030 ウソから出た大嘘
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前回のUNトラストvsニザーミア学府院、黒幕対談が秘かに某所で行われて、
冒頭から、タヌキとキツネの化かし合いみたいな対決構図になってしまうと
〈そもそも、ファルス様は何のために召喚されたの?〉
という根本的疑問は出ます
ラッツークに逃走してしまった主人公になり替わって
ピンチヒッターの〈使徒〉(俗にいう贋ウル※ラマン? )が華麗に登場、
不思議な術で、北の住民たちの間にばらまかれたゼイゴス騒動や南の帝国の
侵攻とかいう妙な風評をウヤムヤにした挙句に、
「イイワケなんかはみっともないです、それではミナサンさようなら~♪ 円盤円盤♪」
(JASRAC登録しません!)
と、都合よく退場してくれれば、お話は一件落着なんですが、それこそ
「おあいにく様、そうは行かねえってコトさ、オレ様こそ彼女のデスティニー♪」
(だからJASRAC登録はし(ry
悪役ク※ッパみたいに面倒な真打ちまで、まだ控えてますから
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繰り返しますが「南の大陸を制覇した悪の帝王ゼイゴスが、今度は北のノース・クオータにまで魔手を伸ばしてきた」という(この図式を描いたのは、ニザーミア四席火精導師のトープランです)ザッパ極まりない構図でアナだらけだったのです。
ザネル世界に存在する大陸は南北に分かれ、北を北辰ノース・クオータ、南を南陵サウス・クオータと呼ぶ…このへんは何回もお話ししました。そして両者は細長い「紐帯半島」で結ばれ、その中間地点に「神々の御座」と呼ばれる半径10キロメルト程度のカルデラがそびえています。このへんの地理的なイメージは、別の世界で例えると(多少スケールダウンするけど)南北アメリカ大陸と中米をイメージすると分かりやすいでしょう。 ノース・クオータは(平原やら大河やら地形は複雑だけど)、中央平原の東端、イェーガー半島先端に在るニザーミア学府院を起点にして、様々な種族(つっても5種族)の居住する「赤十字回廊同盟」諸都市がその名の通り、十文字の網目のようなネットワークで結ばれています。
ちなみに現在まで舞台となった竪坑町ラッツークはイェーガー半島、ニザーミアの南約4キロメルト、そして前回の密談現場「花の都」ジュレーン市はおおよそ西南30キロメルトの位置にあります。
イメージからすると、北はニザーミアを盟主とした都市国家共同体…別の世界で例えると、規模の大きなギリシャ世界に類似していますね。
これに対して「火と炎の世界」サウス・クオータ南陵大陸は「帝王」ゼイゴスの支配する絶対主義軍事国家、という姿で語られています。
ただ…ここで問題なのはまず、あくまでこのサウス・クオータ(ゼイゴス帝国と仮に呼ぶとして)の姿は、あくまで「北の住人たちが思い描いているイメージ」に過ぎないということです。つまり、北5種族の諸都市住民たちは実際に(少なくとも、ここ百年間は)南の帝国に足を向けたことはなく、また「悪の帝国に君臨するゼイゴス魔王」のお姿をを見たものもいない! という事実なのです。要するに今回の「ゼイゴスのノース・クオータ侵攻」風評だって、紐帯半島・神々の御座の住民を経由して流れてきたウワサに尾ひれがついた、アヤフヤな情報を「ニザーミアの精霊導師」たちが都合よく解釈し、騒動のタネとして利用したに過ぎません。
さらにここでザネル世界の歴史を引っ張りだすと(話が複雑になるから、最低限にしますけれど)この百年にわたる南北断絶は、それ以前に経験した千年紀(ノーレム紀)があるとき大崩壊した名残りでもあるのです。この折の地殻変動(と、大陸間戦争?)によって、南北世界の交流は一気に途絶しました。例外的に紐帯半島(に浮かぶ「神々の御座」)だけが、一種「巨大な長崎出島」な立ち位置で、細々と南北交流拠点の役割を果たしているのです。
