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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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魔族との邂逅⑭

「まさか、気づかれるとはね」


 キラトはやれやれというような雰囲気を出しながら言った。キラトの声にはシルヴィス達への称賛が含まれており、逆に自分達の擬態に自信を持っていたことを感じさせた。


「ええ、キラトさんが剣を振るう瞬間に擬態を解きましたよね。本当に一瞬でしたけど、あの瞬間だけ身体能力が別次元でしたね」

「一瞬だけだったからバレないと思ったんだけどな~」


 キラトは苦笑いしつつ返答した。


「本当にすごかったですね~。あれどうやったんですか?」


 そこにシリアスな空気を破壊することにかけて天才的な力を発揮する爆走娘であるヴェルティアが純粋な疑問をキラトに投げかけていた。


「ああ、俺たちは人間の姿を保つために自分の内部に魔力を注いでいるんだ」

「つまり、魔力の供給を止めてしまえば本来の姿になるというわけなんですか?」

「簡単に言えばそんなところだ。バレることはないと高をくくってたな。君達がもう一体の対処があるから大丈夫と思ったんだよなぁ~」

「はっはっはっ!! 当てが外れてしまいましたね~」


 ヴェルティアの高笑いを全員が見ているがそこに非好意的なものは一つもない。シルヴィス達もだが、キラト達(さざなみ)もだ。


(ヴェルティアのこういう所ってすごいよな)


 シルヴィスは心の中でそう呟く。ヴェルティアのこの天真爛漫さは駆け引きなどではないために、シルヴィスやキラトのように腹芸をするような者達には時として大きな武器となる。

 これはヴェルティアが生まれついての強者であり、シルヴィスは弱者から強者に駆け上がってきたという環境によるものだ。


「あれ? ということはですよ。漣のみなさんは本当の姿があるということですよね?」

「ああ、そういうことだ」

「ここまで来たら、もう隠す必要はないですよ。本当の姿を見せてくださいよ」

「そうだな」


 キラトが仲間達に視線を向けると、漣のメンバー達は即座に頷いた。シルヴィスやヴェルティアの反応が好意的なものであったために正体を明かしても問題ないと判断したのだろう。


 キラト達の姿が即座に変わる。


 キラトは側頭部に羊のような角が生え、眼も赤く変わった。姿形の変化はそれぐらいであるが放たれる雰囲気が大きく変わった。放たれる雰囲気が人間の放つものとは明らかに異質な禍々しいものへと変質したのだ。


 リネアは髪の色が銀色へと変化し、肌の色は褐色のモノへと変わった。そして耳のとがりはダークエルフと呼ばれる種族であることをシルヴィス達は察した。


 ムルバイズは肌の色が薄緑へと変化した事以外はほとんど変わらない。


 孫娘のジュリナも同様で肌の色が薄緑になった事以外はほとんど変わってない。


 ある意味、一番変わったのはリューベであった。筋骨逞しい偉丈夫であったリューベは十三~五歳くらいの少年くらいで身長も人間の姿の頃よりも頭二つ分くらい小さくなっていた。そして額に一本の角が生えている。


「キラトさん達は魔族と言うわけですか」


 シルヴィスの問いかける声にまったく気負うものは一切ない。まるで「もう昼飯は食べたのか? まだなら食いにいかないか?」という気安さだ。


「ああ、俺達全員が魔族と呼ばれる種族だ」

「そうはいっても、肌の色や角とかも違いますよね」

「まぁ正直な話、魔族にとってその辺のこだわりはないからね」

「そうなんですか? 人間では肌の色とかで結構差別的な扱いをすることがありますね」

「あ~人間ってそういうところあるよな」

「ですねぇ~」


 シルヴィスとキラトはうんうんと互いに頷きあっている。


「みなさんが魔族と言うのは分かりましたが、どうしてそもそもみなさんは人間に化けてラディンガルドで冒険者をやってるんです?」

「まぁ簡単に言えば、スパイだな。ラディンガルドを拠点に魔族の領域(フェインバイス)に侵攻するのが人間のやり方なんだよ。だからラディンガルドで戦争の雰囲気が漂えば、魔族の領域(フェインバイス)への侵攻の可能性が高いわけだ」

「なるほど、自衛行為の一環というわけですね」

「そういうこと。こちらとすれば別に人間と戦争なんかしなくてもいいんだ。いつもあっちから攻めてくるんだよ。勝手に侵攻しておいて、こっちが抵抗して蹴散らすと被害者の席に座るんだよ」

「ああ、加害者のくせに被害者ぶるんですね。クズですな」

「そうそう、面倒くさい事この上ない」


 シルヴィスとキラトの会話の様子はまるで古くからの友人のようだ。キラトには色々なしがらみがあり、知性派のように振る舞っているが本来のキラトは気さくな性格なのだ。もう正体もクソもないという状況のために素の性格をだしているのだ。


「そういえば、キラトさんは貴族なんですか? リューベさん達が様付けしてましたけど」

「ああ、俺は王族なんだよ。テレスディアの一門だ」

「あ、そうなんですね。それなら魔王……陛下でいいのかな?と面識あるわけですね」

「もちろんだよ」

「それだけの立場なら神の情報を手に入れる事も可能ですか?」

「ん?神の情報?」


 神の情報という言葉に反応したのはキラトだけでなく、漣のメンバー達もである。


「ヴォルゼイス、ディアンリア、シオルの情報ですね」

「それを知ってどうする?」


 キラトの問いはシルヴィスへの興味に満ちている。


「もちろん、神達をしばき倒す」


 シルヴィスはニヤリと凄みのある笑みを浮かべて言い放った。



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