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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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親子 ~ヴォルゼイスとシュレン~②

「そのような剣呑な雰囲気を発してどうした?」


 ヴォルゼイスは和やかにシュレンへと語りかけた。


「お聞きしたいことがあります」

「それは子としてかな? それとも神としてかな?」

「子としてです」


 シュレンの言葉にヴォルゼイスは小さく笑みを漏らした。


「そうか、それなら咎めるわけにはいかんな」

「父上はアルゼス達の蛮行を命じたのですか?」


 シュレンの問いかけをヴォルゼイスは笑みを消した。その姿は神々の絶対的支配者のものではなく父親としてのものであるようにシュレンには思える。


「命じてはいない」


 ヴォルゼイスの言葉にシュレンはホッした雰囲気を発した。


「だが、私は命じなかっただけで禁止もしていない」

「……!!」

「この意味はわかるな?」

「……はい」


 シュレンの声に苦いものが混じる。ヴォルゼイスの言葉は神族の長として責任から逃れるようなことはしないことの表明であった。だが、それはシュレンにとって父の魂が穢れきってない事の希望を持つには十分な答えである。


「シュレン、お前には告げておくことがある」

「……なんでしょう?」

「私は魔族の重鎮暗殺をソールに、エルガルド帝国皇帝ルドルフ四世の暗殺をディアンリアに……そして魔王ルキナの暗殺をシオルガルクに命じた」

「なっ!!」


 ヴォルゼイスの言葉にシュレンは驚きの声をあげた。父が暗殺を決意したのも驚いたが、師であるシオルが暗殺を受けたという事に衝撃を受けずにはいられなかった。


「お、お師匠様が……暗殺を……受けた?」

「ああ、私のためにな」

「そ、そんな……バカな。いや、そもそも……なぜ暗殺など?」


 シュレンの声に困惑がこもる。シュレンの知るヴォルゼイスは暗殺という手段をとることはなかったからだ。


「簡単な事だ。シルヴィス達がそれほどの相手だからだ」

「な……」

「お前も手合わせしたのだろう。あの異世界の怪物達とな」

「それは……」

「ならばわかるだろう。あの怪物達の実力はこちらも命をかけねばならぬほどの相手だということだ。シオルガルクは私と同意見だ。だからこそ、あいつは私の策に手を貸すことにしたのだ」

「……それほどの相手なのですね」

「そうだ。シルヴィス達との戦いはそれほど苛烈なものになる」

「だから暗殺ですか?」

「そうだ」


 ヴォルゼイスの断言にシュレンは言葉を発することが出来ない。ここでヴォルゼイスを外道と罵ったところでヴォルゼイスの意思を覆すことは出来ない。


「しかし、両陣営のトップを暗殺すれば間違いなく両陣営はぶつかり……まさか、父上はそれを狙って?」

「そうだ。魔族と人族との戦争を引き起こすことで魔族の勢力を削ぐ。シルヴィス達を確実に討つための前準備だ」


 ヴォルゼイスの言葉にシュレンは何かしら引っかかりを覚えた。真にシルヴィスを討ち果たそうとするのならば、シルヴィス達と魔族の離間策をとらないのは何故なのかという疑問が生じていた。


(父上の本当の目的は別にあるのではないか? そしてお師匠様もそれを知っているのでは……?)


 シュレンの心に生じた芽吹いた疑念は急速に成長していく。


「どうした?」


 ヴォルゼイスはシュレンの様子に訝しんだ。


「いえ、暗殺には反対です。……ですが父上の覚悟、決定を蔑むことはしません」

「……そうか」

「シルヴィス達との戦いには私も参加します」

「わかった。お前(・・)には正々堂々とした場で戦ってもらうことになる」

「……承知しました。それでは失礼いたします」


 シュレンはヴォルゼイスに一礼するとクルリと踵を返して歩き出すが、二歩目で止まるとそのままヴォルゼイスに声をかける。


「あ、そうだ。八戦神(オクトゼルス)と天使達の死体は天界に埋葬することはせずに人界で焼却処分とさせてもらいました」

「そうか」

「シルヴィス達がいつ天界に分身体を送り込んでくるか分かりませんので、事後承諾となりますがご了承ください」

「わかった。お前の判断にまかせよう」

「ありがとうございます」


 シュレンは振り返ることなく。そのまま歩き出し玉座の間を出て行った。


「シュレン……私の真の目的を知ればお前は私を軽蔑するかも知れんな。巻き込まれる者達にとっては私こそが唾棄すべき存在であろうな」


 ヴォルゼイスは自嘲の笑みを漏らした。


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