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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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魔王ルキナとの邂逅②

 馬車から降りたシルヴィス達はキラト達が事情を話すのを見ていた。衛兵達はキラトに気づくと直立不動で何やら受け答えをしていた。


 衛兵達のキラト達へ注がれる視線は憧れのものへ向ける視線であり、キラト達の立ち位置が単に魔王ルキナの息子とその供という位置付けではなく実力に裏付けされたものであることを示しているようであった。


「キラトさん達って人気あるんですね。王族という高い身分なのに気さくですし、実力も確かですから当然ですけどね」

「お前も……」

「なんですか? ああ、私も負けてないと言いたいのでしょう? そうなんですよ私がいかに竜皇国においてみなが憧れてるかをとくと語ってあげましょう!!」

「いや〜残念だな。キラト達の話が終わったみたいだ。暇になったらその話を聞かせてくれ」

「暇……分かりました。私は気配りのできるできる女ですからね〜。シルヴィスも私に憧れてるからと言って卑屈になる必要はありません!!」

「お前、ちょっと黙ってような。衛兵の方々が怪訝な表情で見てるだろう」

「あ、本当ですね。シルヴィスは少し微笑むようにした方が良いと思いますよ。さ、こんな風に!!」


 ヴェルティアはそう言ってニッコリと笑った。その笑顔を見た衛兵達は呆けた表情を浮かべた。


(こいつは中身をしらなければ本当に美少女だからな。しかも笑顔は麻薬かなんかというレベルで中毒性があるんだよな。俺も最初はあんまり美人でビックリし)


 シルヴィスはヴェルティアと初めて出会った時に、その美しさに見惚れてしまった事を思い出した。


 ちなみにその後に……


『お〜まさか魔神を倒せる方がお父様以外にいるとは思いませんでした。さぁ、わたしと一つ勝負しましょう!! いいですか? いいですよね? じゃあ、行きますよ!!』


 と訳のわからないうちに襲い掛かってきたので、美しさに見惚れるという状況など十秒にも満たなかった。


(ひょっとして、俺がヴェルティアに見惚れて返答が遅れなければ戦わずに済んだのかな?)


 シルヴィスは一瞬そう考えるが、すぐに頭を横にふった。あの時のヴェルティアは妙にテンションが上がっていたから待てと言っても聞かなかった可能性の方が遥かに高いという結論に至ったのだ。


「みんな、こっちに来てくれ」


 キラトがシルヴィス達に手招きするとシルヴィス達はそれに応えてキラト達の元へと向かった。


「この四人は俺達の仲間で親父殿に引き合わせたいから連れてきたんだ」


 キラトの言葉に衛兵達はシルヴィス達に視線を移すと一礼する。キラトが仲間と呼ぶシルヴィス達に対して丁寧な対応をするのは彼らにとって当然のことであったのだ。


「王太子殿下の御言葉ですが我らも規則がございますので、検査を受けていただいてよろしいですか?」

「かまいません」


 衛兵の言葉にシルヴィスは即答する。むしろ、キラトの仲間という理由で規則を曲げるような事をしない職業意識に対してシルヴィスは好感を持った程である。


「私もかまいませんよ。というよりも衛兵さん達の立場から考えると当然です」


 ヴェルティアも即座に了承する。権力を使って規則を破るのはヴェルティアにとっても好ましいことではないのである。この辺りのシルヴィスとヴェルティアの価値観は似ていると言えるだろう。

