンで…
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さて一方その頃、ラッツークの竪坑では…。
「どうなってんだよ!? 誰も降りて来やしねえ! 今日も竪坑は開店休業かぁ?」
チェニイはロープを繰り、坑壁を降りながら、閑散とした竇の状況に不平たらたらです。いわゆる「過ぎたるは及ばざるがごとし」を地で行くような景色でしょうか。
あんまし派手にチェニイ様が一気に活躍しすぎたものだから、あぶく銭を手にした鉱夫たち、住人たちは労働意欲を失って…みんな日がな一日、怠慢こくようになってしまったみたいです。
「それにしても…困ったなぁ…これじゃ、せっかくいい露頭を見つけて掘っても、モッコで上へ運び上げることさえできゃしねえぞ」
なぜかというと、バスケットをロープで吊るし、採石場に持ち上げる作業員がお休みとってシカトこいてるから、ガラを運び出すことができないのです、単純に!
せっかく掘り出した純度の高いミスリル鉱も、文字通りの「宝の持ち腐れ」というか、掘り腐れですね。
「いっそ今日はこのまま、竇の底まで探検してみっか? どうせ掘っても仕事になんないし」
チェニイ様は呟きました。
〈縦坑の底まではおよそ3百メルトほど。以前、エディカの頼みでドーソ神様を探しにアナの深部まで探検したときにはこの半分程度まで降りたけど、なにせあの日は崖を伝って大量の雨が滝のように降り注いでいたし、あたりも真っ暗だった。それに足場も濡れてて、そっちに気を取られていたから、じっくり周囲を観察するどころじゃなかった。
いまは…上から明け方の光線が斜めに降り注いで、周辺の壁に乱反射しているから、この縦坑の隅々までじっくり観察できる。穴掘りする必要もないし、な〉
チェニイの観察では、この竪坑がやはり「何らかの建造物」の遺構だったのではないか…という感想を強くしました。しかも…当初はここに何かが崩れ墜ちて巨穴が空き、周囲の壁をかなりの高熱で溶かしてしまったのだろう、と想像していたのですが、どうやらこの「アナ」自体に関しては、最初から意図してこのような構造に作られていたらしい。
そこに複数の横穴が複雑に連結されていて…なんの作用かは分からないけど、そこを通っていた構造物が強烈な灼熱・高エネルギーで一部が〈ミスリル〉に化け、結果としてマインキャニオン…都市鉱山の露頭が形成されたのだ…と。
チェニイの頭脳は、そのような仮説をこしらえたあと「なんでオレ、そんなこと勝手に推理できるんだ?」と不思議に思い、奇妙な感慨に囚われました。
〈…まあいいか。そんな疑問を持ち出したらキリがない…〉
チェニイは〈召喚〉された直後、ガブニードスと衝突して強制的に逃走〈させられた〉ときに感じていた、あの奇妙な違和感を再び思い出していました。
〈そもそも、なんで自分はこんなところにいるのだ、ここは自分の世界か、いや違う、だけど、自分はこうしてここに立っている、いつ、そんなことになったんだ? けど自分は確かにここで、こうして立っている…息もしている〉以下、堂々巡りのリフレイン…
「それはともかく、このアナの奥底って、どうなってるんだ?」
考えだしたらキリがない妄想を打ち切って、チェニイは縦穴をさらに降下します。
降下を開始してからおよそ4百メールト。壁面の様子が、パイプを複雑に組み合わせたような構造物に変化し、さらに降りると…唐突に足元にはマンホールの蓋のようなオブジェが立ちふさがり、そしてその下は行き止まり…でした。
〈ザンネン、ここが終点か〉
なんか期待していた結果と違う、スカされて失望するチェニイ。
ただ、その蓋の上に立ち、じっと耳を凝らしてみると…例の〈使徒様の直感〉というやつでしょうか…微妙な振動と共に、キラキラ輝く微粒子が周辺に飛び散り、
〈この下にも何やら、デカい構造物と通路が続いてるぞ〉
という推測を暗示しています。
さらに床面を調べると、チロチロと流れる水が、わずかながらパイプジャングルを通して下まで伝い、吸い込まれて消えています。
〈当たり前か。この前の雨でも、滝のような水が縦坑の底に呑まれて行ったのだから。そもそも底面が塞がれてるのなら、水は坑道から逆流して坑道ごと埋まってしまうもんな〉
とはいえ、どこにも下に降りるルートは見つからないから「スコップ英雄様の縦穴大冒険」は、ここでオシマイ。引き返すしかなさそうです、お疲れ様!