……
ところでニザーミア学府院では、どうもここ最近なぜか、重要人物が姿を消す事態がたびたび起こっています。
発端はというと、最近の閏八月の祝祭…ザネルのノース・クオータに点在する赤十字回廊同盟市で同時に挙行される〈過ぎ越しの祝祭〉でした。北の五種族が各々、彼らの祀る地水火風の精霊を祀るべく、それぞれの属性を纏った精霊師たちを(文字通り)召喚し、祝祭を執り行させる慣わしなのです。
なのでこの時期ニザーミアで〈精霊師〉を名乗る資格がある者たちが「巡察精霊師」として、北辰大陸全土に散ることになります。まあ、これまたある種、全土の諸都市から集められる見習いたちが(大抵、彼らは種族によって祀る精霊の種別も決まりますから)、精霊術を習得したのち、各々の故郷に「錦を飾って」巡察精霊師として舞い戻り、過ぎ越しの祝祭を執り行う…ある種の「里帰り」的な趣もあるのです。
当然ながら月齢が変れば再び、ニザーミアに集結して故郷の話に花が咲き、ノース全土の近況報告などなど、情報収集も行うことになります(この種の交流で、もっとも活躍するのは主に〈風精師〉たちです)。
ところが今年は例年になく、異様な情報が飛び交いました。もちろんその元凶は、なぜかこの大事な時期に他ならぬニザーミアの学府院そのもので、しかも密かに挙行されてしまった(らしい?)〈使徒様〉の召喚騒ぎでした。一部の同盟市では、何やら南の魔王ゼイゴスとやらが目覚め、北へ向かって進撃した…紐帯半島を越えた、いや未開の地ガルミ・ポンドで足止めされてる…いやとんでもない、直接この東の果てイェガー・シェラ半島に上陸する! などなど。
まるで台風の上陸予想のごとく、怪情報が飛び交っています。
それにもまして問題になったのは、肝心の召喚された〈使徒様〉とやらは、どこに行ってしまったのか、という話ですね。
「召喚祝賀会に、オマエたちは出席してたんだろ?」
「いや~、出たというか、途中で打ち切られたというか…」
「んじゃ誰か、使徒様のご尊顔を拝んだヤツはいないのか?」
「…ゴメンナサイ、そのときワタシ、なんか寝てたみたいで…」
「揃いも揃って全っ然! 役に立たねえね、オマエラ!!」
「だってアタシたち、所詮は見習いさん…だしぃ…」
ニザーミアに戻ってきた巡察精霊師の先輩から問い詰められても、学府院に残っていた見習いたちの答えは揃ってアヤフヤなうえ、言ってることも要領を得ません。
ただ、火精導師トープラン様がその後訓示したという情報を整理すると(こっちの話も何だか分からないけど)要するに使徒様は「お忍びで」秘かにノース・クオータを西に向けて出立された。ゼイゴス大魔王との対決を控え、無用な情報漏洩を避けるために、精霊師たちはこれ以上の詮索を行うな! とキツい緘口令が敷かれた格好になっているようです。
…ああ~~、なんだかなぁ~…
派手な打ち上げ花火が途中で失速して「ぷっすん……」と消えてしまったような気分。
というのが、学府院を覆っている状況なんです。
そんな尻切れトンボの騒動もさりながら、ここにきて今度はお偉いさんたちまで、ぽつぽつと行方をくらまし始めました。まず大都ジュレーンから過ぎ越しの大祭で戻ってきた、水精教導のシェノーラ師が何も言わずにふい、と消えてしまい、そのまま行方知れずとなりました。この件では水精局にも何ら通達がなく、侍女格の精霊師に尋ねても、何とも要領を得ません。
そしてもう一人は、風精局のトップであるコーンボルブ風精導師です。こちらの方は一応、公式には「お忍びでの公用」とのことですが、やはりその動静は不明のまま…。
