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12 また悪だくみ

 …………………………………………………

まさか一夜にしてマヂで「スコップ英雄」に成り上がってしまったチェニイ様

おかげでラッツークの竪坑町は、真銀ミスリル大量噴出のにわかバブルで

ボン・クレーが一気到来したような騒ぎになりました

で、お目付け役ガブニードスといえば、あんまし顔を合わせたくない

渋面の精霊導師たちに、再びアタマの痛い報告をせねばならなくなります

ま、彼にしてみれば〈うれしい誤算〉どころの騒ぎではないのですね

 …………………………………………………


「面倒ごとは起こさず、ラッツークの鉱夫どもにも、妙な事実を、知らせることなく!」

 テーブルを小刻みに、イライラした様子で頻繁に叩きつけながら、火精導師トープランは必至で怒りを堪えながら続けました。

「と、いうのが、我々と交わした約定、でしたな。そう私は、少なくとも、記憶、しておりますが」わざわざ音節を区切りながら詰問するところがイヤミです。

「それがどうです、あっという間の大問題だ!」

「そうですなぁ…けどニザーミア学府院にしてみればあながち、悪いことばかりではないでしょう? 考えようによっては結構な利益にも…」

「な…ななな、なにが利益ですか! ききキミは、何を口走っておるのだ!」

 ガストニーフの言葉を、トープランは激烈に遮りました。本当にキレやすい人ですね。


「まあ…考えてみればラッツークの竪坑は、ニザーミアの直轄でしたよね。使徒様は一日にして、真銀ミスリルをおよそ一ト月分採掘してのけたんですな。今後も同じペースでの採掘が見込めるとしたら、ニザーミアに還元される純益を考えれば、それこそ…」

 なるほど、そういう考え方もあるか、経済的見地から見たら。

 そもそも〈精霊の権威〉だけで学府院が成り立つはずもなく、ノース・クオータの同盟市からの奉納と併せて、ニザーミアの直轄領…ことにラッツーク鉱山町からのアガリはバカになりません。


「わ…我々は、使徒を、穴掘るために召喚したワケではない! そもそも、何がどうして、こんな羽目に陥ったのだ」

 ガブニードス…いやガストニーフ技師は言い返します。

「けれど、そもそもの発端は皆様が使徒様に、召喚と同時に交わすべき誓約をきっちり結ばず玉璽キューブを押し付けたことでしょうが。違います?」

 ぐっ…。

 ここでトープランは言葉に詰まりました。実際〈使徒召喚〉計画を推進したのは他ならぬ火精導師トープランなのです。あの大講堂の儀式でキューブを〈チェニイ・ファルス様〉に授与したのも彼自身です。慌てて儀式を端折ったコトが、裏目に出たのですね。

 しかしトープランにしても、この計画を強引に推進する事情がありました。ニザーミアに所属する4部局…地精局・水精局・風精局・火精局のうち、いちばん立場の弱いのがこの火精局なのです。

「サウス・クオータの支配者ゼイゴスによる北侵攻」は身近に迫っている危機というより「尾ヒレを付けた悪い噂」レベル。しかしこれを機に乗じて(半ばデッチ上げに近いけど)火精局主導で使徒召喚が実現すれば、ニザーミアでの力関係は一気に逆転します。

 つか…するはずでした…。それを、あの…出来そこないの使徒モドキが、何もかもメチャクチャにしてしまった!


「あんな輩は使徒でも何でもない! ただのニセモノだ!」

 思わず、トープランは叫んでしまいました。

 その場に居合わせた、オービス首席とコーンボルブ風精導師は顔をしかめました。それは言ってはならぬ禁句です。

 一方、ガストニーフ技師は平然と返しました。

「そりゃ、無理筋のあり得ん戯言ですな。仮にニセモノ使徒に〈キューブ〉を与えたら、果たしてどうなるか…ご存じですか? かなり恐ろしい悲劇が待ってますよ」

 その結末は、聞かない方がよさそうです。

「ともかく、今回のラッツーク〈大当たりミスリル〉騒動は、間違いなくチェニイ様のキューブが稼働し始めた証なんです。皮肉な本物証明になってしまいましたけどね」

 しばしの沈黙ののち、オービス首席が口を開きました。

「チェニイ使徒に、改めて…ゼイゴス討伐を要請する方法はないのかね?」

「まあ、頃合いを見計らって切り出す方策も考えられますけれど…何れにせよ、ほとぼりを冷ます時間が必要ですね、チェニイ様の現状を考えたら」

「時間が必要だと!? そんな悠長なことを言っている間に〈使徒召喚〉計画は、ノース・クオータ中に知れ渡るんだぞ!」

 トープランの叫びは、まるで悲鳴のようでした。

「ですから、私の推奨するプランが役立つのですよ…アントラストの外交官とは、すでに内々に話は付けておりますし、彼らもかなり乗り気です」

 大仰に言葉を継いだのは、風精導師のコーンボルブです。

 なんだよ、そりゃ元々ワタシの提案したアイデアじゃないか。勝手に横取りしやがって…まあ…自分には責任がなくなるから結果オーライだけど。そう内心で舌打ちしたのは、実はガストニーフ技師でしたが。


「シェノーラ教導長、ただいまジュレーン市よりお戻りになられましたぁ~!」


 突然、見習い精霊師の大音声が、奥の会議室まで響き渡りました。

 思わす振り返り、苦々しげに舌打ちしたのはトープラン火精導師です。

…もう過ぎ越し祭礼から戻ってきやがった。しかもよりによって一番厄介なうるさ型の姐さんが…。


 …………………………………………………

またぞろニザーミア精霊導師たちの悪だくみだけで、話が終わって

しまいました

今回辺りから妙な人名とか固有名詞とか、ゾロゾロ出始めたけど…

いずれそっちは、必要なら〈用語辞典〉でフォローしますので、

許して下さい

ちなみに現時点で、チェニイ様はラッツークにある

相棒ジェスロのお宅で(下宿先? の時計塔小屋には戻ってません)高イビキ中です

次回に続きます

 …………………………………………………


「ザネル」は当分、毎日更新いたします

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