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無能判定①

『$%$#&&’’)(!!』

『&’()~~|*`}<!!』

『<@~|¥¥%$#!!』


 シルヴィスの目の前に十数人の人間がいた。


(ここは……どこだ?)


 シルヴィスは歓喜に沸く人々を観察しながら、周囲を確認する。


 シルヴィスの立っていた場所は、小規模な劇場ほどの広さで、白い大理石で作られており、雰囲気的には神殿のような雰囲気のある空間である。

 その空間の片側にある魔法陣の真ん中にシルヴィスの他に三人の男女がいた。


 一人目はシルヴィスのような黒髪黒目の少年、紺色のブレザー、左胸に何らかの模様の入ったワッペンが縫い付けられている。秀麗な容姿をしている少年だ。さすがに自分に降りかかった事態に対して戸惑っているようだ。


 二人目は赤髪を肩まで伸ばした十七、八の少女だ。

 黒いローブを身につけており、自分の背丈以上の杖を持っている。その杖の先端に赤い魔石が埋め込まれている。魔石からはそれなりの魔力が放たれているのでこの少女が魔術師であることを示している。

 この少女の容姿も整っており、美少女に分類されるのは間違いない。

 

 三人目は金髪を短く刈り込んだ筋骨逞しい二十代半ばくらいの男性だ。背中に大剣を背負い金属の鎧を身につけている。その格好から戦いの世界に身を置いているのは間違いないだろう。歓喜に沸く十数人に対して警戒を怠っていない。


『””#%?』


 黒髪の少年がおずおずという雰囲気で歓喜に沸く人々になにやら問いかけている。


 少年の問いかけに一人の少女が進み出て、安心させるかのように微笑んだ。


『$#”:*>@”$%』


 少女はそう言うと優雅なカーテシーを行った。


(会話をしている……見たことのない作法だな。それに、この魔法陣の術式……初めて見る術式だ)


 シルヴィスはやりとりを見ながら少しずつ状況を把握していく。赤髪の少女と金髪の男を見ると会話の内容をきちんと認識しているのは間違いない。


(言語を認識していないのは俺だけのようだな。俺と似た立場っぽい他の三人は会話が成立しているというのに俺だけは違う……あれが原因か?)


 他の三人と違うことをシルヴィスは察し、原因が自分の体に入ってきそうな不快なものを排除した事ではないかという結論に至った。


あれ(・・)には、何らかの意識を感じたな。こいつらの中にいるのか?)


 シルヴィスの視線は三人に注がれている。もちろん、あからさまに見るような真似はせずにさりげなくこの場にいる者達を観察している。魔法陣にいる三人は何かしらの会話を行っていた。


(帯剣している者、防御陣を形成している者もいる。あの女を守るように警戒している……あの女はどうやら地位が高い。逆に言えばあの女を人質にすれば何とかなるか)


 シルヴィスは中々外道な事をさらりと考えている。ただシルヴィスにしてみれば訳の分からん連中にこちらの意思を無視して連れてこられた事を考えれば、警戒するのも当然だ。


(あ、そうだった)


 シルヴィスは自分の迂闊さに呆れながら術式を展開する。


 展開した術式は神の翻訳者(ジーンリング)。異なる言語を自動的に翻訳して認識してくれるものであり、こちらの言語も相手に翻訳されて相手に認識される。

 

(まずはこれだったよな。やっぱり、ある程度は動揺していたみたいだ)


 シルヴィスは苦笑をかみ殺しながらそう考えた。周囲の様子を観察するなど後回しでも良かったという思考からだ。

 シルヴィスはそう考えて反省をしていたが、いきなり言葉が通じないということを認識して、即座に神の翻訳者(ジーンリング)を展開をすることを選択することが出来るものは少数派であろう。


「魔王の名はルキナ=リーク=テレスディア。恐るべき破壊の権化……」


 少女が重々しい口調で魔王の名をこちらに伝えていた。ただシルヴィスが言葉を認識して僅かなので、前の情報が抜けているのだ。


(いきなり魔王の名前を出されてもな。知らんがなという感想しかわかんな)


 シルヴィスは冷静にやりとりを見ている。


 シルヴィスの感想も当然で前情報が抜けている段階で魔王の名前を聞かされても心が動かされるわけではないのは当然だ。


「魔王は配下の魔物を使って人間を滅ぼすために侵略を始めました。もちろん、私達も抵抗をしていますが、魔王の力はあまりにも強大です」

(なんか胡散臭いんだよな)


 少女のしおらしい態度にシルヴィスは皮肉気に思う。


 シルヴィスは特段、物事を斜に構える性格ではないのだが、この少女の言葉に対してはどことなく胡散臭さを感じていた。


(黒髪のやつ、すっかりこの女の言っている事を信用してるな。この女が真実を話している保証なんかどこにもないし、事情のすべてを知っているかどうかもわからんのにな)


 シルヴィスは他の二人にも視線を移すが、他の二人も黒髪の少年よりは疑っているようではあるが、シルヴィスよりかは警戒感が薄れているようだ。


(俺が神の翻訳者(ジーンリング)を使うまでにどんなやりとりがあったことやら)

「私達は女神に助けを求めました。その時に女神ディアンリア様の神託がくだったのです」

「女神様が……」

「はい、女神様は異世界より勇者を召喚する。その者達が魔王を打ち倒すであろうと……」

「それが俺達……ということですか?」


 少女の言葉に、黒髪の声はどことなく興奮をはらんでいるようだ。


(おいおい、こいつ何を喜んでるんだ? 今までの話をきちんと聞いていたのか? これから何の恨みもない奴と殺し合いをさせられるんだぞ)


 シルヴィスは会話にゲンナリとしている。黒髪以外の二人もどことなくやる気になっているようだ。


「一つ良いですか?」


 シルヴィスが声をげると全員の視線がシルヴィスへと集中した。



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