第9話 冒険者ギルド
薄青色の苔に覆われた石壁が遠くまで続いている。
入り組み見通しの悪い通路内を石壁の狭間から漏れる青い仄かな光がお情け程度に周囲を照らす。
時折姿を見せる魔物がぼんやりこちらを見上げているが爪も牙も届かないと見て歯軋りしつつも早々に諦め興味を無くしていた。
「東京ダンジョン」は10階層までは蔦で作られた壁や床で形成された迷宮だが、11階層から30階層にかけてはレンガを積んで組み立てたかのようなオーソドックスな迷宮へと変貌を遂げる。
マルスゲニウスの第一階層を思い出すような光景だ。
そんな見慣れた初見の迷宮を風を裂きつつ進んでいく。
まるで何かに急かされ追い立てられているかのように。
何故ここまで急ぐ必要があったのかといえば、今の俺には迅速に解決しなければならない問題を抱えていたからだった。
◆◆◆◆◆◆
地上に戻ってきた翌日土曜日。
俺は学園から街に向けて歩きながら内心頭を抱えていた。
理由は……金だ。
DDN——『ダンジョンダイバーナビゲーター』アプリ内のE(※エナジー、魔石を変換する事によりアイテムや食料を取得出来る。アプリ専用の電子マネーのようなモノ)という形では巨万の富を築きつつある俺だが日本円は悲しいほどに持っていない。
というより、借金すらある。
俺が通う都立積木学園の制服。
マルスゲニウスの第一階層で無残にも燃やされ切れ端一枚残っていないアレを学園での生活を再始動する為に購入しようと思ったわけだが……これが思いの外高かったのだ。
ステータスという力を持つ学園生が着る以上通常の制服に比べ防刃防弾はもちろん細やかながら魔法への耐性すら備えている制服が安いわけがなかった。
もちろん迷宮に本格的に潜るにはあまりにも脆弱であり、頼りない品物ではあるものの、学園生が一般的に到達する10階層程度までなら実用に足る品物である為最初に支給された際には無料でも生徒の過失で買い直す際には相応の値段で買い直さなければならないようだ。
で、当然両親から貰った雀の涙の一雫すらもう少しマシなのでは?と思えるほどの実質お小遣い程度の資金では当然足りず借金をして買い直す羽目になった。
幸いにも冒険者という仕事には金がかかるものでそれを養育する目的で築かれた当学では学園生向けに利子無しで借金をする事が出来る制度があり、首が回らないという最悪の未来は訪れなかったもののこんなにも早期に借金濡れになった生徒は滅多にいないのか購買のお姉さんにはお小言を頂く事になった。
本当に——はらわたが煮えくり返るような思いだ。
お前らの作った制服の出来が悪いからだ!といっそのこと罵倒してやりたい気持ちになったが冷静に考えて彼女達からすれば未知の迷宮で通用しなかったと言われても理不尽過ぎるしそんな仮想敵を想定して制服を作るなど不可能だと分かりきっていた為歯痒さを感じつつも黙って叱られるしかなかったわけだ。
人の世で生きる苦しみを理解された俺は迅速に生活資金を得る為に冒険者ギルドへ向かった。
新東京には4つのダンジョンがあり最も大きな東京ダンジョンの近隣に4つ、そして残りの3つのダンジョンに寄り添うように3つの冒険者ギルドの支部があるわけだが今回はその中でも最も近い支部に行く事にした。
積木学園の生徒である以上冒険者ギルドを通さずとも迷宮内に侵入すること自体は可能なわけだが、迷宮で得た品々を売却し金銭を得るには冒険者ギルドへの登録が必要だった。
ちなみに学園へ成果物を渡す場合は金銭ではなく成績が得られる。
大抵の生徒は二足三文にしかならない浅い階層の素材や魔石などを学園に提出するそうだ。
もちろん深く潜れる優秀な生徒の中には冒険者ギルドへ登録して卒業を待たずに活躍し、そこそこの金銭を稼ぐ人も居るそうだが。
春の陽気に恵まれた今日。
新東京は活気に満ちていた。
街中は人で溢れ……
俺の通行を著しく阻害していた……
入学して最初の休日であるにも関わらず既に意気投合したのか新入生らしき少年少女たちやかわいい女の子に声をかける上級生らしきものもちらほらといる。
