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第1話 使命

エルフの女騎士とその女王様のお話が始まります。

挿絵(By みてみん)


 夜明け前、暗闇が青白い月光でほんのりと照らされる中で、エルフの女騎士リリアンは鎧を手に取った。鎧はレザーとメタルの調和が美しく、女性的な曲線とスタイルを際立たせている。一見すると優雅で美しい女性、しかしその眼には戦士としての鋼の意志が宿っている。


 彼女の髪はショートヘアで、その色は深い森の緑にちりばめられた太陽の光のような金色に輝いていた。その長さは背中の少し上までしかなく、剣を振るう時邪魔にならないよう工夫されている。瞳は紫色で、知識と叡智、そして戦士としての冷静さが漂っている。



「このままでは、母なる王国が持たぬ…」



 彼女は紫色の瞳に無限の悲哀を映しながら、深く吐息をつく。その眼は、周囲の木々が衰弱し、土壌が腐り始める森の王国の危機を如実に感じさせた。


 ぼやけた精霊僧の予言によれば、解決の鍵は『神の祝福を授かった聖者の血液2リットル』にあるという。具体的な手段や方法はわからない。しかしリリアンは選ばれた女騎士であり、何としてもこの危機を乗り越えなくてはならない。



「神よ、どうかその聖者を我が前に導いて…」



 紫色の瞳に映る月光が、神々しい輝きとなってその祈りを天へと運ぶ。言葉は祈りとなり、祈りは希望となり、希望は行動となる。そしてリリアンは、この運命に抗い、愛する森を、そして何より敬愛する女王様の王国を救うために立ち上がる。何よりも、彼女は今、行動を起こす。それがリリアンがエルフの女騎士である証拠だった。


 祈りが天に届いたかのように、リリアンの前に幼精霊が飛んできた。その瞳は透き通るような青色で、純真無垢な力が漲っている。精霊は、まるで姉に嬉しい報告をする妹のような甘えた口調で告げた。



「リリアン様!いいことあったよ~。神様たち、リリアン様のお願い、きいてくれたみたい!」



 リリアンの紫色の瞳は、一瞬、希望の光で満ちた。



「何を言っているのか、具体的に話してくれ。」



 幼精霊はさらに興奮しながら、それでも妹が姉に喜びを伝えるような甘えた声で言葉を続けた。



「だって、すごい聖者さんがいるんだよ!その人、怖ーい魔獣とか呪術師とかを、いい人といい獣にしちゃったの!それに、その聖者さん、リリアン様たちのところにくるって!」



 この情報は単なる希望以上のものだった。それは明確な可能性、いや、運命のようなものを感じさせる。リリアンの心は高鳴り、その手に握る剣も輝きを増す。



「神々よ、本当に我が祈りを叶えてくれたのか…」



 言葉は独り言でありながら、それは神々への感謝と敬意、そして未来への強い決意が詰まっていた。



「時は来たれり、この聖者が森の王国、いや、我々の未来に何をもたらすか。それを見届けねばならない。」



 リリアンは鎧を身に纏い、剣を携え、紫色の瞳に燃えるような決意を宿しながら、その場を後にした。


 聖者の到来は運命かもしれないが、その運命をどう受け止めるかは彼女自身の力と意志にかかっている。


 神々の遊びか、運命の訪れか。


 どちらにせよ、リリアンは自らの道を切り開く覚悟を決めていた。



  ・

  ・

  ・



 木々の間に差し込む微かな光は、夜明けを告げる前兆とも言えるであろう。リリアンはその疾風のごとき速さで森を駆け抜けた。


 前方に、ひときわ異彩を放つ集団が視界に入ってきた。その中心にいる聖者の瞳は、透き通るような深い碧色で、人々の心を映し出すかのようだった。遠目に見ただけで感じる神気。件の聖者に相違あるまい。


 リリアンはその光景を隠れた場所から、どのように仕掛けるべきかと悩みながら眺めていたが、ほどなく、二人の従者が聖者から距離を取り、近くの水辺で水浴びを始めた。


 これは、人質を取るための絶好のタイミングだ。

 しかし、その行動は騎士としての誇りに反するかもしれないと、リリアンの心は揺れた。


 誇りか、使命か。

 その葛藤の中で、リリアンは森の王国に残された時間が少ないことを痛感した。


 2リットルの血液。

 その量は聖者であろうと生命にかかわる。そしてこの悲劇の舞台、森の王国に残された時間はあまりにも短い。

 確実にことを進めるためには、やはり人質を取るほかないだろう。



「女王様、お許しを…」



 リリアンは内心で詫びながら、女王の持ち物から借りてきた特殊なスライムを指で指し示した。そのスライムは人を傷つけず、一瞬で捕縛する能力があるという。

 リリアンの命令に応え、スライムは瞬く間に水浴びをしている二人に向かって飛び出た。



「これで女王様の王国が救えるならば、わが騎士としての誇りを汚しても仕方がない…」



 リリアンはその瞬間、自分が何をしているのかを深く理解しながらも、胸に秘めた使命感と女王への愛に突き動かされて行動を取った。

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