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チートを拒否した最強魔術士。転移先で無能扱いされるが最強なので何の問題もなかった  作者: やとぎ


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再会⑥

 シルヴィス達一行はそれから何の障害もなくエルガルド帝国の帝都であるエルゴスペルへと到着した。


 盗賊も一度も出会わなかったが、それはシルヴィス達の馬車を護衛するアンデッド兵達の異様さに恐れ慄いてしまったというのが真相であり、エルガルド帝国の治安が良いということではない。


 シルヴィス達一行は、真っ直ぐに皇城へと向かう。


 当然ながら帝都に入った時に一悶着あったのだが、シルヴィス達が特使であることを告げると素通りさせられた。キューラー侯からの連絡が来ていたということだろう。


「いや〜キューラーさんは仕事が早いですね〜」

「そうだな。この交渉が決裂したときにはラディンガルドが戦場になるから必死さ」

「確かに今までは攻める立場だったから恐怖はなかったでしょうけど、今回はシルヴィスが脅しましたからね」

「普通に報復を想定してないのは甘いとしか言いようがないんだけどな」

「そうですね。一方的に殴れると思うのが自由ですけど、それを相手が従うというのは虫が良すぎる話ですよね」

「ああ、俺に言わせれば隙を窺ってると思わないのは緩い世界で生きてるんだなと思ってしまうな」

「まぁシルヴィスは臆病(・・)ですからね。そう考えるんでしょうけど有利と思ったらそんな事は考えませんよね」

「褒めてくれて嬉しいぜ」


 ヴェルティアの言葉にシルヴィスは嬉しそうに笑う。ヴェルティアの言った臆病という表現は一般的に蔑まれるのに使われるが、ヴェルティアはそれを褒め言葉で使っているのはわかっている。

 シルヴィスとすれば臆病であればあるほど生き残る可能性が高くなるのだから、当然ながら臆病というのは褒め言葉なのだ。そのことをヴェルティアも理解しているので敢えて使ったのだ。


「お二人とも、あまり見せつけないでくださいね」

「そ〜そ〜我々もこの空間にいるんですよ〜」


 ディアーネとユリが二人にニヤニヤとしながら言う。最初は二人とも否定しようとしていたのだが、最近はいつものことと割り切っている。


(ふふ、二人とも最近は動じなくなってきてますね……ユリ)

(わかってるって)


 二人は目配せをするとユリがつまらないという表情を浮かべた。


「う〜ん、お嬢もシルヴィス様も動じなくなってしまったなぁ〜つまらないよ」

「まぁ、いつものことですからね」

「はっはっはっ!! 私は常に進化し続けてるのです!! ディアーネもユリも私の進化に全身全霊でついてきてください!!」

「はい。そうします」

「ああ、お嬢について行くのは中々大変だけど頑張らせてもらうよ」


 ディアーネとユリは素直な返答をする。シルヴィスとヴェルティアは二人がニヤリと笑った事に気づくことはなかった。


「さて、そろそろ到着するけど、ヴェルティア頼むぞ」

「任せてください!! この私の鋭すぎる交渉術(ネゴシエイト)を見てシルヴィスも学んでください!!」

(お前の場合は鋭いと言うよりも激しいだがな)

「ああ、参考にさせてもらうぞ」


 シルヴィスは心の中でツッコミを入れているのだが、声に出したのは素直な返答である。シルヴィスにしてみればこの程度のリップサービスなど造作もないことだ。


 ガタン……


 馬車が止まるとエルガルド帝国の兵士達が馬車を取り囲んだ。


「十五人か」

「それなりの実力者が揃ってますね」

「だな」


 シルヴィスは馬車を取り囲む兵士達の数を確認する。もちろん外を見ての確認ではなく気配を察した上での言葉である。


「それじゃあ、行きましょう」


 ヴェルティアはそういうと扉を開けてそのまま外に飛び出した。外に飛び出してきたのがヴェルティアという美少女であった事に兵士達が目を見開いた。


「さて、我らは魔王キラト陛下の特使だ。キューラー侯より連絡があったと思う。皇帝陛下へ取り次いでもらおう」


 次いで外に出たシルヴィスが兵士達に向かって言い放つと兵士達の緊張感は一気に高まった。


「……少々お待ちください。今案内の方が参られます」


 騎士が緊張を含んだ声でシルヴィスに告げる。


「わかった。それに別に暴れたりはしないから武器を向ける必要はないぞ」


 シルヴィスの言葉に騎士は顔を引き攣らせた。シルヴィスはこの場にいない隠れた兵達を言い当てられた以上、当然の反応であった。


「ん? あそことあそこ……あそこにもいるだろ?」

「も、申し訳ございません……。何しろ魔族の特使がくることは今までなかったため……」

「ああ、別に構わんよ。ただ、そちらがこちらに害意を持つというのならばこちらにもそれなりの考えがあるとだけ言っておこう」

「は……い」


 騎士はガチガチと歯を鳴らしながら何とか返答した。


「シルヴィス様、いつでもいけますよ」

「ああ、エルガルド帝国がやる気なら受けてたつよ」


 そこにディアーネとユリが敵意に応じるかのような凄みのある言葉を発した。ディアーネなどは空間から斧槍(ハルバート)を取り出してチラリと視線を向けた。

 二人の表情は笑顔ではあるが、眼光は鋭すぎるものであり、美しさよりも恐怖を感じさせるものだ。実際に取り囲む兵士達の中からカタカタと恐怖に震える音が聞こえ始めた。


「よく……ここに顔を出せたな」


 その時、敵意に満ちた声を向けてきた者がいた。


 シルヴィス達が声の方向を見ると三人の男女の姿があった。


「ほう、随分と久しぶりだな」


 シルヴィスはこの世界に同時に召喚された者達に言葉をかける。その三人とはもちろんレンヤ、ヴィルガルド、エルナである。


「お前はやはり魔王の手先だったわ……け……だ」


 レンヤがシルヴィスに食ってかかろうとしたが言葉が小さくなっていく。


(ん?)


 シルヴィスが怪訝な表情でレンヤを見るとレンヤの視線の先にはヴェルティアがあった。


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