今ここで魔法を唱えればどれほどのキルスコアが稼げるだろうか?と不穏な思考に至りつつも遅々として進まない行列に辟易してきた頃に目的地が見えてきた。
並び建つビル群の狭間に異世界から転移してきたかのように周囲の建物から浮いている木造4階建程度の建造物。
迷宮産の上質な木材で建てられたそれはまさしく異世界ファンタジーモノの小説を読み、思い浮かべてしまうテンプレ冒険者ギルドのような景観をしていた。
街路側にせりだした空間にはテラスがあり観光客とおぼしき家族連れが肉汁滴る豪快なステーキを見てはしゃいでいる。
海上迷宮都市である新東京には『日本で唯一の迷宮と共にある街』という観光名所的な側面もある。
冒険者ギルドの外観があまりにもそれっぽいのもその為らしい。
スウィングドアを開け放つと右手に酒場をイメージした飲食スペース。
左手には大型の掲示板があり今需要のある迷宮資源や注意事項が記載された羊皮紙が乱雑に貼り付けられている。
一階と二階は吹き抜けになっていて天井はかなり高い。
天井に設置されたシーリングファンがくるくると回っていて統一感がすごい。
最早実用性を度外視したアトラクション的な見映えだな……
そんな光景に呆れつつも真正面に見えるカウンターへ歩を進めようとした矢先だった。
右手の飲食スペースから争うような声が聞こえてきたのは。
「なんだよ!ちょっと声をかけただけだろ!」
「イヤらしい目で見てただろうが!」
「ちょっと、やめなよ!!」
うわぁ……
目を向けて見ればそれなりに使い込まれた革鎧に身を包んだ三十代前後の男性に高校生ぐらいの男子が食ってかかっていた。
その後ろには地雷系ファッションに身を包み何とか男子の暴走を止めようと声をあげる小柄な少女とそれを守るように三人の男子が立っており中年男性を睨みつけていた。
目の前の光景を絵画にして題をつけるなら『ヲタサーの姫と不愉快な騎士』だな。
女の子の前で格好をつけたいのかヒートアップする男子と面倒ごとを避けたい少女と男性のすれ違いが味わい深い作品。
見る者に青春の過ちを想起させる画家の力を感じさせる迷作だな。他所でやれ。
——共感性羞恥で気が狂いそうだ……
見ていられなかったので軽く溜息をつきつつカウンターへ向かう。
カウンターにはズラっと受付担当の職員がならび手元で何らかの書類仕事をしていた。
ザッと見回してみるとほとんどが顔で採用を決めたのか?と思わず首を傾げたくなるような見目麗しい女性が多い。
そんな中数少ない男性職員が目に留まり自然と足が向いた。
新入社員というイメージの化身のような真面目そうな黒髪短髪。
明らかに着慣れていない制服を身に纏い「一心不乱」という言葉を想起させる様子でカウンターに極限まで目を近付けてカッカッカッカッとボールペンが掻き立てる音を周囲に響かせながら仕事をしている。
「……すみません、登録がしたいのですが」
「ふぁっ?!」
声を掛けると奇声と共にバネ仕掛けのようにバンっと顔を跳ね上げ俺の顔を困惑した様子で見上げている。
……そういえばスキルを用いて気配を消していたので彼は声を掛けられて初めて眼前に俺が居ると気付いたのかもしれない。
彼の奇声を呼び水に周囲からも困惑した雰囲気が漂う。昼前の穏やかな空気(飲食スペースは別として)が霧散する。
「……あの、登録がしたいのですが」
「……? あ、えーと……初めての方ですか?」
「そうですけど」
何かやたらと確認してくるなと奇妙に感じたがそこで初めて思い至る。自分が今どのような格好をしているかについてだ。
頭に被る魔女を想起させるような唾が広く先が折れ曲がった黒色の魔女帽。
濡れるような漆黒のフーデッドローブはひと目見ただけで素人でもそんじょそこらで買える品物ではないと気付くだろう。
極めつけは右手に保持している長大なロッドだ。
俺の身長より長い2メートルにも及ぶそれは誤魔化しようが無いほどの力を見る者に魅せつける。
