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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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エルナの失恋

「やっぱり……無理なのかな」


 エルナはポツリとした呟きをこぼした。エルナの視線の先にはシルヴィスとヴェルティアのいつものやりとりが行われていた。


 その様子は本当にお互いに楽しそうで、それがエルナの心にモヤモヤとした気持ちを抱かせる。


「どうした? ……あ」


 ヴィルガルドがエルナの視線の先に二人がいることに気づくと納得の表情を浮かべた。


 ヴィルガルドはエルナの気持ちが晴れない理由を察したが、そこには触れない。


 エルナはヴィルガルドの気遣いに感謝しつつ、話を続けることにした。


「ふふ、ありがとう。悪いんだけど少しだけ私の愚痴に付き合ってくれない?」

「ああ、いいぜ」

「ありがとう。あの二人ってやっぱりお似合いよね」

「ああ」

「ヴェルティアさんって本当にすごい方……美人だし、スタイルいいし、性格いいし、強いし、無駄にポジティブだけどそれが事態を好転させることは多々あるから完全に長所よね」

「そうだなぁ、あのポジティブさは中々周囲を振り回すけど不思議と収まるところに収まる感じがあるな」

「そうなのよ。あれはもうそういう宿命の元に生まれている人としか言えないわ」


 エルナはそう言ってうんうんと頷く。


「お前も容姿の面では劣っているとは思わんがな。強さ、ポジティブさで言ったら遥かに及ばんな」

「はっきり言ってくれるわね。でも容姿だけでも劣ってないと言われるのはまだマシね。でもリクネさんに聞かれないように気をつけなさいよ」

「う……わかってる」


 エルナのいうリクネとは魔族の侍女であり、ヴィルガルドの恋人である。きっかけはリクネが重い荷物を持っているのを手伝ったことという極めてありふれたものであった。

 魔族と人間という異種族間の恋であったが、意外なことに魔族の間では好意的に受け止められている。

 王妃リネアが大いに祝福したことで、反対派が沈黙を選んだという背景はあるにせよ、二人は好意的に受け止められたのだ。


 もちろんリネア自身、他人の恋路を邪魔するのは好まない価値観なのだが、二人の恋路は人族との融和の象徴としても使えるという冷徹な統治者としての思考もある。


「告白はしないのか?」


 ヴィルガルドの問いかけにエルナは静かに首を振った。


「そうか」


 ヴィルガルドはエルナの返答に静かにつぶやいた。


「幸運だったのは、シルヴィスさんの事を好きで好きでたまらなくなる前だったことよ。今なら引き返せるし、将来的には美しい思い出になるわ」

「そうか、そうエルナが決めたのならそれが正しいのだろうな」

「うん」

「それじゃあ、レンヤに用があるからまた後でな」

「ええ、ヴィルガルド」

「ん?」

「愚痴聞いてくれてありがとう」

「ああ、今度は俺の惚気話を聞いてくれればいいよ」

「それはパス!」

「残念だな」


 ヴィルガルドは苦笑を浮かべててをヒラヒラと振るとエルナから歩き去っていった。

 それをエルナはヴィルガルドを見送ると再びシルヴィス達に視線を向けた。二人は相変わらずのやりとりをしていた。


「あの二人の間に割り込む隙間なんかないのよね。それにヴェルティアさんなら仕方ないかと思ちゃうのよね」


 エルナはそう言って少しだけ笑う。


 ヴィルガルドに『告白はしないのか?』と問われたときにすると言えなかった時点でエルナなりにシルヴィスへの想いが恋愛感情から別のものに変わっていくものになることを予感していた。

 それは道を違えたことをエルナは自覚したのだ。どれほど進んでも恋人、夫婦になり得ない道だ。


「深入りする前でよかったわ……レンヤは深入りしてたから復活までに時間かかるかもね」


 エルナはほぼ同時に失恋することになったレンヤが必要以上に傷ついてほしくないと思っている。そして同時にレンヤも乗り越えることができることも確信していた。


「しかし、変われば変わるものね」


 エルナとしてはこの世界に召喚されてからの立ち位置の変化に笑ってしまう。魔王を倒す為に召喚された自分達が今は魔族と共に戦おうというのだからだ。


「いつかはこの気持ちも……別のものに変わるんでしょうね」


 エルナはそう言ってクルリと翻って二人から離れていった。



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