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第3話 エロティアの聖印

 エルデン村を出発して三日目、最後の丘を超えると目的地が見えてきた。



「レイラ見てごらん。エルムハーストだ!」



 アイザックの声に、レイラも手を庇に先を見る。



「えっ、どこどこ?・・・」



 レイラの視線が遠くの風景に留まると、その瞳は広がる驚きと喜びで満たされた。



「わあっ、綺麗!本当に金色輝いてる!!これがエルムハーストなのね!」



 彼女の声には、見たこともないような美しい光景に対する深い感銘が溢れていた。


 見下ろすように広がっていたのは、金色に輝く街、エルムハースト。

 広大な森に囲まれたこの都市は、遠くからでもその美しさを知ることができ、街の全体が夕陽に照らされると、まるで金色に輝いているかのようだった。


 街は、新旧が交錯する形で建築されていて、古い建物にはエルムハーストの歴史を刻んだモザイクや彫刻が施され、新しい建物には近代的な技術とデザインが融合していた。歴史と未来が共存するこの街は、それ自体が一つの芸術品のようだ。


 エルムハーストは温暖な気候に恵まれ、夏は涼しく、冬は過度な寒さもない。年間を通して訪れやすい街で、その快適さから多くの商人や芸術家が集まるのだ。



 二人はまずアイザックの父親、ジョナサンに会いに行くことにした。


 街の中を進んでいくと、さまざまな風景が広がってる。

 人々の生活の音、商店街の賑わい、馬車の騒音…。

 それは彼らが暮らしてきた村とは全く異なる世界だった。


 街の中心部に近づくと、人々が集まる場所が目に入ってきた。その中に一際目立つ建物があった。アイザックが指を伸ばし、その方向を示した。



「あそこが父さんの家だよ。」



 一瞬、レイラはアイザックの指差す方向を見て、その言葉を理解するのに時間がかかった。そこに立っていたのは、周囲のどの建物よりも大きく、立派な石造りの家だった。


 その壮大さと豪華さは、まるで貴族の邸宅を思わせた。レイラは息を呑んでその建物を見つめた。



「あれが…お父さんのお家?」



 レイラは驚いた表情でアイザックを見た。アイザックはにっこりと笑い、



「うん、そうだよ。驚いた?」



 建物の前で一息つくと、アイザックはゆっくりと大きな扉をノックした。

 一瞬、静寂が流れ、その後で遠くから足音が聞こえてきた。そして扉が開き、中から一人の老いた執事が現れた。



「これはアイザックおぼっちゃま、お帰りなさいませ。大きくなられましたなあ。

 そして、そちらがレイラ嬢でしょうか。ぼっちゃま、この度はおめでとうございます。ささ、お父上が中でお待ちですよ。」



 招き入れられた家の中は、外観と同じく、豪華な調度品で飾られていた。


 案内に従い長い廊下を進み、部屋の中に入ると、中年の男性が彼らを待っていた。

 成熟した大人の体格で、肩幅が広く、筋肉質。

 アイザックと同じ深い茶色の髪色で、短めに整えられている。

 髪には徐々に白髪が混ざり始めていた。


挿絵(By みてみん)


「父さん、久しぶり!」



 アイザックが笑顔を向けると、笑顔でアイザックを見て、



「アイザック、お前か。おおっ、大きくなったな。そしてレイラちゃんもいらっしゃい!」


 と言いながら、アイザックを抱きしめた。



「ジョナサンさん、お久しぶりです。」



 とレイラも笑顔で挨拶した。



  ・

  ・

  ・



 ジョナサンは彼らを暖炉の前のソファーに座らせた。暖炉にはすでに明かりがついていて、部屋全体が温かい光で満たされていた。


 ジョナサンは微笑みながら深い溜息をついた。



 「あの手紙には驚かされたぞ。まさか、エロティア様から祝福を授かるとは。」



アイザックは笑いながら頷いた。



 「そうだよね、自分でも信じられなかったよ。

  それと、レイラとのことも喜んでくれるかな?」



ジョナサンは頷き、優しくレイラを見つめた。



 「もちろんだ。二人が恋人になったこと、とても嬉しいぞ。

  あんなに小さかった二人が、もうこんなに大きくなって。

  アイザック、レイラちゃんのこと、しっかり守るんだぞ。

  レイラちゃん、これからもアイザックを支えてやってくれるかな?」



レイラは照れくさそうに微笑んだ。



 「ありがとうございます、ジョナサンさん。アイザックと一緒にいられることは私にとっても幸せなことですから。」



次に、ジョナサンはカップを置き、アイザックの目を見つめた。



 「世界を見て回る旅に出るそうだね?大変だと思うが、二人ならきっと何とかなるさ。」



 「ありがとう、父さん。

  だけど、旅の第一の目的地はここ、エルムハーストだったんだ。

  父さんに会いたかったんだよ。」



アイザックは父親の言葉に感謝の意を示した。


  ・

  ・

  ・



 「そうだ、エロティア様といえば」



 暖かな会話がひとしきり続いた後、ジョナサンが老執事に向かって目配せすると、一枚の封書を持ってこさせた。



「これは君たちにとって重要な情報かもしれない。明日、この街で年に一度のオークションが開かれることは知っているね。その目録にエロティア様の聖印が載っていてね。」



 アイザックは目を大きく見開いた。「エロティアの聖印って、それは…」



「そうだ、エロティア様の力が込められた特別なアイテムだ。この街に来たからには、そのオークションに出てみるのもいいかもしれないぞ。これが招待状だ。」



 と、封筒を差し出した。

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===


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【ぼく食べ】僕を食べたくないと、僕の上で君は泣いた


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