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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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閑話 ~竜皇国湧き立つ~

「へ、陛下……つ、ついに……」


 竜皇国宰相ゼイセアス公爵の声が震えていた。いや、宰相だけでない。竜皇国の重鎮達も感動に打ち震えていた。


 アインゼス竜皇国の重鎮達が感動しているのは、レティシアからもたらされた情報ゆえであった。


 アインゼス竜皇国の本気度をシルヴィスに示すという理由で、レティシアがヴェルティアに滞在する世界へ向かった。

 

『お姉様とお義兄様は婚前旅行を行なっており、もはや結婚は秒読み段階!!』


 レティシアからもたらされた情報が竜帝シャリアスにより重鎮達に伝えられた時、重鎮達は感動に打ち震えたのである。


「うむ、諸君!! 我がアインゼス竜皇国は建国以来最大の危機を乗り越えた!!」

『おおっ!!』


 シャリアスの宣言に重鎮達の口から安堵とも感動に打ち震える言葉が揃って発せられた。


「ヴェルティアがヴェスランカ王国に多大な迷惑(・・・・・)をかけた際に、もはや誰にも止められんと思ったものであるが……その心配も終わったのだ」


 ちなみに普通に考えれば侵略してきたヴェスランカ王国こそ責められるべきであるのだが、ヴェルティアが圧倒的な武力によりヴェスランカ王国を蹴散らしてしまったために、竜皇国の重鎮達はむしろヴェスランカ王国を被害者と見ていた。

 もちろん、竜帝も重鎮たちもヴェスランカ王国へきちんと責任を取らせたのだが、それが苛烈なものにならなかったのは、心情的に天変地異レベルの災害にあったような者であるとして被害者であると見たからである。


「陛下……私はこのような日がくるとは思っても見ませんでした」

「私もです!!」

「ヴェルティア皇女を娶ってくださる勇者がもはや現れるとは……」

「我らとは器が違う……」

「ああ、心のどこかで失望させられるのではないかと思っていた自分が恥ずかしい……シルヴィス様は私などが推しはかれるような方ではなかった」

「ゼクール侯、そう自分を責められるな。我らとてシルヴィス様の器を見誤っていたのだ」


 重鎮達の言葉はヴェルティアに失礼極まりないものである。国家の重鎮達は決してヴェルティアを貶めようなどという意図は皆無である。ただシルヴィスの器のデカさを讃えているのだが、ヴェルティアへの無礼となってしまうのだ。


「諸君、ヴェルティアの婚約を大々的に発表せよ!!」

『はっ!!』

「婚約式は二人が戻ってからすぐ行う!!」

『はっ!!』

「よし、今日のめでたい日……我らだけで楽しむのは許されるものではない。臣民全てに酒、麦、果汁水を振るまう!!」

「国家的行事ですな!! お任せください!! すぐに予算を……陛下?」


 財務卿であるヴィルシャード侯が興奮した様子で告げたのをシャリアスが片手をあげ制したのだ。


「ヴェルティアの婚約決定は公的なものではなくあくまで私的な事柄、そこに公金を使うなど国家の論理としてやってはならない。もちろん、我がアインゼス家が負担するというのが筋というものだ」

「し、しかし陛下!! それでは国家の面目が!!」

「何を言っている。婚約式は国家予算に組み込まれておろう!! あくまでも今回は婚約の発表による前祝いだ」

「しょ、承知いたしました」


 ヴィルシャード侯は恥ずかしげに返答した。興奮のあまり、国家の論理を無視した主張をしてしまったことを恥じたのだ。普段の彼ならばあり得ない主張であり、ヴェルティアの婚約という一大イベントに我を忘れてしまったのだ。


「次はレティシア皇女の番ですな」


 宰相の言葉に重鎮達は硬い表情を浮かべた。レティシアもまたヴェルティア同様に容姿、性格、能力も最上級の皇女であるが、それゆえにヴェルティア同様に男達が気後れしてしまい婚約者がいないという状況なのだ。


「レティシア皇女も根本はヴェルティア皇女と一緒だものな……」

「ああ、素晴らしい方であるのは間違いないのだが……ヴェルティア皇女と同じで興奮すると爆走を始めるものなぁ」

「だがヴェルティア皇女ほど奇天烈な行動は……少ないぞ。まだ知らぬ者がいる可能性が高いだろう?」

「……それにかけるしかないか」


 重鎮達の声は固い。これもレティシアに対して失礼極まりないのだが、ヴェルティアに対するもの同様に貶めようという意図は皆無である。


「諸君、レティシアの件は後にしよう。まずはヴェルティアを受け止めてくれた勇者が現れてくれた幸運を喜ぼうではないか!!」

『はっ!!』


 シャリアスの言葉に重鎮達は即答すると再び重鎮達の表情が活気に満ちたものとなった。


「さて、まずは祝宴の用意じゃ!!」

『おおっ!!』


 シャリアスの言葉に全員が雄叫びをあげた。



 この時……この中の誰も二組(・・)の婚約式が重なることを予感するものはいなかった。


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