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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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神魔大戦 ~魔都強襲④~

「さぁかかってきてください!!」


 ヴェルティアの宣言に全員が呆気に取られていた。ヴェルティアの開けた孔からシルヴィスが姿を見せる。


「お前な、どうして魔都(エリュシュデン)がいきなり攻められているのかとか気にならないの?」


 シルヴィスの呆れた声に対してヴェルティアはやれやれというような表情を浮かべた。


「いいですかシルヴィス、そもそも私はそんなこと気にする必要するはないのです!!」

「お、おう」

「大体、先ほどシルヴィスも言ったではないですか。私が苦手なことはシルヴィスがやってくれる。シルヴィスが苦手なことは私がやると」

「要するにこの事態の考察は俺がやると言いたいの?」


 シルヴィスのため息をつく寸前の表情で問いかけるが、ヴェルティアはニッコニコと無駄に良い笑顔を浮かべた。


「すばらしい!! さすがはシルヴィスです!! 私の言いたいことを即座に理解するというすばらしい能力です!!」


 ヴェルティアは嬉しそうに言い放った。


「き、貴様ら!! ふざけるのも大概にしろ!!」


 そこに完全に置いてけぼりを食った形となった神が怒りの爆発させた。


「あっちょっと待ってください。今は私が話しています。あなたの会話よりもシルヴィスとの会話の方が遥かに大切(・・・・・)なんです」

「な……」

「おおっ!!」

「こ、これはひょっとして……ディアーネ」


 ヴェルティアの返答に神は二の句が告げないという表情を浮かべ、ディアーネとユリは顔を輝かせている。


「シルヴィス様!! お聞きしたいことがあります!!」


 ディアーネがシルヴィスに妙に力ある声で尋ねた。


「な、なんですか?」

「お二人がここに戻られるまで要した時間は四日……いえもうほぼ五日になりますが、その間……に愛を交わされたのですか?」

「は? 五日?」

「ええ、これほどまでの長い間、ヴェルティア様と二人きりでいらしたのです。当然ながら何もなかったと考えるのは不自然です!!」


 ディアーネの言葉にユリもウンウンと頷きながらディアーネの後押しを行う。


「ちょ、ちょっと待ってください。俺が亜空間に閉じ込められていたのはわずか一、二時間ですよ? 五日も亜空間で過ごしてなんかいませんよ」

「ふむ……シルヴィス様は一、二時間しか亜空間で過ごしてはいないと……」

「そ、そうです。だよな?」

「ええ、大体それくらいですよね」


 シルヴィスの問いかけをヴェルティアが肯定する。


「なるほど……お嬢もシルヴィス様もそんなに二人だけの時間が楽しかったというわけか」

「え?」


 ユリの言葉にシルヴィスが呆気に取られた返答を行った。ディアーネはユリの言葉は最もだという表情で頷いている。


「お嬢、楽しい時間は過ぎるのが早いと思ったことはない? その反対に楽しくない時間は過ぎるのが遅いというのは?」

「え? そりゃありますよ」

「まさしくその通り!! お嬢もシルヴィス様も二人きりの時間が相当に楽しかったということだよ!!」

「そ、そうだったんですか!! 納得です!!」

「いや、そんなわけないだろ!! いくらなんでも五日も経ってるなんておかしいだろ!! 普通に考えて時間の流れに差があったと考えるべきだろう」

「いえ、そうとばかりは言えないと思います」

「ディアーネのいう通りです。お嬢は納得しています!! ということはやはり……そういうことです!!」


 ユリの力強い言葉にシルヴィスは完全についていけないという表情を浮かべている。


「き、貴様ら!! いい加減にしろ!!」


 完全に無視された形となった神はついに激昂し斬りかかろうとした瞬間に側頭部を矢で貫かれそのまま絶命した。射たのはもちろんリネアだ。


「遅いですよ。結構時間があったでしょう?」

「ふふ、ごめんなさい。あなた達の掛け合いが面白かったので、つい遅くなったわ」

「キラトといい、リネアさんといい……当代の魔王夫婦は良い性格をしてますよ」

「ふふ、良い状況はきちんと活用しないとね」


 リネアはそういうとニッコリと笑う。その様子はいたずらが成功したことを純粋に楽しんでいるようであった。


「さて……」


 リネアは表情を引き締めると一歩進み出て声を張り上げる。


「みな、聞きなさい!! 我が夫キラトの友にして、神々の最も恐れる異世界の強者が我らの応援に駆けつけた!!」


 リネアの言葉を守備隊達は戦いながらも聞き逃さないようにしている。声には発していないが、兵士たちから発せられる熱量が上がったようにシルヴィスには思われた。


「神々は彼らに勝てぬ故にこの戦いに参加させないように策を張り巡らしたのだ!! その強者がここにいる!! そう我らの勝利は既に確定した!! さぁ、神々に思い知らせようではないか!!」

『ウォォォォォォォ!!』


 リネアの檄に兵士達の士気はもはや爆発したと言って良い。士気が爆発的に高まった兵士達は猛然と天軍へと攻撃を開始した。

 天軍への攻撃は全く容赦のない苛烈なものとなり、奴隷兵士(リュグール)達のみならず、天使達も次々と討たれていった。


(リネアさんって兵士の士気を上げるのすごい上手いな……この戦いが終わったら、神格化されそうだな)