重厚感のある艶やかな白色の柄がスラッと伸び杖先にはダチョウの卵ほどの濃紫の魔力石が嵌め込まれその周囲を衛星を象った飾りが覆っている。
よくよく見てみるとその魔力石の中には星々の光を閉じ込めているかのように様々な色の光が瞬いている——まるでそこにひとつの宇宙を内包しているかのように、だ。
確かに、初心者冒険者には見えない格好ではある。
だが、この程度ならまだ言い訳はいくらでも可能だ。
俺はどのように伝えるのが効果的か、すこし悩みつつも説明する。
「……コスプレです」
「コスプレ?!」
「……形から入るタイプ、なので」
俺がそう見事に誤魔化すと受付職員はなるほど納得ですと若干頰を引攣らせながらも冒険者登録をする為の手続きを開始してくれた。
……一瞬焦ったがなんとかなるものだ。
今まで潜り抜けた修羅場に比べればなんということはない。
手続きはとんとん拍子で進み、冒険者ギルドに登録した際に渡されるドックタグも受け取り最後に注意事項を説明されて呆気なく終わった。
いや、ただ単に誰でも出来る登録作業を終わらせただけではあるのだけど。
「……説明は以上となります。何かご質問等ございますか?」
ペースを取り戻し平常運行に移行した職員に問われる。
ちょうどいい機会だったので東京ダンジョンで需要が高く値段の高い物品を難易度度外視で尋ねてみた。
「そうですね……難易度度外視でしたら18階層のファイアドレイクの素材とか?誰も勝てないですけど」
「誰も勝てない?」
「そうです。いや、厳密に言えば勝てはしますけど1度の討伐に30階層以下を探索出来る冒険者が何人も犠牲になってしまうのでまったく収支が合わない魔物ですね。素材は魅力的なのですが」
曰く、普通はダンジョンの階層ごとにある程度魔物の強さが比例するものなのだが件の竜はその法則性から完全に逸脱しており毎年少なくない数の冒険者が犠牲になるのだとか。
ギルドも問題視しており繰り返し注意を呼び掛けているが何処にでも話を聞かない者はいるもので定期的に犠牲者が出ている模様。
一度討伐すれば沸かないのでは?と試みて当時のギルド内でも指折りの精鋭が挑み犠牲を出しつつ討伐するも無情にも討伐して1時間もしないうちに再出現してしまい「一度討伐すれば沸かない」という説は完全に否定され今に至るそうだ。
親切な職員に礼を言い早速東京ダンジョンへ向かった。
冒険者ギルドの裏手から出て少しすると真っ赤な5メートルほどの赤い門扉が目に入る。
直近にダンジョン入りした冒険者に習い門扉の横で警備をしている職員にドックタグを見せて中に入ると緑に包まれた迷宮の姿がそこにあった。
(さて、さっさと18階層を目指しますかね)
通常、東京ダンジョンのようなダンジョンを進む際は便利なダンジョンギミックである『泉』と呼ばれる転移ポイントをマークしながら進んでいく。
一度マークした泉にはダンジョン入り口に必ず存在する泉から一瞬で転移する事が出来、これを繰り返すことで攻略階層を積み上げていくわけだが……
今の自分は授業でマークした学園侵入口付近の泉以外には登録していない。
この状況で18階層に行くには相応の時間が必要だ。
通常はダンジョン内を魔物や罠に対処しつつ彷徨い進む。
ある程度の階層まではテンプレとでも言うべきルートが存在しそれに沿って進むにしろ愚直に歩いて進めば戦闘、寝食、休憩などを計算に入れずとも数日にも及ぶ長大な探索行の果てにようやく第二階層へ到達する——迷宮とはそのぐらい広大な場所なのだ。
なので1日でダンジョン18階層へ進出し荒稼ぎするには相応の手段が必要だ。
収納系空間魔法を発動、マルスゲニウスで掻き集めた数々の武器や道具が仕舞われた収納スペースから箒を取り出す。
長く愛用し続けてきた箒……『カノープス』は重厚感溢れるどっしりとした赤黒い柄にたぬきのしっぽのようなふっくらした黄色の穂を持つ一見普通の箒である。
しかし、実際に跨り空に飛び出せば病みつきになること間違いなしの滑らかな加速と自在な操作性で「もう他の箒では満足出来ない」と気付けば虜になってしまうほどの他の箒を寄せ付けない隔絶した性能を持つ。
