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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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閑話 ~巻き返し~

 遠くで歓声が聞こえる。


 その中をシルヴィス達四人は早足で駆けていく。すれ違い魔族達がシルヴィス達の姿を見て一礼していく。

 既に魔族の間でシルヴィス達の活躍は知れ渡っており、敬意を受けるようになっていたのだ。


『ウォォォォォォォ!!』


 そして一際大きな歓声が大気を揺るがせた。


「すごいな。キラトのやつ……ここまで士気を上げることができるのか」

「まぁ、負ければ滅亡という状況もありますけど、キラトさん自身が最前線に出るとなれば皆の士気も爆上げ間違いなしですよ」

「確かにな。命を張っているのが自分達だけでないとわかるだけで、士気は天井知らずで跳ね上がること間違いなしだ」

「まぁ、それはそれとして急いで伝えないといけませんね」

「ああ」


 シルヴィスとヴェルティアはそう語り合いながらキラトに会うために足を緩めることはしなかった。


「キラト!!」


 そして出陣式を終えたばかりのキラトの姿を見たシルヴィスが叫ぶ。


「どうした?天界に何か動きがあったのか?」


 キラトは目を細めて言う。シルヴィス達の様子から只事でない事態を感じ取ったのだ。


「ああ、奴らは既にエランスギオムへ軍を展開し始めている」

「何だと!?」

「残念だが本当だ。アクランにまず転移したのは奴らの偽装だ。そこから進軍してくると思わせて実際にエランスギオムに転移の門を作りやがった。そこからどんどん天軍が転移してきてやがる」

「そうか……してやられたな」

「どうやら、今までの襲撃と陣の設置というのはこのための偽装だった可能性があるな」

「出陣式は今終わったところだ。これより出陣する」

「だが、出遅れたのは事実だ。これから戦場に到達するのは二日後だ。陣容を整えるのを天軍が待つとは思えんぞ」

「仕方ないが……ムルバイズとジュリナに頑張ってもらおう」

「二人に?」

「ああ、二人ともいいな?」


 キラトの問いに二人は即座に頷いた。


「お任せください」

「二時間ほどで準備を整えます」


 ムルバイズとジュリナの返答にキラトは満足気に頷いた。


「我々を送り出した後、二人はそのままリネアを守ってもらう」

「はい。お任せください!!」


 続くキラトの指示にジュリナは力強く返答した。


「リネアさんはいかないのか?」


 シルヴィスは首を傾げながらキラトに尋ねた。王妃という立場であれば当然王の親征の際に留守を預かるのは不思議なことではない。だが、それは通常の場合だ。リネアならばキラトを助けるという確固たる意志で戦場に赴くと思っていたのだ。


「ああ、体調が思わしくないという話でな」

「そうなのか? 大丈夫か?」

「ああ、心配だが詳細を教えてくれないんだ。医者も命に別状はないの一点張りでな」

「そうか……心配だな」


 シルヴィスの言葉にヴェルティア達も心配そうな顔をした。リネアが体調を崩しているというのはやはり心配なのである。


「逆に言えば、リネアが魔都(エリュシュデン)にいるというのは不測の事態に対応できるし、ムルバイズ、ジュリナも傍にいてくれれば安心だ」

「それはそうだな」

「正直、参戦できないのは残念だが、それは仕方ないと割り切るしかない。それでだ」

「ああ、任せておいてくれ。先日の依頼は継続中だ。それに報告が終わればまた天軍への嫌がらせを行うさ」

「そうか。頼む。初手はあっちが上回った。今度はこちらが巻き返さないといけないからな」

「わかった。だができるだけ急いでくれ。何しろ分身体(・・・)である以上天使相手なら勝てるが神には勝てないと思うからな」

「そうだな。シルヴィス達の本番はこの戦いの()だからな」

「そういうことだ。さてそれじゃあ。嫌がらせしてくる」

「頼むぞ」


 キラトの言葉にシルヴィス達は頷くとキラト達の前から歩き去った。



 私室に戻ったシルヴィス達は再び描かれた陣の上に座る。


「さて、それじゃあ続きと行こうか」

「わかりました!!それじゃあ行きますよ」

「とりあえずは四人で嫌がらせするとしよう」

「そうですね。こと嫌がらせにかけてはシルヴィスは本当に上手いですからねぇ〜」

「お前さっきのリボン返せ」

「い、嫌です!! 絶対に返しません!!」


 ヴェルティアは手にしていたリボンを慌てて後ろに隠した。


「シルヴィス様、流石にそれは非道すぎます!!」

「そうだよ。いくら何でも非道すぎるよ」


 ディアーネとユリの抗議にシルヴィスはまたしても居心地悪い思いをすることになった。


「はっはっはっ!! どうやらシルヴィスの方が悪いという結論に至りましたね!!さぁ、反省してください!!」


 シルヴィスはヴェルティアの頭をぐいと引き寄せるとそのままコメカミに一本拳をグリグリと押しつけた。


「痛い痛いですよ!!」

「悪いのは俺かなぁ〜ヴェルティアかなぁ〜?」

「わ、私です!! 私が悪いです!!」

「はい。よくできました」


 ヴェルティアが素直に謝ったためにシルヴィスは即座に手を離した。


(やっぱりヴェルティア様を抑えられるのはシルヴィス様ですね)

(でもさ、この二人ってまだつきあってないというのが信じられないな)

(大丈夫ですよ。もう誰が見ても両想いなんですから、時間の問題です。それに……切り札(・・・)はこちらにありますので)

(ディアーネも相当いい性格してるよ)

(止めないあなたも同類ですよ)


 ディアーネとユリはニヤリと笑う。美女二人の笑みなのにニコリではなくニヤリと表現されるのはさすがというべきだろう。


「さて……それじゃあ。まずはシオルの軍へ嫌がらせといこうじゃないか」

「はい!! やってやりますよぉ!!」

「承知しました」

「任せてくれ!!」


 シルヴィスの言葉にヴェルティア達三人は陣の中で目を瞑ると、エランスギオムの分身体の操作を始めた。


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