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3.立ち込める暗雲(?)

設定を色々入れたので読みにくいかもしれません。すみません汗 

ここから一話あたりの文字数を増やします


「それもまあ大事なんだけどさ、」

「それもまあって、何よりも大事なことじゃない!」


思わず弟の発言に異議を唱える。


「僕が言いたいのは、今度の夜会でマルタン家の末の令嬢が社交界デビューするって話!」


ラシェルは思わず首を傾げた。

それが自分の立太子よりも重要なことなのかと目を細めたが、アルバートは笑顔を浮かべて続ける。


「姉さん、年の近い女友達がいないからさ。モンフォール家の姫君はダメだったけど、マルタン家ならどうかなって思って…」


「……気持ちはありがたいけど、アルバート。私はそれより、あなたのことが心配なの。ここから更に命を狙われるかもしれないのよ?」


彼の姉思いなところは、幼い頃から変わることなく継続中だ。

第一皇子がここまで姉に執着していると、もし大っぴらに知られていれば、本当にラシェルは五体満足でいられなかっただろう。

ひとえに、マルグリットがラシェルをひた隠しにしてくれたお陰なのだろう。


「僕のせいで姉さんは表舞台に出られないから、マルタン嬢とだったら仲良くなれるかなって思って。」


マルタン家は、四大家門の一柱。

東部のモンフォール、西部のマルタン、南部のラ=フォンテーヌ、北部のル=シャトリエからなる四大家門。

その中で、唯一海に面しているため、海洋資源などの鉱物を多く採掘でき、共に加工業も群を抜いている家門だ。

そのため、四大家門で一番の財力を誇る家門である。


そのマルタン家の五子である末娘は、父親に似て商いの才能があるらしく、色々な商品を開発していると聞く。

絵本や文学作品を多く制作しているが、帝国中を激震させたのは『電気』を流通させたことだろう。


5年ほど前にわずか12歳の少女が考案したとされるシステムは、今でも国内のみならず大陸中で利用されるようになっている。


海水で水車を回すことによりエネルギーを貯め、そのエネルギーで明かりを灯したりモータを回したりと、万能な発明として、歴史上で3人目となる帝国一の勲章、金獅子名誉勲章を賜ったほどの革命。


一時はどの新聞や噂話にも持ちきりとなるほどの話題をさらった。


唯一海に面するマルタンだからこそ実現できた革新だ。


「マルタン家の末娘ねぇ。噂では可愛らしい少女って聞くけど、ジュスティーヌ・モンフォールの件みたいになるかもしれないわ。」


ジュスティーヌはモンフォール家の令嬢。

今回と同じく、ラシェルの友人候補に浮上した少女だったが、分かりやすくラシェルをアルバートに近づく手段として見ていたことが発覚し距離を置いた。

ル=シャトリエ家にはラシェルを除いて女児は居ないし、ラ=フォンテーヌ家唯一の令嬢はまだわずか9歳。

マルタン家には2人の息女がいるが、1人は別国に嫁いだため、候補となるのはその令嬢1人しかいない。


「だから、その夜会でその子と話してみて、良い子そうだったら姉さんに紹介しようと思って。」


「まあ、北部の領地に戻っても暇だし、期待してみるわ。ありがとう。」


西部のマルタンなら、北部と隣しているため行き来も楽だろう。

弟が自分の立太子よりそれを重視していることはともかく、女友達を夢見るラシェルにとって、案外心躍る話だった。


「それで、その姫君の名前は?何ていうの?」


「えーと、確か……そう、アリス・マルタン嬢!」



ガチャンッ



アルバートが言い終わるより先に、物音が鳴る。

音の出所は、子供たちの会話に一度も混ざることのなかったマルグリットだった。

会話の最中も書類に印やペンを走らせていただろう彼女は、机に置かれた少しかさばる大きさの時計を地面に落としたらしい。


不思議なのは、それを拾おうとしない母親の姿だった。


幸い時計は壊れることはなかったらしく、床に倒れながらも秒針が動く音が沈黙した空気に響いている。

時計の針の音で急かされている気になり、仕事が捗る気がすると言ったマルグリットの愛用の時計だ。


「母さん?大丈夫?」


不思議に思ったアルバートが近くへ進み時計を机に置いた。


「え、ええ。ありがとう、アルバート。大丈夫よ、気にしないで。」


たとえ血縁でなくても動揺が伝わるほどに焦った様子のマルグリットは、そっと時計の位置を元の場所に戻す。


「2人とももう戻っていいわ。アルバート、ラシェルを皇女宮まで送って頂戴。ラシェル、急いで領地に行く支度をしなさい。予定を早めるわ。いいわね」


「……はい、母さん」

「……分かったわ、お母様」


姉弟で目を合わせながらも、2人は空気を読んで母親の執務室を後にした。

扉を締める際、アルバートには聞こえなかったようだが、ラシェルはマルグリットが呟いた『アリス・マルタン……ヒロインがどうして……』という言葉を聞き逃さなかった。


何が母親の琴線に触れたのか分からないけれど、ラシェルの考えることが1つ増えたらしい。




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