13 ラッツークの深い竇(アナ)前
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ニザーミアで精霊導師たちが、技師ガストニーフを交えて
侃々諤々ドタバタを演じている頃、話題の主役チェニイ様といえば
ラッツーク縦坑の崖沿いに「へばりついている」
ジェスロの邸宅(この世界では「掘っ立て小屋」とも呼ばれます)で高イビキです
未成年に慣れぬ大酒を吞ませるとこうなる…ヨールテ親方の時計小屋まで
彼を運び込む余裕もなかったので急遽、ジェスロの邸宅に担ぎ込んだのでした
まあ、どっちにせよ昨夜の大宴会の余韻で、ずっと縦坑の現場は開店休業中だし
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ふと、目を覚ますと雨音が聞こえてきた…。
チェニイにすれば、ザネル世界へ来て初めて耳にする雨音でした。目を開け起き上がったとたんに頭はガンガン、脳の中から鑿でぶっ叩かれてるように響く…だから慣れない酒を浴びるように呑むモノじゃないのです…。ただ不思議と、そんなチェニイの耳に、崖に当たって流れ落ちる水音がメロディのように響き、痛みを癒してくれるのでした。
相変わらず、外は暗いな…漆黒の西空は昨日よりさらに闇の度合いを増しています。…つか、今日で何日が経ったんだろ。「こっち」へ来てから空はじわじわと暗くなるばかりで、カレンダーの概念が消え始めてきたなぁ。
だいたい「昨日」に何があったのかさえ…記憶を無理やりひっくり返すと、なんとも奇妙な「穴掘り初日の大騒動」が浮かび上がってきました。
〈あ~、オレここんトコ何やってたんだ? しょーもねぇ。それに…そもそも、ココ一体どこなんだ?〉
改めて意識をとぎすますと、雨音に交じって、聞きなれた声が後ろから響いています。
「そりゃもう、ワシの指導がばっちしハマったお陰だかんな! スコップ英雄ちゅうたら、ワシに一番よーけ褒美もろたる資格あンとちゃうか、のーえぇ!?」
〈…あ、そういや…昨日一緒に穴掘ってた…ジェスロとか言ったかな、アイツの声〉
「またぁこんガキャあ、調子づいてもぉ~。話を勝手に、好き放題こさえクサって」
…これは老婆らしい声。
「えやないか。ワシらもうすぐ億万長者じゃ、もーチンタラ穴なんぞ掘ったられんわ」
こっちは野太い男の声。
「したら億万長者ンなって、アタシらもうすぐ、花の都のジュレーンへ上れっかなぁ」
さらにもう一人、これは少女のような声です。けどミリアとは違って、いくらか優しそうな声色だけど…。
〈ってオイオイ、ここには一体何人、固まってるんだ!?〉
薄眼で見渡しても、やたら狭苦しい小屋のようです。しかも、人が動くたびにこの小屋、妙な動き方をして…。動く、ズレるというより、最初から傾いているのです!
「おーおー。英雄サマのお目覚めじゃ。どーかの気分は。昨夜はシコタマ呑まされよったからの」
声をかけてきたのは、逞しそうな肉体の…背は少し低いけど、ヨールテ親方と遜色ない見事なガタイの持ち主です。…チェニイには一目で彼が、ジェスロの父親に違いないと分かりました。つか、それ以外に考えようがない。風貌が瓜二つだし。
「わお! よう見っと、むちゃくちゃイケメンやん! あたしエディカっちゅうの…よろしゅうに、ね」
〈微笑みかけてきた少女は…こりゃジェスロの妹だな、うん。アニキに似なくてよかったな。カワイイ妹に生まれて〉
「ほりゃ、ちっと退け、お前ら! 坊っちゃんに気付け薬を進ぜちゅうき」
〈こちらはお婆ちゃんか…まるで《クラン※ット一家》勢揃いだな、この小屋の住人は〉
「ちっと、ア~ンせいや。こりゃあ二日酔いにはいっちゃん効くき、な」
言いざまに有無を言わさず、お婆ちゃんはチェニイ様の口を開けさせデカい匙で、すさまじく苦いスープ(中に妙なゼリー入り)を呑み込ませました。
〈うっぎゃああ! ムッチャクチャ苦くてくそマジい~~~!〉
チェニイ様は思わず悲鳴を上げそうになりました…が、お婆さんは強引に彼の口を閉じさせました、ごっくん! ぐわああああ! 五臓六腑に滲みわたる気色悪さ……。
……
ぢごくのような一分間が経過し、目を閉じていたチェニイが再び薄目を開けると…あら不思議、マジですうっ…と頭痛が引き、胃のムカムカが収まっていきます。
「すげえじゃろ、婆ちゃんの秘伝の薬は」ジェスロが自慢げに胸を張りました。
「グラニー特製〈カンの虫退治〉は何にでも効くけえの」
「はあ、お陰様でスッキリ…何を使ってるんですか、この薬」
チェニイ様は感謝の言葉を述べつつも、一応、念のために使った材料を尋ねます。
「イモリの黒焼きにミージェ虫の羽根を煎じての、これを三日三晩グツグツ…」
聞くんじゃなかった。チェニイは心底後悔しました。
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ラッツークで目覚めを迎えたチェニイ様
大宴会の後遺症(?)も、ジェスロの祖母から頂いた妙薬でスッキリ解決
…さあ実はこのあと、ヒョンな事情で「ラッツークの竇」にまつわる謎に
チェニイ様は挑むこととなります。いや、そんな大層なもんじゃないけれど
次回へ続きます
※注記
ジェスロの家族構成が「クラン※ット一家」そっくり、というのは単なるバカネタです
けどあの家族の住む掘っ立て小屋、一つ間違えると本当に、縦坑奈落の底へ
墜落する可能性があるんですね…
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「ザネル」は当分、毎日更新いたします




