表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/254

神魔大戦前夜④

 不死身の男を拷問が失敗したシルヴィス達は魔都(エリュシュデン)に帰還し、そのままレンヤ達の祝福(ギフト)が取り上げられないように処置を行うことにした。


 レンヤ達はシルヴィスには遠く及ばないが、それでも魔族の中でも上位に入るほどの実力を有しているのは間違いないのだ。


 シルヴィスからことの顛末を聞かされたレンヤ達は顔を強張らせた。


「それでは祝福(ギフト)が取り出されれば……俺たちは死んでしまうということですか?」


 レンヤの声に流石に動揺が見える。自分の中にいわば爆弾が埋め込まれているようなものであり、動揺するなというのも無理な話である。


「そこなんだ。ディアンリアから能力を取り上げられた男は死んだけど、それは不死の能力がなくなった事で俺たちの与えたダメージで死んだのが原因かもしれない」

「……」


 シルヴィスの言葉にレンヤ達三人は顔を見合わせた。確かにシルヴィスの情報では祝福(ギフト)を取り上げられたら命を失うのか、取り上げられた結果シルヴィス達が与えたダメージにより絶命したのか本当にどちらとも取れるのだ。


「シルヴィスさん……祝福(ギフト)を取り出すことはできますか?」


 レンヤが意を結したように言うとシルヴィスは苦い顔をした。


「やれないことはない……だが、それによりお前の命が失われるかもしれん」

「一つ質問ですが、シルヴィスさんはディアンリアを助ける意思はありますか?」

「ない」


 シルヴィスの即答にレンヤ達三人は納得の表情を浮かべた。シルヴィスの行動原理においてディアンリアは最も許せない存在であることを三人は理解しているのだ。


「それはつまりディアンリアを殺すと言うこと……もし、ディアンリアの死によって祝福(ギフト)が消滅した場合、その時に俺たちは死にます」

「その論法は少しばかり乱暴のような気もするぞ」

「ええ、しかしそれはただの前提条件です。この戦いが終わった時に祝福(ギフト)の消滅により死ぬ方が今死ぬよりもよほどきついと思いませんか? それにディアンリアが祝福(ギフト)を経由して何らかの術を仕込んで俺たちが操作される方がまずいです」

「ふむ……」


 レンヤの言葉にシルヴィスが悩む。シルヴィスはディアンリアが突然祝福(ギフト)を取り上げられないようにレンヤ達にディアンリアの干渉を跳ね除ける術式を施すつもりだったのだ。


「レンヤ……まずは俺が受けようと思う。こういうのは年長者の仕事だ」


 ヴィルガルドの意見にレンヤは静かに首を横に振る。


「いや、ここは俺にやらせてくれ。言い出したのは俺だ」

「そういうわけにはいかん」


 レンヤもヴィルガルドも一歩も引くつもりはないようである。


「それじゃあ、間をとって私が行くわ」

『ダメに決まってるだろ!!』


 そこにエルナがいうと二人は声をそろえて却下する。この辺りの息の合い方はさすがというべきだろう。


「レンヤ、お前で試す。ヴィルガルド、もし俺が失敗したらお前は俺の首を刎ねろ」


 シルヴィスの言葉にレンヤもヴィルガルドも絶句した。シルヴィスの提案はさすがに度が過ぎているという感想を誰しも持ったのだ。


「そ、それはいけません!!」

「そ、そうだよ!! いくら何でもそれは……おい、ヴィルガルド!! シルヴィス様が失敗したら首を刎ねるのは私の方にしろ!!」


 ディアーネとユリがシルヴィスの提案に即座に反対を示すが、ヴェルティアが手で二人を制した。その様子を見ていたレティシア達も反論の言葉を発することができない。


「二人とも何を心配しているんです!! シルヴィスが命をかけると言ったのですから大丈夫です!!」

「え?」

「シルヴィスが勝算もなしに命をかけるようなことはあり得ません!! 私達が見えてない勝算があるんですよ!! ささっ!! シルヴィスちゃっちゃとレンヤさん達の祝福(ギフト)を抜き取ってあげてください!!」


 ヴェルティアの言葉にシルヴィスは苦笑を浮かべると両腕に紋様が浮かんだ。


「いくぞレンヤ」

「はい!!」


 シルヴィスの力を込めた声にレンヤは即答する。シルヴィスはレンヤの返答を聞くと右手をレンヤの心臓の位置に当てるとズブズブとレンヤの体の中に右手が入り込んでいく。


 ズボッ!!


 レンヤの体から引き抜かれたシルヴィスの右手に七色に光る珠が握られていた。シルヴィスはレンヤの様子をじっと見つつ問いかけた。


「どうだ?」


 シルヴィスの問いかけにレンヤは色々と体のあちこちを見るが何も異常を見つけることができないようであった。


「何ともないです……ね」

「そうか」


 シルヴィスはどことなくホッとした様子を見せた時に手にした七色の珠がチリとなって消滅した。


「さて、それじゃあ。二人ともやっておこうか」

「はい」

「お願いします」


 そこからシルヴィスはヴィルガルド、エルナの体内から祝福(ギフト)を抜き出すと二人に視線を向けると二人ともレンヤ同様に体の各部を確認して異常がないことを確認してシルヴィスに向けて頷いた。


「う〜ん……三人の実力がどう変化したかを確認しておいてもらいたいのですけど、ディアーネさん、ユリさん頼めますか?」

「わかりました」

「わかりました。三人とも行くよ」

『はい』


 ディアーネとユリにレンヤ達三人は着いていく。


「上手くいったな」

「そうですねぇ〜うんうん。結果が良ければそれで良いのです!!」

「しかし、お前よく『行け!!』と言ったな」

「まぁ、シルヴィスならなんか手を打ったことでしょうから大丈夫だと思ったんですよ。ちなみにどんな手段だったんですか?」

「ああ、擬似的な祝福(ギフト)を形成してそれを代わりにしようと思ってたんだよ。あの男が祝福(ギフト)を抜き取られたときに即死しなかったから時間的余裕はあると思ったんだよ」

「なるほど……」

「お前よくわかってないだろ?」

「さぁ!! 三人の模擬戦を見に行くことにしましょう!!」


 ヴェルティアはやけに大きな声でシルヴィスの手をとりレンヤ達の模擬戦を見にいった。


「すごいですね」


 ヴィリスがレティシアへ先ほどのシルヴィスとヴェルティアのやりとりの感想を言う。


「そうね。びっくりするくらいお姉様はお義兄(にい)様を信頼してるわね」


 レティシアの声にもヴィリス同様に感嘆の響きがあった。


「はい。未知の出来事……おそらくシルヴィス様は上手く行く可能性は半々と見ていたと思います。それに躊躇いもなく命をかける発言……いかに対策を用意していたとはいえ、それでも失敗の可能性を考慮すれば躊躇します」

「ええ、お義兄様の技量に裏付けされたものでしょうね……そして、自分で責任を取るという覚悟ね」

「はい。ヴェルティア様はシルヴィス様のそこを信頼されたということでしょうか?」

「かもしれないわね……もしくは惚れた弱みというものかもね」


 レティシアはそう言ってクスリと笑う。


「それを言うならシルヴィス様もじゃないですか? ヴェルティア様の声に妙に力が入ってましたよ」

「もう、完全に両想いよね」

「はい」


 レティシアとヴィリスはそう言って互いに笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