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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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社会見学②

「お疲れさん!」


 開口一番にキラトがシルヴィス達に声をかける。ここは魔城(フェイングルス)にあるキラトの執務室だ。


 執務室にはキラトだけでなく、王妃となったリネア、ムルバイス、ジュリナ、リューべもいた。


「ああ、国書を渡してきたけど友好的な関係は構築できなかったな」

「そうか。まぁ仕方ないな」


 シルヴィスの言葉にキラトはまったく失望していないような声で返した。


「まぁ、友好関係は構築できないが、代わりにこの三人を連れてきた」


 シルヴィスがレンヤ達三人を紹介するとキラトはニッコリと微笑んだ。


「いやいや、予想以上のことをやってくれたよ」


 キラトの言葉にキラトの仲間達も苦笑を浮かべた。流石にシルヴィス達が異世界からの救世主を連れてくるとは思っていなかったのだ。


「……なんというか。シルヴィスさん達の事を見誤ってました」

「そうね。ここに救世主を連れてくるとは思わなかったわ」


 リューべとジュリナの声は呆れと称賛の入り混じったものである。それを聞きながらキラトはレンヤ達に向けて言う。


「初めまして、魔王キラトだ。こちらは私の妻であり王妃のリネア、枢密使であるムルバイズ、副使のジュリナ、第二軍軍団長のリューべだ」


 キラトの言葉は威圧感をまったく感じさせないものである。しかし、レンヤ達はゴクリと喉を鳴らした。これはキラトがなんの威圧感も発していないにも関わらず、襲い掛かることを躊躇するという意識を持たされている(・・・・・・・)事に対する恐れであった。


「ふふ、そう畏怖されると大物になった気分だよ」


 キラトの言葉にレンヤ達はもう一度喉を鳴らした。


「さて……俺がシルヴィスに頼んだのは、エルガルド帝国との開戦を遅らせてくれという事だった」

「開戦を遅らせる?」

「ああ、我ら魔族はある敵と戦うためにエルガルド帝国に干渉されては困るという事だよ」

「……魔族は誰と戦おうとしてるんですか?」

「おや? シルヴィス達から聞いてないのかね?」

「はい」


 レンヤの返答にキラトはシルヴィスを見やるとシルヴィスは肩をすくめた。


「おいおい、普通に考えて魔王がエルガルド帝国に干渉させないための一手を打っておこうという相手なんか限られるだろ?」

「……神?」


 レンヤの言葉にシルヴィスは頷いた。


「そうだ。どうしてキラトが神と戦う流れになったか、その理由をお前らにはさっき教えただろ」

「あの虐殺……ね」


 答えたのはエルナであった。エルナの返答にシルヴィスは即座にうなづいた。


「それだけじゃないよ。他にも神は我ら魔族にちょっかいを何度も出してきた。そしてこの度、先王ルキナと軍規相を我ら魔族は失った」

「……」

「先王ルキナはシオルという神との一騎討ちの結果、敗れた。それは正当な一騎討ちの結果であったためシオルを責める筋合いにはない……。だが、軍規相は暗殺であったよ」

「暗殺……」

「ああ、ソールという神だ。シルヴィス達がいなければ我ら魔族はさらに被害が広がっていた事だろうさ」

「そのソールという神は?」

「殺した」

「……」


 キラトの返答は簡潔を極めたものだ。それがレンヤ達にはキラトの底知れぬ強さを示しているように思われる。


「しかし、妙じゃないかな?」

「え?」


 次のキラトの言葉にレンヤはついついオウム返しで答えた。これはこの話し合いの場がキラトの主導により展開されている事の確かな証拠であった。


「私の父である先王ルキナを討ったのはシオルという神であることはさっき告げた通りだ。言い換えれば神は独力(・・)で魔王を打ち倒すことができるというわけだ」

「そ、それは確かに……」

「では君たちは一体何の為にこの世界に召喚されたのかな?」

「あ……」


 キラトの問いかけにレンヤ達は絶句した。自分達しか魔王を倒せないと思っていたがそれが明確に否定されたのだ。


「ここである現実が浮かび上がる。それは神にとって人間は救う対象ではないということだ」

「え?」

「だってそうだろう。わざわざ異世界から何の関係もないものを召喚して戦わせるよりも自分達で魔族と戦争をすればいい。もちろん、損害が大きすぎるためにそれを避けたかったというのもあるかもしれんが、それは神として人間に対する優先度が低いことを意味する事になるよね?」

「そ、それは下界のことは下界のものが解決するべきという考えからではないですか?」

「なるほど、ではなぜ異世界人を召喚する? 下界のものに任せるというのならばこの世界の人間に君達に与えたような特別な祝福(ギフト)を与えないのだろうね?」

「……」


 キラトの言葉にレンヤ達は再び沈黙した。キラトのいう疑問に答えられないのはレンヤ達自身が心のどこかで思っていたことだからだ。


「ここからは私の仮説なんだがね。神は人間と魔族の戦いを見て楽しんでいるのではないかなと思ってる」

「え?」

「ここ数百年にわたって異世界の救世主を名乗る者達が魔族の領域(フェインバイス)へと攻め込んできたことがあった。もちろん、結果は人族の惨敗に終わった」

「……」

「当たり前だが、戦いは激しいものではあるが、我々魔族の損害は軽微だ。異世界人が陣頭に立って戦うが全員(・・)戦死しているよ」

「全員?」

「ああ、君達に与えた祝福(ギフト)と同じものをこれまでの救世主達は与えられていたが、全員戦死した。不思議だね……なぜ異世界人に与えた祝福(ギフト)で魔王を斃せなかったのだろうね?」

「そ、そんな……」

「話が違うという顔だね。だがディアンリアの与える祝福(ギフト)が魔王を斃す為のものでないとすればさほど驚くべきことではないよね?」

「楽しむための……道具ということですか?」


 ヴィルガルドの声に例えようもない不快感が込められている。その問いかけにキラトは静かに頷いた。


「だが、ここで神の予想もしなかったことが起こった」


 キラトはチラリとシルヴィス達を見て言った。



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