だが、いくら優れた箒を持っていても目指す先の情報が無ければ目標の到達は困難だ。
そこは魔法使いらしく魔法を唱えて解決しよう。
ロッドを構え、魔法を発動させる。
周囲に明るい光が溢れると小指の先ほどの小さな光が無数に現れる。
よくよく見てみればそれは小指の先ほどの大きさの小さな小さな妖精だった。
「……行け」
小さな声で命じると微細な妖精たちが檻に閉じ込められ続けていた猛獣が数年ぶりに解き放たれたかのように猛烈な勢いでダンジョンに拡散しマップを埋めて行く。
迷宮探査魔法である『妖精探知』だ。
ただでさえ優秀な探査系魔法であるそれはDDNのオートマッピング機能との合わせ技で悪魔的な性能を発揮する。
これで箒という移動手段。
妖精探知により目指すべき場所を把握する為の情報を得たわけだ。
(おっ、階段が見つかったね)
遂に妖精のうちの一体が階段を発見。
全ての妖精が俺の意に沿ってこの階層の探査を切り上げ第二階層へ向けて進出していく。
(さて、俺も行くか)
箒に跨り地を蹴ると心地良い加速感。
淀んだ空気を切り裂いてダンジョン内を突き進む。
箒での飛行特有の開放感。
通路が狭く、そこがやや不満だがそれでもなお感じる高揚感に自然と笑みがこぼれる。
このままずっと乗っていたいと思うほどの気持ち良さ。
箒での飛行はやっぱり最高なんだ。
飛行の楽しさを充分に楽しみつつもマップを見ながら第二階層への階段に一直線に向かう。
当然ながらダンジョンは入り組んでおり通常であれば壁が道を阻み直線的に次階層へ進む事は不可能だ。
だが、この世界の大抵のことは魔法で解決する。
ダンジョンの壁は一般的な透過魔法に対して強力な耐性を保持しているが逆に言えば常識を逸脱したレベルの透過魔法であれば壁抜けが可能だ。
壁を抜けて侵入者に牙を剥くタイプの魔物が存在するのだからそれを魔法的に再現すればあらゆる迷宮的な障害を無視して進む事は意外と簡単である。
ここまで来れば後は作業だ。
各階層でひとつづつ泉でマーキングしつつ15時前には第18階層へ到達した。
◆◆◆◆◆◆
東京ダンジョン第18階層南東部にそれは居た。
薄暗い迷宮内に爛々と輝く黄色の眼。
成人男性の腕よりも長く鋭い歯が山脈のように口内に生えており、その大きな口に捕らわれたが最期、金属鎧に身を包んだ熟練冒険者ですら刹那に噛み砕かれ死に絶えてしまうだろう。
体高は5メートルほど。
この種——竜種としてはかなりの小柄だがせいぜい2メートルに届くかどうかである脆弱な人間たちに比べれば2倍以上の高さだ。
体長は尾の先まで含めれば15メートルを超えるだろう。
ここまで来ると非冒険者ではなかなか想像の難しいスケール感だ。
その圧倒的な体躯に見合う大きな前後の脚には巨木のようにたくましい筋肉。そして最強(笑)種にふさわしい硬度と魔法耐性を備えた竜鱗がびっしりと生えており並みの魔法や打撃では効果的なダメージを与えるのが難しい……はずだ。
ファイアドレイク。
末端とはいえ竜種に連なる強敵がそこに居た。
18階層という東京ダンジョンの中層域には見合わない強敵……だったらしいが、なんか雑にアイススラッシュ撃ったら死んだわ。普通に爆砕した。
断末魔さえあげれずに死んだ。
まあ、こんなもんだろ。
所詮羽なしのキ◯リみたいな枠だし……
ファイアドレイクが爆砕した跡地にはバレーボールくらいの紫紺の魔石に手のひらサイズの真っ赤な魔力石と牙と爪が数本落ちていた。
ふーん。
結構たくさん落ちるんだね。
前回倒したクワガタは魔石だけだったけど、魔物によってドロップ枠が違うのか?それとも運ね良し悪しなのかは何度か試行して確かめる必要がありそうだ。
にしても……そういえばどのドロップが高価買い取りなのか聞きそびれたな。
まあ全部売却すれば良いか。
素材を売る時に空間魔法から物を取り出すところを見られるとなんか騒がれそうな予感がしたので手作りの魔法袋にドロップ品をぶち込んでおく。
これで安心だな!
