第34話 猫とエルフの女騎士
次回から新章です。
何となくファンタジー小説な感じで書いてみました。
エルフの女騎士が出てきますっ!!!
見目麗しい貴族令嬢の呪いを祓い、呪術師を倒した聖者の噂は、エルムハースの街に轟いた。
いや、轟かせた。
主にアイザック殿の父御、ジョナサン殿が。
『交易の女神、エロティア様に祝福されたフェリウッド商会』との謳い文句と共に。
商会の店では、聖者饅頭なども売られる始末。
偉大なる女神様の名を使うことに思わぬことがないでもないが、女神様なら笑って認められるだろうと思い、そのままにしておく。
エロティア様の下に戻るときに、お土産に一つ買って帰ろう。
町の辻では、倒す様子の人形劇が演じられ、先ほども呪術師が変化した大きな狼を聖者が殴り倒し、大きな歓声を浴びていた。
どのように倒したのか詳細が知らされていないためこのような形に落ち着いたようだが、劇の聖者様は随分と肉体派らしい。……まあ、アイザック殿も肉体派といえば肉体派だが。
窓枠に手を突き、陽の光をあびつつ伸びをしながらその様子を見つめる。
猫の姿をしていると、どうも猫のような仕草をしてしまう。
しかし、あの日は色々とあった。
ヴィオレッタは聖獣に戻ったセラフィルが今後面倒を見ることを条件に自由を得た。
一応、呪術師は骨も残さず焼き払われたことになってはいるが、ヴィオレッタの顔が一部の界隈に知られているため、二人は旅に出るらしい。
安住の地を見つけに。
つらいことのあった二人には、幸せになってもらいたいものだ。
船にでも乗るのだろうか、とりあえず港町を目指すと言っていた。
セリーナ嬢の父に敵対する貴族は、呪いで暗殺を試みた咎で失脚、その呪いも解け、呪いの件はすべてが丸く収まったかのように思えた。
だが、問題も残った。
呪いを祓う過程であまりに強く神気を浴びてしまったセリーナ嬢の魂がアイザック殿の魂と絡み合い、二人の距離が離れると魂がセリーナの身体から抜き出てしまうようになってしまったのだ。
そのような状態に陥っていると、人々に悪く思われることを恐れたセリーナ嬢は、両親に説得の言葉をかけ、「名高き聖者の従者として、栄光に満ちた道を共に歩む」ことを選んだのだった。
仕方なく旅に出る、とセリーナ嬢は両親に告げていたが、私の目には、彼女自らがその旅を強く望んでいたように映った。このセリーナ嬢、どうもレイラ嬢に対して特別な感情を抱いているらしい。
服屋が話していた「浮いた噂が一つもない」も関係するのだろう。
アイザック殿は多分気づいていない、レイラ嬢はそのことを考えないようにしている様子。
まあ、エロティア様は多様性をも守護されるお方。
きっとこの様子も天から眺めて楽しいんでおられるのだろう。
さて、そろそろ時が来たか。
振り返ると、三人が旅の準備を整え終えたところだった。
窓枠からひらりと飛び降り、ひとつ咳ばらいをし、声をかける。
「皆様、ご準備の方はよろしいようで。では、これから私、エロティア様の従者フェーリスが、皆様をエルフの森にご案内いたしましょう。」
・
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――― ここもか......
木々は枯れ、そして大地も腐り始めていた。
風が吹くと、かつての生命力を感じさせた森の香りではなく、死と衰退の匂いが漂う。
――― このままでは王国が持たない。
それはエルフ少女だった。
人間でいえば、17歳くらいの面影。
彼女の紫色の瞳は、深い森の緑にちりばめられた太陽の光のような金色の髪をかき分け、枯れゆく森を見つめていた。
女性的な曲線とスタイルを強調するような皮と金属で作られたエレガントな騎士の鎧を纏い、剣を振るうため邪魔にならないようにだろうか、彼女の神は、背中の少し上で切りそろえられていた。
「なぜ、こんなことに......」
彼女の声は、森の悲劇に対する悲しみと怒りで震えていた。
彼女は剣を抜き、空に向かって振り上げる。
剣の刃が太陽の光を反射し、輝く光線が枯れた木々に当たる。
「私はエルフの女騎士リリアン。この森、この王国を救うために戦うのだ。
神よ、私に力を......」
彼女の言葉は、風に乗って遠くへと飛んでいった。
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同じ世界の違う時代の話、
【ぼく食べ】僕を食べたくないと、僕の上で君は泣いた
を下記で連載開始しました。
少年と人魚の少女のボーイミーツガール。
なお、人魚は人間を食べます。
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