ところでその頃、竪坑の入り口付近では…。
結局、誰も坑道の作業を再開させないまま、本日の業務は終了。
実は炊事場&食堂(通称ビストロ姫ちゃん)では「本日の昼食メニュー」を準備して待っていた炊事当番ミリア姫(つっても献立はいつものアレ)は結局、仕込んでいた料理をムダにしてしまったようです。
「本っ当に! いつからみんな、こんなナマケモノになっちゃったのよ!? そもそも『働かざる者、食うべからず』とか偉そうに言ってた親方は、どこに雲隠れしたの?」
「ダンナだったら…たぶんチンチロ博打を打っとると思う。最近エラく金遣いも荒うなっとるき、先だっての負け分を取り戻しちゃる…とか言うちょったけん、なあ」
同僚のオバちゃんが笑いながら応えました。
「…っ…ザきゃあやがって!」
ミリアはそれを聞き、憤懣やる形無し! とばかり、足元に置かれた寸胴を力いっぱい、蹴り飛ばしました。
「あいてててて!」
いつものミージェ虫の煮込みシチュウが一杯に入った(食べる人いないから)鍋を思い切り蹴り飛ばしたので、ミリアは悲鳴を上げました。それでも彼女の怒りは収まらず、勤労意欲をダウンさせたラッツーク住民たちに〈喝を入れちゃる!〉と息巻いています。
「ま~ま~姫ちゃん、そう怒らんと…。みんな持ち慣れんゼニを手にして舞い上がっとんよ、少しは堪忍したって」
「そーいうナリキン根性が、ラッツークをダメにするのよぉ」
あはははは、とオバちゃんはミリア姫の怒りにも、笑顔で返します。
「ほいでもミリアちゃん、あんたぁ姫様上がりなんとちゃう? なんやその割には、ずいぶんと所帯じみとらんか?」
「…いやー、これ、性分なのよぉ…」
テヘヘヘ…ペロ…とミリアも笑顔で返しました。
ふと気づくと、先ほどからサンダユウが足元でミーミー鳴きながら、ミリア(と寸胴)の周りで催促しています。
「あーもう…うるさいわねサンダユウ。まあいいわ、本日は大サービス! 寸胴に余ってるシチュー、今日は好きなだけ食べていいわよ。そんで…オバちゃん、あたしちょっと、出かけてくる」
「どこ行くん? もう夕方なんに」
「西沼! そろそろミージェ虫の浸け置きが足りなくなりそうだから、一っ走り獲ってくるわ。どうせここで待ってても誰も来やしないから」
「あれあれ、上等のグボ肉がぎょーさん取ってあんのに。なンも今更、虫なんぞ料理せんで良かち…」
呆れたようにオバちゃんが声をかけます。
「ダメダメ、そんなゼイタク食生活送ってたらダラクしちゃう…ゼイタクは敵よぉ!」
笑って、ミリアは戸口から飛び出していきました。
…そして彼女は、再びここへは戻ってきませんでした…
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ここ最近、いろいろな登場人物たちがいなくなったり、何やら隠密みたいな
妙な使命で消えたりしますが、今度はミリア姫の番でした
まあ、去る人があれば、やってくる人もいます
中には、決して歓迎できないような人もいますが…
次回に続きます
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