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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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八つ足戦⑤

「た、隊長!!」

「ひぃ!!」

「そ、そんな」


 ウォイルがシルヴィスに敗れた事により八つ足(アラスベイル)達は恐慌状態になった。

 それだけ、ウォイルという男は八つ足(アラスベイル)達の精神的支柱となっていたのだろう。


「さ、どうする?」


 シルヴィスは八つ足(アラスベイル)達の動揺を見逃すようなことはしない。殺気と共に放たれた言葉は八つ足(アラスベイル)達の思考を硬直化させた。


「そいつはお前達の中でも強者だったのだろう? その強者であっても俺にかすり一つ傷負わせることも出来なかった……」


 シルヴィスの言葉を八つ足(アラスベイル)達は黙って聞いている。


「数を頼みにするのは間違っていない。俺の体力も無限では無いからな」


 続くシルヴィスの言葉に八つ足(アラスベイル)達は顔を見合わせた。その表情には明らかな困惑がある。

 シルヴィスの意図が全く読めないのだ。


「問題は俺の体力がいつ切れるかだ。後になればなるほど俺を討ち取れる可能性が上がるぞ。だが早くかかれば、かかるほど死ぬ可能性が高くなる」


 シルヴィスはニヤリと嗤って言い放った。


 シルヴィスの意図を察した八つ足(アラスベイル)達は、ギリッと噛みしめた。


 シルヴィスは八つ足(アラスベイル)達に揺さぶりをかけてきているのだ。ウォイルをあっさりと撃破したことで、シルヴィスの強さは自分達と天地ほどの開きがあることは理解している。

 それ故に生じた恐怖を利用されていることは明らかであった。そして最もやっかいなのは、その意図を察しておきながらも破ることが容易でないのだ。


 つまり、最初にシルヴィスに襲いかかる者から死ぬ可能性が高い。誰だって火中の栗を拾いたくなどない。そのため誰がまず襲いかかるかという事で逡巡してしまう。それがシルヴィスの狙いなのだ。


「さて、最後の警告だ。ここで去るというのなら追わない。だが、去らないというのなら殺す」


 シルヴィスがそう言って一歩踏み出すと八つ足(アラスベイル)達は一斉に下がった。

 これは完全にシルヴィスがこの場を掌握している何よりの証拠であった。


(ん?)


 その時、シルヴィスに数十発の光の矢が放たれた。シルヴィスは左手に魔力を集めると放たれた光の矢の軌道をずらした。シルヴィスにより軌道をずらされた光の矢は周囲の八つ足(アラスベイル)達へと向かい四人の体を貫いた。


「やめろ!!」

「同士討ちになる!!」


 周囲の八つ足(アラスベイル)から制止の声があがるが、術者達は構うことなく光の矢を放ち続ける。

 八つ足(アラスベイル)達は新たな災難をさけるために距離をとろうとした。


「下がるな!! 何をしている、かかれ!!」


 そこに苛烈な檄が飛ばされた。檄を飛ばしたのはサリューズだ。ウォイルが敗れ、この場が掌握されたために、無理矢理流れを取り戻すために最前線に出てきたのだ。

 サリューズは全体の指揮をとる立場にあるが必要とあらば最前線に出ることも厭わない。そのため、八つ足(アラスベイル)の間では絶対的な信頼がある。それはすばらしいことなのかも知れないが、この場合は間違いなく悪手であった。


 シルヴィスにしてみれば、わざわざ自分の前に現れてくれたのだから、探す手間が省けるというものである。


 しかし、サリューズの登場により八つ足(アラスベイル)達の士気が再び上昇したのは間違いない。


 八つ足(アラスベイル)達はまたも一斉に襲いかかった。それは先程までの闇雲なものではない。サリューズの登場により統率のとれたものへと変わったのだ。


(ほう、あいつの登場で動きが変わったな。俺の死角からの攻撃が一気に増えた)


 シルヴィスは襲いかかる八つ足(アラスベイル)達をいなしつつ、致命的な一撃を加えていき、着実に斃していってはいるが、斃す速度は明らかに落ちている。先程までなら二人を斃すことが出来るところで死角からの攻撃が入り、そちらに対処する必要があり、一手どうしても遅れてしまうのだ。


(指揮能力は確かだ……では個人の戦闘能力はどうかな?)


 シルヴィスの首を狙って放たれた横薙ぎの斬撃を、身を屈めて躱すと同時に太ももを切り裂いた。


「ぐぅ!!」


 瞬間的な痛みが発し、そちらに意識の向いた八つ足(アラスベイル)の首を、魔力を込めた虎の爪(カランシャ)による斬撃で斬り飛ばした。斬り飛ばされた首は放物線を描いて地面に落ちる。

 シルヴィスは八つ足(アラスベイル)の首を斬り飛ばした勢いそのままに回転し、魔力で形成したナイフを左手で投擲する。


「ちっ」


 サリューズは舌打ちしつつ投擲されたナイフを抜剣すると同時に打ち落とした。


(ほぅ……あれを打ち落とすか)


 シルヴィスとすればサリューズの技量を称賛したくなった。首を斬り飛ばすという敢えて残虐な殺し方をしたのは、恐怖を与えるためと斬り飛ばされた首に意識を向けるためであった。

 その状況を作ってからの一連の流れの中での投擲、しかも一切殺気をサリューズに向けていないという必殺の一撃だったのだ。


 それをサリューズは打ち落としたのだから、その技量は決して低いものではないことは明らかであった。


 だが、剣で払ったサリューズに生じた隙をシルヴィスは見逃さない。即座に次の一手をとる。シルヴィスはそのままサリューズとの間合いを詰めると、跳躍しそのまま跳び蹴りを放った。


 ビギィィィィ!!


 サリューズは剣で受けるには間に合わないと判断すると剣を捨て、シルヴィスの蹴りを両手を交差して受けた。その威力は凄まじくサリューズは大きく吹き飛びながらかろうじて着地する。


「頭領!!」


 サリューズが攻撃された事に対して八つ足(アラスベイル)達の間から怒りの声が上がったが、同時に声に含まれていた感情は安堵であった。


 サリューズが並の腕前であれば、今の一撃で間違いなく命を失っていたことが明らかだったからだ。


「こ、これが黒呪(ジステグマ)の力というわけか」


 サリューズの言葉にシルヴィスはぴくりと反応する。


黒呪(ジステグマ)? なんだそれは?」


 シルヴィスの問いかけにサリューズは怪訝な表情を浮かべた。 

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