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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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再会⑧

「こちらです」


 レンヤ達に連れられ、シルヴィス達一行は玉座の間に通された。


 玉座の間にはズラリと貴族達が並んでいた。しかし、全員が武装をしており猛々しい視線をシルヴィス達というよりもシルヴィスに向けている。


(どうやら俺が皇帝一家を殺害したという事はこいつらの中で確定しているというわけだ。となると……)


 玉座には誰も座っておらず傍にラフィーヌが立っている。


「ようこそ、特使の方々……摂政のラフィーヌです」


 ラフィーヌが名乗るが親愛の感情のかけらもない。殺意を隠そうともしない態度にシルヴィスはむしろ感心してしまう。


「初めて御意を得ます。私はヴェルティア=アインゼス。魔王ルキナ陛下より国書を預かったものにございます」

「遠路はるばるご苦労でした……」

「もったいないお言葉です」

「皇帝陛下は幼少ゆえ、国書はこのラフィーヌが受け取ります」

「承知しました」


 ヴェルティアは一礼すると進み出た文官に国書を手渡した。文官は恭しく受け取るとそれをラフィーヌへと渡した。


 ラフィーヌは国書を紐解くと読み始める。


 国書を読むラフィーヌへ貴族達の視線が集中する。国書の内容が気にかかるのは当然のことだろう。


 ラフィーヌは国書を読み終えるとヴェルティア達に視線を移した。


「特使の皆さんが出発したのはいつですか?」

「十日前ですね」

「……そうですか。魔王キラト陛下は我が国の状況をご存じなかったのでしょうか?」

「ええ、我々もラディンガルドにおいてキューラー侯に知らされるまで、エルガルド帝国に起こった悲劇を存じ上げませんでした。心よりお悔やみ申し上げます」


 ヴェルティアの殊勝気な言葉にラフィーヌの眉が急角度で上がる。


「なるほど……魔族はどこまでも我々を愚弄するのですね」

「は?」


 ラフィーヌの言葉にヴェルティアは首を傾げつつ間の抜けた声で返答する。


「お父様宛にこのような国書を……」


 ラフィーヌはワナワナと震えながら国書を握りつぶした。


「あらら……摂政さんは何をしているかわかってるのですか?」


 ヴェルティアは呆れた声を発した。実際にラフィーヌの行動は常軌を逸していると称しても良いだろう。特使の前で国書を握りつぶすなど許される行為ではない。


「わかってないのはそちらです!!」

「どういう事ですか?」

「そちらの男です!!」


 ラフィーヌは刺すような視線と憎悪のこもった声でシルヴィスを糾弾する。


「シルヴィス!! お前はお父様やお母様!! お兄様達を殺した!!」


 ラフィーヌの凄まじい憎悪に居並ぶ貴族達はビクリと身を震わせた。人はここまで憎悪のこもった声を発することができるのかという思いであろう。


「ちょっとあなた!! 何言ってるんですか!!」


 ラフィーヌのシルヴィスへの糾弾に反論の声を上げたのはヴェルティアであった。先ほどまでの貴族然とした雰囲気は形を潜め、爆走娘の本性が出ていた。


(お〜ヴェルティアの本性が出てるな。ま、こっちの方がよっぽど似合ってるけどな)


 シルヴィスはヴェルティアの変貌に対して呆気に取られる面々を皮肉気にみた。ヴェルティアの魅力を真に引き立てるのはどこまでも前向きで憎悪のような暗さとは無縁の精神構造だ。

 精神はその表情に現れるとシルヴィスは考えている。容貌がいかに優れていても精神が人の成功を妬み、人を貶める事を好む者は自然と醜くなっていくものだ。


「いいですか!! まずあなたはシルヴィスを家族を殺した犯人と言いましたが、そもそも犯人がここに姿を見せるなんておかしいと思わないんですか!?」

「な……」

「何者かがシルヴィスに罪を被せようと考えなかったんですか!?」

「穢らわしい魔族が何を言うか!!」

「魔族が穢らわしいとおっしゃしましたけど根拠は何ですか?」

「魔族が穢らわしいのは常識でしょう!!」

「はっはっはっ!! あなた本当に摂政ですか? あまりにも酷すぎる論法なんで笑ってしまいましたよ」

「な……無礼な!!」


 ヴェルティアは何の躊躇いもなくラフィーヌをこき下ろした。ラフィーヌにしてみればここまで無礼な態度を取られたのはシルヴィス以外にはいない事だろう。


「おやおや? どうしたんですか? まさか人を侮辱しておいて礼儀を守ってもらえると思ってるんですかぁ〜? エルガルド帝国の文化レベルは低いというレベルではないですね」

「貴様!!」

「大体、シルヴィスが本当に犯人ならこの城にいるみなさんはとっくに死んでますよ!!」

「な、何ですって!?」

「事実ですよ」


 ヴェルティアの言葉にラフィーヌ達は怒りを込めて睨みつける。


「シルヴィスには岩禅(がんぜん)という貴族の邸に匹敵する巨大な岩石を落下させるという術があります。あれ使われたらみなさんではまず助かりませんよ」

「岩禅……?」

「ええ、シルヴィスがそれを連発したら次の瞬間には帝都は廃墟です!! これは間違いありません!!」


 ヴェルティアの言葉にエルガルド帝国の面々の恐怖感が一気に高まってきた。


「不思議ではないですか? 別にシルヴィスはエルガルド帝国をあなたの家族を殺そうとしたら岩禅をこの城に落としまくれば良いわけです。それをわざわざ姿を見せて暗殺なんて回りくどいことするんです? 」


 ヴェルティアの言葉をシルヴィスは驚きながら聞いていた。


「あいつ……がまともな論理を展開してる……?」

「時々、ヴェルティア様は冴える時があるんですよ」

「十回に一回の割合なんだけど、今回はその一回を引いたみたいだ」


 シルヴィス達はヴェルティアの姿に中々無礼な感想を発言しているが、それも仕方のないことかもしれない。


「亡くなったのはあなたの家族だけですか?」

「え?」

「護衛の騎士達は殺されてないのですか?」

「それは……」

「殺されてるわけですね。つまり、他に犠牲者が出ることを躊躇わなかったというわけですね。どうです? なぜ岩禅でまとめてやらなかったのか不思議でしょうがありませんね」

「そ、それは……その男が命を弄ぶからよ。実際に私の部下を殺し、私も殺されかけたわ」

(ここに来てあの時の行動が足枷になっちまったな。ま、仕方ないよな)


 ラフィーヌの言葉にシルヴィスはバツの悪そうな表情を浮かべた。あの時はこのような状況になるとは思っていなかった以上仕方ない。この辺りシルヴィスは割り切っているのだ。


「それが何か?」


 そこにヴェルティアのとんでもない言葉が飛び出し、ラフィーヌ達を絶句させた。

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