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34.処分


波乱でおめでたい夜が明け、あまり熟睡できなかったラシェルは、自分の体に鞭を打って覚醒させる。


マルグリットはもう皇宮に戻っただろうか。

恐らくお忍びでやってきた皇后なのだから、流石に朝には戻らないといけないだろうし、既に戻ったに違いない。


仕事が貯まっているのか疲れた表情の母を心配しながら、着替えようとクローゼットに手を掛ける。

そこでようやく、着替えは手伝ってもらうものだと思い立つ。

あまり仕事を1人で行うのも、侍女に失礼にあたる。


ラシェルは手元のベルを鳴らした。












「ジャンヌさんは?」


「今は休んでおいでです。代わりにダニエル様とシャーリー様が。」


朝食の席に付くものの、用意されたカトラリーセットは三人分。

ラシェル、ジャンヌ、マルグリットの並びなら良かったが、どうやらラシェル、ダニエル、シャーリーの3人だろう。


ダニエルはまだしも、シャーリーとは異母姉妹という複雑な立ち位置にある。

加えて、お互い兄弟が皇位を争っていたのだから、どうにも対応に困るというか。

それでも、2人が皇位継承権を早くに破棄しているのが共通点といえるだろう。


「やあラシェル。おはよう」


「おはよう、ダニエル。……シャーリー皇女も。」


ラシェルの存在を確認するなり、シャーリーはダニエルの後ろにサッと隠れる。


「あ……おはようございます。ラシェル皇女様。」


昨日のマルグリットの件でラシェルも警戒されてしまったのか、ラシェルの斜め前に用意された席に座る。


シャーリーも六番目の皇女とはいえ、母はモンフォールの第三皇妃で、兄は皇位継承権2位の第四皇子なのだから、そこまで小さくなることはない。


「……あの」

「……昨日は」


シャーリーとラシェルの声が重なり、お互い気まずそうに顔を背ける。

ダニエルが「ラシェルからどうぞ」と促し、ラシェルは下を向いて肩を震わせるシャーリーに声をかけた。


「昨日は母がごめんなさい。アルバート……第一皇子の立太子が近くてピリピリしてるんだと思うわ。」


ラシェルが頭を下げれば、シャーリーはふるふると首を振った。


「だ、大丈夫、です。皇后陛下にわたし、失礼なことしちゃったから。」


「そこまで気にすることないわ。お母様は警戒心が激しいから。」


別にそういうわけではないけれど、シャーリーをカバーするためにそう声を掛ける。

シャーリーはラシェルの話が終わったと感じるなり、顔を上げて声を発した。


「あの、お兄様はどうなりますか。」


ここでいうお兄様は第四皇子の事だろう。

第四皇子がどうなるのか……それは嘘を付いても仕方がない。

ラシェルはできるだけアッサリとして述べる。

それがもう、変わることのない話のように。当たり前だと言うように。


「殺されるわ。」


「……」


驚いたり涙を浮かべないだけ、シャーリーも察していたのだろう。


「皇位争いに負けたものは、いずれ反乱を起こさないように殺す。もう決まっていることだわ。アルバートの皇帝即位の日に、秘匿処刑が行われるはずよ。」


ーここでラシェルが躊躇するような姿勢を取れば、その弱みに漬け込まれるわよー


マルグリットの教えだ。

あまりにも沈黙に耐えきれず、ラシェルはテーブルに置かれたソーセージにナイフを通す。

シャーリーはショックを受けたような様子もなく、ただ考えたように目の前の料理を眺めていた。


「……シャーリーは?」


ダニエルがラシェルに尋ねた。


「シャーリーはどうなる?」


ダニエルの問いにラシェルは手を止める。


「分からない。殺されるかもだし、幽閉されるかも。なにもされないかもしれない。これを決めるのは六機関だから。」


結局、ダニエルの目的はシャーリーを殺さないことなのだ。

シャーリーが第四皇子の妹として処刑されるか、ダニエルの婚約者として見逃されるか、どちらも可能性としてはありえる。


そして、政界におけるラシェルの発言権はない。

政界のル=シャトリエ直系のダニエルとはいえ、婿養子となる彼は東部の所属だと言っても過言ではない。


「……シャーリーは早くに皇宮から離れて隠居している!危険因子はないはずだろう!」


「そんなこと言ったって、第四皇子の妹じゃない!仕方がないわよ!」


プロヴァンヌは完全血統主義の帝国。

四大家門当主が直系しかなれないように、四大家門の髪色を重視するように、血の正当性が全てだ。


危険因子のないシャーリーだが、第四皇子の妹というだけで処分の対象になり得ている。


「私だって発言権がないんだから、どうしようもないわ。私の所属は東部でも北部でもなく皇室なんだから。」


冷たく言い放って、食事に集中する。

自分の発言に心の中で2人に謝罪しながら、想像のマルグリットに頑張ったと報告をする。


「……朝から気分が悪いよ。僕はもう失礼する。」


「あ、わたしも……」


ダニエルに睨まれるが、これはラシェルとしてもどうしようもないのだ。

嘘でも助かると言う方が酷だし、ラシェルが意見することも叶わない。

1人、残された食事に手を付けながら、深く溜め息を吐く。


「私のせいじゃないってば……」


ダニエルとは対立してしまったようだ。


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