天使襲来④
「ディアンリアよ。今回送り込んだイセルの階級は?」
送り込まれた天使達が敗北した事の報告を受けたヴィルゼイスがディアンリアへ問いかけた。
このヴォルゼイスの問いかけにディアンリアは身を震わせる。帰ってきた天使の報告が上がってきたが、報告は神界の権威を著しく下げるものであったからだ。
別にヴォルゼイスは怒気を発しているわけでも、不機嫌になっているわけでもない。どこか面白そうな雰囲気を発している。
だが、ディアンリアはヴォルゼイスの巨大すぎる力は、戯れであっても天変地異を巻き起こすレベルだ。そのような絶対者の力を持つ者を恐れないことなど出来るはずもない。
「第七位階にございます」
「そうか。ディアンリアは私の言いつけを守ってくれていたのだな」
「はっ、適度な試練とおっしゃったので……」
ディアンリアは恭しくヴォルゼイスの問いかけに答えた。
実際のところ、ディアンリアはイセルで十分にシルヴィスを殺すことが出来ると考えて送り込んだのだが、結果はあっさりと返り討ちにあってしまったのである。
「ふむ、第七位階の天使を一蹴か。シルヴィス君はなかなかやるものだな」
「は……」
ヴォルゼイスがシルヴィスに対し、君付けしたことにディアンリアはぴくりとした反応を示す。
「ディアンリア、シルヴィス君が第七位階以上の実力を持っている事は証明された。次の相手に君なら何を送る?」
「はっ……ヴォルゼイス様、ご提案が」
「ん?」
「実力を図るためにも……次はレネルを送り込みたいと思っているのですが……」
「レネルか……。ふふ、ディアンリアともあろうものが手ぬるいな」
「は?」
ヴォルゼイスの言葉にディアンリアは戸惑いの声を発する。
「私はシルヴィス君の限界を見てみたい。そのためには十天使をまとめて送るくらいがちょうど良いのではないかな?」
「全員ですか? それではヴォルゼイス様の玩具が壊れてしまうかもしれませんが」
「シルヴィス君が壊れるのならそれはそれで構わない。他の三人で遊べば済むことだ」
「承知いたしました」
ヴォルゼイスの楽しそうな声に、ディアンリアは恭しく答える。ディアンリアの声に暗い喜びが含まれている事をヴォルゼイスは察している。
(ディアンリアはよほどシルヴィスの存在が癪に障るようだな)
ヴォルゼイスはディアンリアの反応に心の中で嗤う。
ディアンリアとすれば下等生物に、自分の祝福を拒否されるという屈辱を受けたのが根幹にある。加えて今回の天使達の敗北はまさに神界の権威を著しく陥れるものであり、神族至上主義のディアンリアとすれば我慢することは出来ないだろう。
(十天使を相手に出来るのなら神レベルの実力をシルヴィスは有してるということだ)
ヴォルゼイスとすればシルヴィスという存在に興味が尽きない。
なぜ人間がそこまでの実力を有しているのか?
異世界の人間は、この世界の人間よりも遙かに強いのか?
とにかく興味が尽きない。
「ディアンリア、十天使への召集を急ぎ執り行え。その他の天使達もいくら送り込んでも構わない」
「承知いたしました」
「それから、エルガルド帝国にもシルヴィス君がどこにいるかを教えてやれ」
「はっ!!」
ヴォルゼイスの言葉にディアンリアは無言で頭を下げた。




