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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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魔族との邂逅⑩

 一週間の準備期間を経て、魔族の領域(フェインバイス)へ向かう日となった。


 グラクレイトの建物の前で(さざなみ)の五人と合流すると、仕入れていた二台の馬車のうち、片方を(さざなみ)へと引き渡した。


「いいのですか?」


 キラトは引き渡された馬車を見てシルヴィスに問いかけた。シルヴィス達の馬車は箱形のものであるが、(さざなみ)の馬車には屋根はついているが、四方の壁はついていない。


「はい。みなさんには魔物が出た時に即対応してもらいますので、屋根しかありませんがそこはご容赦ください」

「とんでもない。俺たちは徒歩のつもりでしたので、ここまでご配慮いただけるとは、感謝しかありません」

「気に入っていただいてよかった」

「あの、よろしいですか?」


 シルヴィスとキラトの会話にリネアがおずおずと入ってきた。


「なんでしょう?」

「あの、馬車を曳く馬なんですが……あれ、馬ではないですよね?」

「はい。あれは私の術です」

「シルヴィスさんの?」

「はい」


 シルヴィスは答えると同時に左の手のひらの上に直径十センチほどの球体を生み出すと地面に放った。

 地面に落ちた球体はボコボコとうごめき出すと跪く兵士の姿になった。


「ほぉ、これは見事なものじゃな」

「お爺なら出来る?」

「出来ぬとは言わぬよ」


 ジュリナの問いかけにムルバイズがニヤリと笑うとシルヴィス同様に球体を作り出すと地面に放った。

 するとシルヴィス同様に一体の兵士が出来上がった。


「さすがですね」

「お主もな」


 ムルバイズはシルヴィスにニカッと笑いかけた。無邪気な笑顔にシルヴィスも自然と表情が和らいだ。


「ムルバイズさんも作れるということは、(さざなみ)の方の馬車は次はよろしく頼みます」

「心得た」


 シルヴィスの提案にムルバイズに笑った。


「お爺が楽しそうなのは久しぶりに見るね」

「ああ、ムルバイズ翁も自分と同レベルの魔術談義が出来ると思ってるのかもな」

「うん。教務院でも中々出会えなかったものね。同じ魔術でもお爺は魔力操作が専門だし、私は四元素操作だもの。微妙に専門が違うから談義というわけにはいかないもの」

「そうだな。キラト様もリネア様も魔術の実力はずば抜けてるけど、さすがにムルバイズ翁ほどはな」

「そこに現れたシルヴィスさん。これは嬉しいよね」


 ジュリナとリューベはムルバイズの嬉しそうな表情を見て互いに頷いた。


「しかし、あの人達って何者なんだろうな」

「今さらね」


 ジュリナが苦笑いしながらリューベへ返す。リューベは頭を掻きながら続けた。


「といってもな財力が飛び抜けてるだろ。白金貨五十枚という破格な報酬、成功報酬はさらに白金貨五十枚、そして今度は俺たちの馬車まで支給だ」

「まぁ単なる金持ちなわけでないのはわかるわ。魔族との交渉って一体どんな立場なのかしらね。エルガルド帝国の外交官かしら?」

「いやぁ、それはないんじゃないか」

「どうして?」

「国の外交を担うような立場なら、俺たちを直接雇うようなことはしないよ。証拠にキューラー侯爵が動いてる様子が一切ないだろ」

「確かにそうね……。となると別の国ということかしら?」

「魔族と手を組んでエルガルド帝国を滅ぼす……う~ん、いまいちピンとこないな」

「そうね。エルガルド帝国しか救世主を召喚できないという話だから、魔族との戦いにマイナスよね」

「それもどこまで本当かわからないよ。エルガルドの支配者層が勝手に言ってるだけかもしれないしな」

「あんたって年の割にはしっかりしてるわよね」

「年の割って……ジュリナと同い年(・・・)だろ」

「まぁ、()の私達を見ればとてもそう思えないわよね」

「まぁな」


 ジュリナとリューベはムルバイズがシルヴィスとの会話を切り上げ、離れていったので出発が近いと判断して馬車へと向かった。


「シルヴィス様、そろそろ出発するから乗ってくれ」

「はい」


 御者台に座るユリがシルヴィスを呼ぶとシルヴィスは(さざなみ)に一礼すると中に乗り込んでいった。


「それじゃあ、行くか」


 キラトの言葉にリューベは頷くと馬車を走らせた。

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