内情を明かしてしまうと、四精霊局でも何かと突出して反抗的(反主流派)な水精局は、なにせトップの水精導師からして…ムニャムニャ事情で空席となってるくらい「諸事情を抱えた」部局だから、本来は導師の補佐を担うべき教導までプイ、といなくなる程度は日常茶飯事でスルーされますが、ニザーミア全般の情報管理を取りまとめるべき風精局のトップまでが行方知れず、では格好がつきません。
ただ、そんなドタバタに際しても、首席たる地精導師のオービスから特段の指導が入るわけでもなく、だんまりを決め込まれているし、末席の「瞬間湯沸かし器」火精導師のトープランは(常日頃の激情をバクハツさせることなく)音なしの構えで逆に不気味です。
そしてラッツークの大騒ぎも一息ついて一時、「ガブニードスの尖塔」管理業務に戻ってきたガストニーフ技官と言えば現状「そんなドタバタ」にかかずらっれいる場合ではないのです。
以前から…件のシェノーラ水精教導からイヤミを…いや指導されるまでもなく、閏八月の過ぎ越し大祭前よりこのかた、塔の尖塔より時折飛び散る〈ヤーマの灯〉の散布濃度が上昇しているのです。
このあたりはミ※フスキー粒子とイメージが近い…いやアレは電波障害を引き起こすレベルで済む自然現象ですから…むしろ作品のシリーズで例えるなら〈月光蝶〉に近いかもしれませんね。
閑話休題!
いずれにせよ、この世界の住人たちにとって、決して看過しておける話ではありません。まあ、この件に関してはいずれ改めて触れることにして…問題なのは、NUAから派遣されたガストニーフ技官にしても、これが〈バルブを閉めて流出をカット〉程度で事足りるほど話は単純ではないということ。
言ってみれば、ひとつ間違えると「この世界の大気ごと、循環を全て停止させてしまう」大惨事を招きかねない。
だからこそ彼は、この現象にいち早く気づいたシェノーラ水精教導の…指摘に対しても、ある程度受け流して様子を見ざるを得なかったのです。
それにしても…ガストニーフにはその原因が、かなり厄介なところから来ているのでは、という予感を覚えてしまい、気がかりなのです。それもここ数日…ちょうど夜が明け、話によるとラッツークの竪坑町に鳥人間スクルー族たちのコンボイが飛来した頃なのですが、あの時期を境にして、その値は急激に上昇している。これはタワーの基底部からの流出とは原因が異なる、なにか〈外部からの干渉〉を意味している…。
ひょっとして…ガストニーフ技官は…いや、ここではガブニードス、とあえて言い換えましょうか。イヤな予感に囚われていました。
もしかすると、自分は事態を甘く見過ぎていたかもしれない。
嘘から入った狂言はひょっとして、とんでもない大ウソを招き入れたかのもしれない、と。
一方その頃、ラッツークの竪坑では…。
「どうなってんだよ!? 誰も降りて来やしねえ! 今日も縦坑は開店休業かぁ?」
チェニイはロープを繰り、坑壁を降りながら、閑散とした竇の状況に不平たらたらです。どうも「過ぎたるは及ばざるがごとし」を地で行くような景色でしょうか。
あんまり派手にチェニイ様が活躍しすぎたものだから、あぶく銭をてにした鉱夫たち、住人たちは労働意欲を失って…みんな日がな一日、怠慢こくようになってしまったみたいで…。
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今回はこのへんでヒキ! に致します
一応予告しておきますと、ヒマになったチェニイはこの先「冒険でもすっか?」
と、ラッツークの竇基底部を探索に出ます。
ま、ここで何か「大発見」するかはともかくここは随分後になって、
何度も訪れるターミナルポイントとなります
それとは別に地上では…本当にここ最近、いろんな人がいなくなったり、
別の用事で出かけたり、妙な陰謀をめぐらしたり…やって下さるのですね…
で、次回に続きます
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「ザネル」は毎週月・水・金に更新いたします