 シルヴィスはリネアの士気の高めた手腕に内心舌を巻いている。要所要所で士気を高めることができるのはやはり上に立つ者に求められる能力であるのは間違いない。


「よし!! 盛り上がってきましたね!! さぁ我々も行きますよ!!」


 ヴェルティアが城壁の上に立って両手を腰に当てて高笑いするとひょいと飛び降りる。


「おっと」

「ひゃう!!」


 しかし、ヴェルティアが飛び降りる前にシルヴィスがヴェルティアの襟首を掴んで城壁上に連れ戻した。


「な、なんですか? びっくりしましたよ」

「いいか、あの転移門は壊すなよ」

「と、当然ですよぉ……」

「うん、わかりやすい不安を見せるな。いいか絶対にあの転移門を壊すなよ」

「あ、当たり前ですよ!! ですけど……勢い余るかもしれませんよ?」

「いや、お前ほどの実力者なら転移門を壊すことなく神を斃すことはできると俺は信じているぞ!!」


 シルヴィスの言葉にヴェルティアは顔を輝かせた。


「任せてください!! この私にかかれば転移門を壊すことなく彼らを蹴散らすことなど容易なのです!! さぁ行きますよぉ!!」

「おう!! いくぞ!!」

「はい!!」


 ヴェルティアは元気よく答えると再び壁上に立ち何の躊躇いもなく飛び降りた。


「それじゃあ、リネアさん、みなさん行ってきますね」

「はい。行ってらっしゃい」


 シルヴィスの言葉にリネアはニッコリと笑って返答するとシルヴィスもヴェルティアに続いて壁上から飛び降りた。


「それじゃあ。私達も行きましょうか」

「そうだな。二人だけで十分だと思うけど……行こうか」


 ディアーネとユリも飛び降りていった。


 ディアーネとユリは既に天軍を薙ぎ払うヴェルティアとシルヴィスの姿がうつっていた。


「てぇい!!」


 ヴェルティアは襲いかかってくる奴隷兵士(リュグール)を薙ぎ払いながら、どんどん狙いを定めた神へと向かっていく。


「ヒィ!!」


 自分に向かってくる美少女の形をした天災に神が顔を引き攣らせた。


「くそ……」


 ギョギィィィィ!!


 ヴェルティアの右拳がまともに神の胸部に命中すると骨の砕ける異様な音が響き渡り、神が凄まじい速度で吹き飛んでいった。その際に奴隷兵士(リュグール)や天使達を巻き込みながら吹き飛んでいき、地面に転がった時には既に神の姿は生前(・・)のものではない。


「ひ……ば、化け物……」


 ヴェルティアに何の抵抗もできずに神が殺されたことを知った天使達は明らかに狼狽した。自分達よりも遥かに強い神族がただの一撃で殺されたことに狼狽えないはずはない。


「ひ……お、俺はもう嫌だ!!」

「お、俺もだ!! あんな化け物と戦いなんて冗談じゃない!!」


 天使達の中から恐慌の声が発せられた。それはあり得ない行動であった。天使は神に絶対服従であり、たとえ死んでこいという命令であっても反逆するようなことはなく易々諾々と付き従う。それが天使の本能なのだ。


 だが、ヴェルティアのあり得ないレベルの実力が天使の本能ですら覆すほどの恐怖を天使達に与えたのである。


「天使共よ!! もし生き残りたければ神々を殺せ!! そうすれば命は助けてやる!!」


 そこにシルヴィスが大音量で叫んだ。


 シルヴィスの言葉に天使達は顔を見合わせた。シルヴィスの言葉に天使達は明らかに動揺していた。流石に自らの主を討つというのは本能としてできないのだ。


 シルヴィスはもちろんそのことをわかっている。天使が神に刃を向けることなど絶対にないことは理解している。シルヴィスが敢えて、造反を促したのは、天使だけでなく神族に対して互いに疑心暗鬼の心を植え付けるためである。


 互いに一瞬でも信じられないという思いが生まれるだけで、その集団は結束力を失う。それがたった一言言い放つだけで叶うとなればシルヴィスとすればやらない理由はないのだ。


「何をボサっとしてるんですかぁ!!」


 ヴェルティアが動きの止まった天使達を薙ぎ払って神の間合いに入るとそのまま破壊の権化とかした致命的な一撃を神に叩き込んでいった。


 もちろん、シルヴィスも神を次々と虎の爪(カランシャ)の斬撃で葬っていく。


 ヴェルティア、シルヴィスの手により多くの神達が魔都(エリュシュデン)の門前で屍を晒すことになったのである。


「さて……これくらいでいいな……ヴェルティア!! ディアーネさん、ユリさん。そろそろ行きますよ」


 シルヴィスの言葉に三人は頷くとシルヴィスの元に集まり、そのまま転移門へと突き進む。


 それを遮るようなものはもはや誰もいない。既にこの場にいる神達の八割が討たれている現状でこの人の形をした天変地異を止めようというものはいないのだ。


「さて……ヴォルゼイス、ディアンリア……断罪の時だ」


 シルヴィスは凄みのある笑顔と共に転移門へと飛び込み、ヴェルティア達三人もそれに続いた。


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