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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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魔族との邂逅①

「さて、路銀も手に入れたことだし行くとするか」


 シルヴィスがシオルのおいていった大量の金貨を神の小部屋(グルメル)へと納めてからヴェルディア達に向かって言った。

 

「神様の所にカチコミってやつですね!! くぅ~~腕が鳴りますねぇ!!」

「お嬢、もう少し血の気を抑えてくれよ。さすがにそこまで好戦的だと引いてしまうって」


 ヴェルティアの嬉しそうな言葉に即座にユリのツッコミが入る。


「な、何を言ってるんですか!! 私は血の気は決して多くないですよ。私は平和的解決を誰よりも望んでいるのです!!」

「ヴェルティア様はごまかそうとするときに、勢いで乗り切ろうとするところがあります。そう、今みたいに語気が妙に強くなります」

「デ、ディアーネまで何を言っているのです!! 私は平和的解決を望んでいるといったでしょう!!」

「お嬢……カチコミなんて言葉使って平和的に……なんてどう考えても通らないだろ」

「そ、そんなことありません!! シルヴィス、カチコミと平和的解決というのは両立するはずです。お父様も時として戦うことも大切だと言っていましたよ」

「その考え自体は否定はせんがな」

「ほら!! やっぱりそうでしょう!! さぁ神様の所にカチコミですね!! 行くとしましょう!!」


 スパーン!!

 

 シルヴィスがヴェルティアのあたまをはたいた。ちなみに音はかなり大きかったのだが、実際は大した威力では無い。音だけを際立たせるはたき方だ。


「あのな。初手からカチコミのカードを切るわけ無いだろうが!!」

「え~!! 多少の危険は承知の上で飛び込みましょうよ。大丈夫です!!シルヴィスは一人ではありません。私達がついてます!!」

「あのな。シオルクラスの実力者が何人いるかもわからんのに突っ込めるか」

「あ~言われてみればそうですね。さすがはシルヴィスですね。私の考えにも抜けがありますね~うんうん。でもカチコミでないと言うのならどこにいくんです?」


 ヴェルティアはうんうんと頷きながらシルヴィスを称賛する。色々と突っ込みたいところがあるが、ここでツッコミを入れると話が堂々巡りになるためツッコミを入れないでおく。


「魔王に会いにいこうと思ってる」


 シルヴィスの言葉にヴェルティア達はまったく動揺しない。アインゼス竜皇国において、魔族は敵対勢力ではない。むしろ友好国と呼んで差し支えない間柄なのだ。


 これはアインゼス竜皇国が超大国である故の余裕と言えるだろう。アインゼス竜皇国は全国家の盟主的地位にあるが、支配者という位置づけではない。代々の竜帝はその強大な力を極力振るうことはしない。


 その理由は、“面倒だから”である。竜皇国がその気になれば世界を征することも何の問題も無い。だが、その後が面倒なのだ。竜皇国は支配した民を飢えさせない責任を負うことになる。代々の竜帝は他国を支配するような事はせずに、頼られれば支援はするが、絶対に対価を受け取ることにしているのである。

 施しは依存者を生み出し、やがて依存は寄生となっていく。寄生者は施しにすぐになれ要求がエスカレートする。それを支えないといけないというのは正直な話、アホらしいという考えになる。


 そのため代々の竜帝は他国を制圧することは決してしない。もちろん、時にはその絶大な力を振るうことにまったく躊躇いはない。礼儀を守る者達には礼儀を守り、敵意を向けてくる者には容赦なく鉄槌を下す。アインゼス竜皇国は徹底的な相互主義を取っている国なのだ。


 相互主義というのはシルヴィスも同じである。敵には容赦しないというシルヴィスの思考は相互主義からくるものなのだ。

 もし、ラフィーヌがシルヴィスを追放するにしても、きちんと理由を話し、適切な路銀を与えておけば良かったのだ。そうなっておけばシルヴィスは自力で元の世界に帰還したことだろう。


 元々、シルヴィスも次元の壁を越えることは可能なのだ。それをしなかったのは,星の数ほどもある他の世界から元の世界を探すのが限りなく面倒だったからに過ぎないのだ。


「シルヴィス様、この世界では魔王とはどのような立場なのですか?」

「どうやら、神の敵対者で人類の敵らしいですよ」


 シルヴィスの返答に反応したのはヴェルティアであった。


「なるほど、わかりました!! シルヴィスは魔王に会って神達の情報を手に入れるつもりなんですね。場合によっては手を組むというつもりなんですね」

「ヴェルティア……お前、よくわかったな」

「そりゃ、私は優秀ですからね~。これくらいの事は余裕で考えつくのです!! えっへん!!」


 シルヴィスの賛辞にヴェルティアは鼻高々という感じだ。


「お嬢って時々冴えてるよな~」

「そうですね。まぁ、思い込みさえひどくない時は頭脳明晰ですからね」

「そうなんですよ!! 私は冴えてるのですよ~,二人はやっぱり私の良き理解者ですね~」


 ユリとディアーネは何気に酷いことを言うのだが、ヴェルティアはその持ち前のポジティブシンキングを発揮している。


「よし、それじゃあ。早速出発しましょう!!」

「ああ、そうするか。おい」


 シルヴィスが声をかけたのは、軀の生き残りであった。ジルヴィスによって天使達に立ち向かわされた軀達はあっさりと蹴散らされたが生き残っていた者もいたのだ。生き残った軀の数は三人。その中に軀の頭領であるエリックもいた。


「は、はい!!」


 エリックは震える声でシルヴィスに返答した。


 軀達はシルヴィスが恐ろしくて仕方がなかった。シルヴィスの自分達に対する扱いを考えれば恐れるなというのは不可能というものである。


「お前達もついてこい。慈悲の心で三十分やろう。旅支度をしろ」


 シルヴィスの言葉にエリック達三人の表情が凍った。

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