 自分達が強大な力を持つゆえに、自分を強大に見せようなど考える必要のない強者たるゆえと言えるだろう。


「申し訳ありませんが身体検査であれば女性の方にお願いしたのですが、さすがにヴェルティア様の身体検査を男性が行うというのは抵抗があります」

「だな、いくらお嬢が了解したからと言っても、男の手でお嬢の体を弄らせるなんてことになったら陛下に申し訳が立たないからな」


 ディアーネとユリの言葉はヴェルティア付きの侍女、護衛武官として至極当然のことであった。

 二人の申し出に衛兵は慌てて首を横に振って言った。


「さすがに我々も淑女の体に触れるようなことはしませんよ。使用するのはこの巻物(スクロール)です」


 衛兵が懐から取り出した巻物(スクロール)を紐解くとシルヴィスに視線を向けて言う。


「お名前は?」

「シルヴィスです」

「はい。それではここにきた目的をお答えください」

「魔王陛下に会って、神の情報を得るためです」

「それでは魔王様に危害を加えるつもりはございませんか?」

「はい」


 衛兵は巻物(スクロール)を見ながら言う。他の衛兵達はシルヴィス達から視線を外すようなことはしない。


「確認終わりました。シルヴィス様は問題ないことが確認できました。それでは、そちらの方々の名前をお答えください」

「ヴェルティアです」

「ディアーネです」

「ユリシュナ、みんなにはユリと呼ばれてる」

「はい……承知しました。それでは先ほどシルヴィス殿の言ったことに間違いはありませんか?」

「「「はい」」」


 衛兵達はまたしても巻物(スクロール)を覗き込むと再び頷いた。


「確認は終わりました。それではお通りください」


 衛兵達が道を開けるとシルヴィス達一行は城内へと足を踏み入れる。城内は黒を基調とした石材で作られているが、不思議と陰気さは感じない。むしろ荘厳な印象を与えるくらいだ。


「あの巻物(スクロール)に施されている術式を見たかったな」

「確かに竜皇国に導入することで尋問などの効率が一気に上がりそうですね」


 シルヴィスの言葉にディアーネは即座に答える。衛兵達の使っていた巻物(スクロール)に施された術は質問に対しての虚偽を見抜く術式が施されている事を察したのだ。


「すまないが、国家機密だ。他所にバレたら対策を取られる可能性があるからな」


 キラトがシルヴィスとディアーネの会話に肩をすくめながら言う。キラトの言う通り、虚偽を見抜く術式が外に漏れれば、対応策を取られ、良からぬことを考えるものが侵入する事も十分に考えられる。そのために巻物(スクロール)に施された術式は門外不出の術式となっているのである。


「そりゃそうだよな。そうそう……キラトの親父さんってどんな方だ?」


 シルヴィスの言葉にキラトはう〜んと唸り始めた。


「一言で言い表すことはできないな。良く言えば気さくな気の良いオヤジ。悪く言えばデリカシーのないオヤジだな」

「お前の未来の姿だな」

「んなわけあるか!! 俺はもっとこう……知性派で」


 キラトは口を尖らせながら憮然とした表情で答える。


「キラト様、日頃の言動からもう知性派とはみなされることはないですよ。あきらめましょう」

「何言ってる。俺は知性派になる。絶対なる」

「キラト様、無理ですって。心配しないでもリネア様が知性派として我が国を支えてくれますって」

「リューべ、お前主人への対応が最近ひどくないか?」

「そうですか? シルヴィスさん達に会いに行った時だって、呆れられていましたよ」

「う……」


 リューべの言葉にキラトは反論を封じられた。


「あんまり、リューべもシルヴィスさんもうちの人をあんまりいじめないでね」

「はい。申し訳ありません」

「ああ、すみませんでした」

「ちょっと待って!! なんでお前らリネアの言うことは素直に聞くんだよ」


 キラトが憮然としたまま二人に言う。


「美人とむさい男……俺がどちらの言うことを重視するかいちいち説明せねばわからんかね?」


 シルヴィスの返答にリューべもうんうんと頷いていた。


「あら〜嬉しいこと言ってくれるけど、私はキラトのものなのよね」


 リネアは頬に手を当てて首を傾けた。この辺りの仕草は本当に美しく様になるものだ。


「そりゃ残念です」


 シルヴィスの軽口に全員が笑う。


「む〜」


 しかしヴェルティアが首を傾げながら難しい顔を浮かべた。


「あらら、ヴェルティアさん、冗談だからね」

「え、あ、はい!!」


 リネアがニッコリと微笑んで片目を瞑るとヴェルティアがハッとしたように返答した。


「なんだ、お前ボ〜とするなんて珍しいな」

「う〜ん、なんだか妙なんですよね」

「妙?」

「なんか……こう釈然としないような」

「はぁ? 何言ってんだ?」


 ヴェルティアの言葉にしてシルヴィスは首を傾げた。それを見ていた他の仲間達は二人に気づかれないように視線を交わし頷き合った。


「さ、とりあえず親父殿に会うか」


 扉の前に到着すると言い放った。気楽な口調であるが、シルヴィス達からすれば魔族を統べる実力者ということもあり、やや緊張の度合いを高めた。


 コンコン


 キラトは扉をノックする。


「入れ」


 中から返答があると扉がギギギ…という音を立てて開いていく。


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