さて次の獲物は〜と探して見ると、一匹目のドレイクが立ち塞がっていた場所を通らなければ辿り着けないかなり奥まったところにワラワラとドレイク種が沸いているのを発見した。
聞いた話から推測するに多分ギルドはこの穴場には気付いていなかっただろうな。
そもそも、あのファイアドレイク相手に犠牲者が出るレベルの戦力なら気付かなかったのは幸運だと思うが……
今回の件ではっきりしたが、やっぱり一般的冒険者と自分にはかなりの戦力格差がありそうだ。
まあ、あれだけ恵まれた環境で70年鍛えて差が生まれてなかったら泣くと思うけど。
いまさらな話ではあるが『アイススラッシュ』というシンプル過ぎる名称に見合わない、極太で氷属性を伴った飛ぶ斬撃は悪魔的に強い。
これでジョブが大魔導師なんだから剣士系ジョブだったら……と妄想するとたまに後悔するんだよね。
そんな理不尽スラッシュを雑撃ちしてたらドレイクが絶滅していた。
なんか一瞬羽持ちがチラチラ居たような気がしたが多分気のせいだと思う。
ドロップがぼろぼろ落ちているのでやっぱりドラゴンタイプはドロップがウマウマなのかもしれない。
これだけあれば借金を返済してお釣りがくるだろう。
あと、なんでここだけドラゴンハウスになっていたのかちょっぴり気になって調べてみたら『ネスト』が出来ていた。
ネスト。
直訳すると巣。
それはダンジョン内に出来る小さなダンジョンでモノによってはかなり美味しいお宝やマジックアイテムが手に入ることもある、のでさっくり踏破して最奥に居たちゃんとしたドラゴンを呪い殺しておいた。
流石に小手先スラッシュだと厳しそうな、しっかり強いタイプのドラゴンだったから割と久々に本気を出した。
割と抵抗していたので多分剣士ごっこをしてたら死闘だったと思う。
ネストの最奥にあった宝物庫はミスリル製のショボいコインが山のようにあってハズレかよ!ってキレそうになったけど目玉のマジックアイテムと装備はひとつずつと数的には少ないものの質が高くて大満足だった!
マジックアイテムは『教導の書』という品物で、これを手に他人を指導すれば、自分の知っていることはもちろん知らないことすら的確に教え、相手を導くことができるらしい。
割と無茶苦茶な能力は高位のマジックアイテムの特権だ。
なんせ『そういうアイテムだから』という真面目に考えるのがアホくさい理不尽を押し付けるのがこのカテゴリーの品物の常だからな……
『戦況に関わらず使用者の所属する国または集団が戦争に勝利する、この効果は打ち消されない』とかいう効果を見たあの日から思考放棄することにしてる。
もう一方の宝物は鎧だった。
一式セットでまるごと置いてあってお得感があるが、女性向けらしく赤いヒラヒラとしたスカートがついていて……一見するとコスプレ感がある。
ただ能力はコスプレとは程遠い実用性を秘めていた。
一見普通の急所のみ金属で覆われた華美な部分鎧に見えるのだけど、布地に見える部分も金属に見える部分も共に聴いたことがない魔物素材の数々で作られているようで数字を見る限り最上位クラスの防御性能がありそうだ。
そして何よりエンチャントが強力だった。
素材の性質なのか加工法に依るものなのか?
付与されている魔法効果の数自体は3つと、これほどのランクの割には少ないが……
身体能力超強化、物理魔法攻撃に対する強耐性、呪いに対する強耐性とシンプルに強力な効果がまとまっていて汎用性に優れているので当たりだと思う。
これが魔法使い系装備だったら女性向けのモノが手に入った事に舌打ちしたかもしれないが、見るからに前衛向けの性能だったので器の小さい俺でも生暖かい目で見てられる。どうせ誰かに貸すか売るかになるしな。
そんなこんなで当初の想定よりかなり大規模な探索行になりはしたものの無事に帰還した。
お楽しみの換金ターイム!と思ったらわけわかんないおっさんが横から言い掛かりをつけて来たので可愛がってやった。
そこですぐお金が手に入ると思ったんだけど、どうやら査定に少し掛かる品が多いらしく改めて連絡するから後日という話になってしまった。
まさか一日中駆け回って一銭も稼げないとは想定してなく、少しゴネたがダメらしい。
仕方がないので肩を落としつつ寮に帰るしかなかった。
Q.探査系魔法の妖精探知を愛用しているのですが稀に妖精が命令を無視して動きを止める時があるんです!なぜですか?!
A.妖精ちゃんはきれいな花がだいすきなので見かけると蜜やはなびらの蒐集の為に立ち止まる時があります
急かしたい気持ちも理解できますが花の蜜をちゅうちゅうし終わるまで静かに待ちましょう




